暇つぶし
ぷかぷか、ぷかぷか。
気が付けば、俺は雲に乗っていた。
なるほど。これは夢だろう。
その証拠に、頬をつねっても痛くない。
そうとわかったら、空中遊泳としゃれこみますか。
そう考えた途端、雲が動き出した。
さすが夢なだけはある。どうやら俺の思う通り、雲を操れるらしい。
俺は雲を操り、空の散歩へと繰り出した。
ああ、楽しい。童心に返った気分だ。
何しろ、ここしばらくは残業続き。そして家に帰ったら帰ったで、ろくに食事もせず、寝るだけだったものな。
俺は心ゆくまで、雲での散歩を楽しんだ。
やがて、辺りが暗くなり始めた。随分長い夢だ。
楽しいが、そろそろ覚めてもいいだろう。
そう考えたとき、目の前に白い服を着た人間が現れた。背中に羽が生え、頭の上には、丸い輪っかが浮いている。
一目でわかる。天使というやつだろう。
「どうです。楽しんでいただけましたか?」
なるほど。
仕事に忙殺される俺のことを憐れんだ天使が、こんな夢を見せてくれたというわけか。
俺は素直に、感謝を口にした。
「ああ、久しぶりにのんびり出来たよ。ありがとう」
「それは良かったです。では、行きましょうか」
「行くって、目を覚ますってことかい?」
「いいえ。あなたは過労死したのです。この空の上に、天国があります。この、雲での散歩は、天国で順番が来るまでの間の、ただの暇つぶしというわけですよ」




