堕ちた一等星
噂は拡散された。
「しのの画像見た?」
「画像?うわさなら聞いたけど?」
「ウチ画像入手したから、見る?マジやばいよ!」
「見るみる!」
「あの画像はAIに作られたものでしの様のじゃない!」
「でもさぁ。AIにはみえないよ。」
「うるさい!」
騒音
ただいつもよりかは煩わしくない。
何なら心地いいほどだ。
混乱破滅への一手
彼岸しのは地上に近づく
堕ちる
落ちる
おちる
「なにこれ!こんな写真知らない。」
図星
「こんなキモイ男知らない!」
図星
「私悪くない!」
図星
「それ、あおちゃんのカレシだよ。それに
20時10分から二人ではいったホテルの領収書。
一昨日肇が吐いたよ。」
「はあ!?そんなのでたらめだろ!」
荒れた声、開く目、
きらきら輝く一等星は炎をまとい落ちてくる。
「でたらめじゃない。」
ザーッとノイズの後ばつの悪そうな男の声が聞こえる。
「僕は彼岸しのちゃんとホテルに行きました。紫陽花ちゃんと会えない日が続いていて、そんなときにしのちゃんに遊ぼうと誘われました。
ほんの出来心で、誘いに乗りました。
そしたらその日に、彼女から
ご飯が食べられないと相談をされて、心を埋めてくれたお礼にご飯をおごったんです。
そしたら、お金がないからお礼できるものがないと、だから、ホテルに行きませんかと誘われたんです。
僕は紫陽花ちゃんがいるからと断ったんですけど、彼女は何も返せないと泣いてしまったんです。
下心と、庇護欲がないまぜになった僕は、そのまま誘いに乗り、なし崩し的に……
ほんとうに悪いと思っています。
もし、一言でも交わしていいなら謝罪がしたいです。」
録音は終わる
青ざめた彼岸しの
ざわめきが起きる外野
その中心に花束つぼみがいた。
「これがあいつが言った証言。あおちゃんは寝込んで学校に来れてない。」
心底さげすんだ瞳で彼女は告げる。
「最低。」
ぞくぞくするほどの声はクラスに響くわたる。
彼岸しのは教室を飛び出し廊下を駆け抜ける。
僕は人ごみに紛れて彼岸しのを追う
彼女がよく行く場所に別館二階の準備室がある。
ここがその別館だ。
足音を殺して準備室にいく
ガタン、だったりガシャンだったり人のいる音が聞こえる。
「だれかいるの?」
僕はわざとらしくおびえた声で部屋を見る
そこには
堕ちた一等星がいた。
「ぅおえ、ぇ、うっく、うぇ」
ボチャボチャと吐瀉物が彼女の制服を汚す。
僕に気付かれてるにも関わらず抵抗すらできていない。
「うっ、はぁ、ぁ、っぷ、なんでぇ、おまえが、ここに、うぇおえ、いるんだよ。」
鼻水、涙、吐瀉物で頑張ったであろうメイクが歪む。
「クラスにいずらくて、ぼく、人が責められるの苦手で……」
彼女は困惑がうかがえる表情で僕を見つめる。
「なんだよ。なんだよそれ!ふざけんな!なぐさめてるつもりか?」
「いや……確かに、悪いことしちゃったのかもだけど、クラスから責められるのは違うんじゃないかなって。」
「あいつらが、あいつらが悪いんだよ!誰もかれも面白くもない何もない空っぽばっかり。
ってかあいつらだって同じことやってるくせに!」
「それで、しのさんだけが責められてるのは、辛いよね。」
「……」
彼岸しのは僕の発言に耳を傾ける。
人間でかつ思春期の女子の感情だ。僕にしたことや感情なんて、二の次にさせる。
「大丈夫ですよ。僕は引きませんし。毎日話してくれたのはしのさんだけでしたから」
彼女の目からあったかい涙が落ちる。
「大丈夫です。僕はあなたの味方ですよ。」
彼岸しのは膝から崩れ落ちる。
それを支えながら僕は言う。
「僕休み時間はここに来るので、学校来てください。」
すこし悩んだ末答えを出そうとしたところよっぽど嘔吐の後の怒声が響いたのか彼女は声を出そうとして出せなかったらしく、こくんとうなずいた。
僕はそんな彼女を抱擁する。
賭けだった。成功すれば価値が確定する賭けだった。
「ぁ……」
かすれた声の彼女の声はとてもか細いがどこか木菟割れたようだった。
吐瀉物が僕に絡みつく
あらゆる液体が僕に染み付く。
「大丈夫です。大丈夫です。」
頭をなで、彼女が泣く。
僕は素直にこう思った。
気持ち悪い。




