夏の始まり
暑い。てか熱い。とける。死ぬ。
クーラーが壊れた。しかも修理は最短で、一週間後とのことだ。どこか涼しい場所に避難したいが、外は灼熱の午後の二時。外に出ただけで、倒れかねない。
それにこんな日に限って、猫が俺にひっついてくる。わかってるよ。お前を残して避難なんて、出来るかっての。
俺は装着してたネッククーラーを外し、愛猫の体に巻いてやった。
どうやら気に入ったらしく、満足げな顔をしていた。
さて。次は俺だ。
家の中で一番、涼しい場所を探さないとな。
あれこれ探し回って、行きついたのは和室だった。
うん、ここならいいか。
部屋の位置的に、あまり日の光は当たらない。
その上、障子のお陰でその少しの日光も遮られてるし、少し窓を開ければ、風も通るだろう。
やれやれ。休日だというのに、大変な事態になったせいで疲れた。少し、昼寝でもしよう。
俺は風が吹き抜ける和室の、畳の上に横になった。
「……う……」
暑い。てか重い。
目を開けると、腹の上に猫が乗っていた。
ネッククーラーは、すっかり温くなってしまったらしい。
じろり、と睨むような目で俺を見下している。
……俺のせいじゃないんだが。
しかし、何でこんなに暑いんだ?
開いた窓から外を見ると、既に夕方だった。
しかも、その沈みゆく太陽は、和室に降り注いでいる。
そうか。日中は日当たりが良くない代わりに、夕時は西日がこれでもか、と降り注ぐんだ。
はあ、と俺は溜め息を吐いた。
せっかくいい場所を見つけたと思ったのにな。
そう思いながら、外の様子を覗こうとしたとき。
ちりぃん、という、涼し気な音が聞こえてきた。
風鈴?
隣の家か。
俺はその音を聞きながら、猫を撫でる。
──西日に風鈴、そして猫。
夏が始まった。
こんな一日も、たまになら悪くない。




