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獣害  作者: 何奴 音乃
3/3

志麻 拓也3


「志麻少年。君の故郷である「八葉村」。獣害被害により壊滅しているね?」


「私の記憶によれば大型2体。中型4体の大規模地獣害だった筈だよね」

「石動理事長もあの時の討伐隊に参加されていたのですね」

「あぁ、当時はまだ中隊長として前線で隊を指揮していた頃だったね。もしかしたらあの時君にも会っていたのかも知れないね」

「そう...ですか」


石動氏はふぅと息を吐き話しながら崩れてた姿勢を正してから再度話を始める。


「幾分か脱線してしまったね。話を戻そうか。

君の目標である獣害の根絶。その根源(ルーツ)はその経験から来る目標だと。そういうことだよね。」


俺は石動氏と話を交わしながら思い出していた。

あの時の凄惨な光景を。

害獣共(あれら)から親父に手を引かれながら逃げるあの道を。

害獣共(あれら)から逃げながら後ろから聞こえた大切な人達の悲鳴を。

害獣共(あれら)から逃げながら見知った顔の死体に足を取られ何度も転けそうになったこと。


そして害獣共(あいつら)が俺からたった一瞬で奪い去って言った日常を。


あんな惨状はもう起こしてはいけない...。

そのためだったら俺は...。

俺は...。


「この体を贄にしてでも...俺はやり遂げます」


石動氏は鼻でため息をつき背もたれにもたれかかって軽く上を向き、ただ一言呟いた。


「そうか」

と。

(あの凄惨な被害を目の当たりにしながら尚...そうか...君はとても優しいんだね...志麻少年。ならば私が示せる道は...)


()()()...或いは...」

「え...何か言われましたか?」

「ん?いやすまない。ただの独り言だ」


石動氏は何か思いついたかのようにパンと手を叩きソファーから立ち上がった。

それに釣られ俺も立ち上がってしまった。

俺は思った以上に石動氏を前にまだ緊張していたようだ。

「うん、うん。了解した」

俺から顔を背け2、3回ほど頷き晴れやかな顔で再度俺に顔を向けた。

「君の覚悟は確認した。今日はここまでにしようか」

「え、え、いや何も話してないじゃないですか...これで終わりなんて...」

「大丈夫だよ志麻少年。君の意思、しかとこの私が確認したとも」

「は...はぁ...そうですか」

「故にもう帰って結構。気をつけて帰宅したまえ」


自席に戻り机に溜まった書類に目を通し始めた石動氏に、失礼しますと告げ俺は部屋を後にしようとした。


「もし」


ドアを閉める前に石動氏が俺に言った。


「もし卒業までに進路が決まらなかった場合。またここに来るといい。その時は君の最適な道を提示しよう」


..........

......

...


そして訪れた本日。卒業式が終了し今に至る訳で。

約束の日になってまでも俺は進路を決められていない訳で。

「どうするかねぇホントに...」

「お前も優柔不断と言うかなんと言うか...物を選ぶって事が下手くそだったよな」


休憩室の机に突っ伏して悩んでいた俺に話しかけてきた色男は数少ない学友である湊 惣右衛門という男であった。


惣右衛門は防衛大学入学時からの友人で俺の夢を聞いても笑わなかった数少ない人物である。

その甘い顔は女を引き寄せ、その軽快な性格は男共を虜にする。全方向人たらし野郎なのだ。

「お前さぁ...普段の服でもモテモテだってのにスーツなんか着ちゃったらギャップで失神する女子もいるだろうに...自分のツラが凶器である自覚を持ってくれよ」

「確かに卒業式中黄色い声が止まなかったねぇ。

さて親友よ。話を戻すがまだ進路決まってないのか?このままだと後方支援に回されちゃうよ?」

「噂だろ?最後まで進路が決まらなかったら非戦闘員に配属されて死ぬまでこき下ろされるって」

「だとしてもだ、石動理事長のお慈悲にあぐらをかいていいわけが無いだろ?もしかしたら君にピッタリな道ってのは後方支援部隊だーって言われるかもしれないんだよ?」

「おいおいやめてくれよほんとに...そこだけがほんとに不安なんだからよぉ...」

顔を両手で覆い不安な顔を世から隠す。

「やれやれ全くだよこの親友は...そういえば話は変わるが、これは小耳に挟んだことなんだがね。校内に見慣れない人物が居たらしいんだ」

「卒業式なんだ来賓とかで知らねーおっさんいっぱいいたじゃねぇか」

「それが来賓じゃないっぽいんだ。式中の来賓紹介にいなかったそうだし、何より目撃された場所が場所なのさ」

「?場所?」

「理事長室に見慣れぬ男性が入っていくのを後輩ちゃんが見たんだってさ。もしかしたら君に関係しているのかもね」


惣右衛門の教えてくれた不審者(?)の目撃情報を胸に俺は理事長室へと向かった。


(どうか中に不審者いませんように...)

コンコンコンとノックをする。

「入りたまえ」

良かった石動氏の声だ。

氏がいるのなら大丈夫だろう。そう思い扉を開くと、そこには180cmはあろう大柄ながら華奢な印象を持たせる見慣れぬ男が目の前に立っていた。

その見知らぬ大男に見下ろされながら俺は心の中で叫んだ。


(ふ...ふ...不審者だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!)


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