宣戦布告
あれから一週間がたった。彼岸しのは着々と弱っている。毎日ハグと嘔吐、はちみつを繰り返した。
吐きだこができた喉を悟られないように教室に帰り数奇な目を向けられる。
「やっほぉ、つむぐん。」
いつものバス、いつもの放課後に僕は花束つぼみと話していた。
「いらっしゃい。それで、どうしたの?」
家に上がらせるみたいに僕は言う。
今日は珍しく花束つぼみから約束を取り付けられた。
「今日はね、取引があるんだよつむぐん。」
「取引?どんな取引なのかな?」
「彼岸しのを1番下にするから
わたしたちに協力してくれない?」
「どういうことかな花束さん、彼女は今確かに一番下だよ。」
「確かにピラミッドの最底辺ではあると思う。っていうか、一番下にした。」
「それなら」
「ただねぇつむぐん。私はめんどくさい女だからねぇ、オンリーワンがいいわけぇ。だからさぁ。クラスの一番下の組じゃなくて、クラスの一番下がいいわけ。」
「そうか……」
「だから取引だよつむぐん。彼女をオンリーワンにしてあげようよ。彼女のあの傲慢さはオンリーワンにも届く逸材だよ。」
「それは……」
それは、いやだ。
だって、上と下になるじゃないか。
下と下が上と下になる。
下と下がなれ合っているのは傷のなめあいだが
上と下なら施しだ。情けだ。優しさだ。
それはいただけない、何も気持ちよくない。
そんなもんじゃない。彼岸しのと僕の関係はそんな生ぬるいもんなんかじゃない。
「断るよ。」
それに
「そうかつむぐん。残念。残念だよつむぐん。
君はできれば私のところにほしかったんだけど。
つむぐんはあの彼岸しのをかばうって事だよね。」
それに
「そうなるね。」
それに
「それじゃあ、私とつむぐんは」
こっちのほうが
「敵だね。」
興奮する。
「そうか、花束つぼみ、僕と敵対する。その意味が分かるかい?」
「おどしかなぁそれは」
「そんなものだよ。僕は僕が気持ちい環境を守るためなら、どんなことだってする。どんなことだってね。」
「わたしの、私のあおちゃまへの忠誠心をなめてもらっちゃ困るよぉ。つむぐん。」
「わかった、宣戦布告ということだね。僕の大事な大事な愛の巣を守らせてもらうよ。」
花束つぼみ、君の敗因はその忠誠心があったことだ。
僕の前であからさまな弱みを見せ、そして簡単に宣戦布告しちゃう。そんな硬い忠誠心があったおかげで僕は、何とか、君に勝てるんだ。
「全面戦争だ。花束つぼみ。」
「受けて立つよ。つむぐん」
そうして、僕と彼女の全面戦争が始まった。




