表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

おせっかい

「はい、いらっしゃい! 大きいのを一つですか? それとも普通のを二つですか?」


 声を掛けられた俺は返事をしながら、客をこっそりと観察した。

 海の家で浮き()(ぎょう)も営んでいる身としては、客の素性(すじょう)推察(すいさつ)するのも、娯楽(ごらく)のひとつなのだ。何しろ海のそばでは、ネット環境にも(とぼ)しいことだし。


 客は二人。互いに何となく距離のある、若い男女。

 恐らく付き合い始めの、学生カップルだろう。

 ただの予想だが、当たっているはずだ。

 何しろこちらは日に何度もカップル客の相手をしながら、何年も働いているのだし。


 案の定、カップルは赤くなりながら普通のを二つ、と言ってきた。

 やれやれ。もったいないことだ。

 二人で使える浮き輪を選べば、距離が縮まるだろうに。

 俺はふと思い立ち、それじゃあ準備しますから、と言って、浮き輪の用意を始めた。


「じゃあ、楽しんで下さいね」


 俺はカップルそれぞれに浮き輪を渡し、ひらひらと手を振った。カップルは浮き輪を持って、海の中に入って行く。

 俺はそれを目で追いながら、そのときが(おとず)れるのを待った。

 やがてカップルの片割(かたわ)れ、女のほうの様子がおかしくなる。(あせ)っているようだ。それはそうだろう。


 何しろ俺(みずか)ら、途中で空気が抜けるよう、浮き輪のひとつに細工をしていたのだから。


 様子を見ていると男のほうが彼女に近づき、その手を取って、二人で男の浮き輪に(つか)まり始めた。 


 それを見て俺は、心の中でガッツポーズをする。

 これであの二人の距離も、少しは縮まっただろう。


 何しろ、ネット環境にも事欠(ことか)く仕事だ。

 たまにはキューピッドのようなおせっかいも、娯楽のひとつになるのさ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ