愚者(ピエロ)と狂言回し(ピエロ)
彼岸しのに合いに行くため僕は階段を上る。
カツカツと音が鳴る。
履きなれた靴見慣れない場所。あの日のことをよくよく思い出す。
吐瀉物のむせ返る匂い。聞こえる不愉快な音。
整った顔が歪み、穢れていく様。
カツカツと音が鳴る度
1つ1つ思い出す。
ガチャり、無機質な音それにかすかに聞こえる歓喜の吐息が吐かれる。
「……来てくれたんだねしのさん。良かった。」
「……ぁ……あ゛……っく……」
「無理に声出さなくて大丈夫だよ。メロンパンとスナックパン。それに喉にいいって言うはちみつ、」
彼女はメロンパンをはむはむと口に入れる。
喉煮物を入れるたびにビクビクと喉を震わせる。
「まずはちみつから飲んで見よっか、喉に塗る感じで、良かったらやろうか?」
こくん
彼女は顔を縦に振る。
「じゃあ顔を上げて、そう、口を開けて、そう、あー、うん、そうだよ。偉いね。それじゃあ流すね。鼻で息をしてあんまりすぐ飲み込まずに垂れるのを待っててね。
行くよ。」
はちみつを垂らす
たらーっと流したはちみつが舌に触れる。ドロドロとしたはちみつを喉が拒否をしているのか喉が空いていない。
「喉が閉まっちゃってるね。喉開けれる?」
「うぅ……」
彼女の声が肯定を伝え、喉がゆっくり空いてはちみつが流れていく
たれたはちみつが流れ糸が作られ舌で遮られる。
少し苦しそうな顔をしたあと、喉を触り
「あ……」と声を出した彼女の顔が微かに明るくなる。
「直後に効くわけじゃないと思うから、喉をあっためてゆっくりしておくんだよ。
あとここにいてもいいか先生に聞いたら、『好きにしろ』だって。」
キーンコーン
「あ、予鈴だごめんね居てあげたいんだけど、授業受けなきゃだから、いくね。
明日もお昼持ってくるから。」
僕が外に出ようとすると彼女に服を引かれる
「んっ、どうしたの?」
彼女はいつもと違う甘えた様子で
「ぎ、ぎゅう、して。」
と掠れた甘い声で言う。
「……いいよ。」
「「ぎゅう」」
そこに漂う空気は甘くて甘くて。
「うぇ…う、ぉおぇ。」
とても気持ち悪かった。
便器にさっき食べたパンだったものを流し手洗い場に足を運ぶ、
口をゆすぐ、決していいとは言えないような水もこんな時であれば口にしなければならない。
ぐちゅぐちゅ、っぺ。
僕は口を洗い前を向く。
そこには鏡があり僕を映す。
青い顔に似つかわしくない頬の赤らめと左右合わない口角が僕に快楽を告げる。
口を拭い何も無かったかのように、クラスの席に戻る。
それから、彼女の喉が治るまで僕は彼女の喉にはちみつを注ぎ続けた。
最初こそ、閉まっていた喉は、数回繰り返すとはちみつを流しても受け入れるようになっていた。
そして、流し終えて僕が帰る前。
彼女は二回に一回ハグを要求する。
僕はそれに答える
「……ぎゅう」
「ん。」
「「ぎゅう」」
掠れた声。
「…ぎゅう」
「うん。」
「「ぎゅう」」
声が治りかけているのか、甘い声が乗り出す。
「ぎゅう」
「……」
「「ぎゅう」」
治っている甘い声、それでもはちみつを飲む明日も明後日も。
ぎゅう
リファレンスする甘い声、その度思い出す気持ちの悪いいじめ。
そんな彼女にわざと捕まる僕。全てが気持ち悪い。
こんな僕に騙されて簡単に依存する簡単な愚者
僕の快楽のために全てを尽くして、クラスという盤面を使い、クラスメイトという駒を使う。狂言回し
その全部。
気持ち悪くて、きもちわるくて。
気持ちがいい。
トイレで喉から異物が通る度。
彼女とハグをする度。
悪寒が快楽へと変わるその時。
僕はこの時のために生きているのだと、純粋に感じた。
それに、予感がする。
また、気持ちいいことが始まる。
そんな予感が。
「壊してやる。壊してやる。壊してやる!」
「彼岸しの。彼岸しの、彼岸しの!」
暗い部屋薄明かり、パソコンだけが光る。
壁にはびっしり彼女の顔写真が貼ってある。
ただ。不気味なのはその全てにバッテン印が付いていることだ。
性格は真ん中ぐらい。嫉妬心は人以上、心の脆い少女がいた。
「あおちゃまぁ!」
聞きなれた声。私を慕う声。
「……つぼみ?なんで来たの?」
「いやぁ、学校行くの疲れちゃって、あおちゃま相手してくれないかなぁって。」
まさかそんなことが帰ってくるなんて思っていなかった。
「……いいよ。おいで。」
つぼみを、私のつぼみを部屋に呼ぶ。
「ごめんね。こんなところ見せちゃって。」
「いやぁ?私はどんなあおちゃまでも可愛くてかっこよくて、だぁいすきだから!」
やっぱり、つぼみは、私のつぼみはとってもいい子でとっても可愛い。
「あははっ」
少女たちはバッテンに囲まれた部屋で、これからの話をする。




