07. 再燃
2021年4月5日
4度目の入学式を終え、カノンとVINEの交換をした私は、急いで家に帰った。
自室の机にノートを広げ、3度の人生の分岐を書き出した。
まず、部活に入るか、入らないか。
部活に入る場合、歴探か、軽音か。
①部活に入らないと、友達ができない。
②軽音に入ると、受験に失敗する。
③歴探に入ると、誕生日に気絶する。
まだ選んだことがない選択肢としては、歴探と軽音以外の部活に入ることだけど、また①か②のようになる可能性が高い気がする。
成高は何かしらの部活の強豪校というわけではない。
歴探も、私たちの代が運良く賞を取っただけに過ぎないのだ。
「うぅーん。」
私は魔法のランプを擦るように、こめかみの辺りを指で撫で回した。
大事なことは、友達と、受験。そして、かまぼこサブレだ。
1度目の人生では、私はその全てを手にしていた。
しかし、誕生日にトラウマを思い出して気絶するのだ。
となると、やはりキーになるのは、氣流改正だ。
奴からどう逃れるか...。
2年生で、不本意ながら部長になった私は、顧問である氣流と関わる機会が増えてしまった。
その結果、私は氣流から様々なハラスメントを受けることとなった。
パワハラ、モラハラ、セクハラ、スメハラ、ヌーハラ、マタハラ、マリファナ...。
よし、部長になることを全力で避けて、平部員として生きよう。
そうすれば、氣流に関わる機会も、最小限に抑えられるはずだ。
今後の計画を立てた私は、安心して穏やかに眠った。
「ゆうゆうー!」
...誰?
暗闇の中で、遠くから声が聞こえる。
「ゆうゆうー!火、付いたよー。
ゆうゆうも花火持ってこっちおいでよ!」
花火?
気がつくと、私は両手に手持ち花火を握っていた。
「早くしないと、火、消えちゃうよー!」
そうだ。
今日は歴探のみんなで花火をするんだった。
遠くにほのかに光が見える。
「今行くー!」
私は手を振って、走り出そうとした。
そのとき、背後から聞き覚えのある声がした。
「声、小さくて聞こえませんよ。」
「わあ!!」
私は勢いよくベッドから起き上がった。
なんだ、夢か...。
私は、目覚めた後の、ただの騒音になっている目覚まし時計を止めた。
夢なんて見たの、いつぶりだっけ。
懐かしい夢だったなぁ...、なんて、呑気に言ってられないんだ。
今日、ついにあいつに会うんだから。
私は急いで身支度をして、家を出た。
「頑張るぞー。ウラ!ヤハ!ハァ!」