06. 再選
2025年10月23日
「ゆうゆう氏、そろそろお昼食べるっすよぉ。
購買行きましょ〜。」
「うん、行こう。」
私は、左右にひょろひょろと揺れながら歩く夢慈那と購買へ向かった。
重負乱大学は初めて来た。少し探検をするような気分だ。
構内の広さには驚かされたが、それに対して購買はとても狭い。
品数もあまり多くなく、何か買いに来ている人も少ない。
元の人生では、大学で購買に行くのが日々の楽しみだった。
根田椎大の購買はとても広かった。
私はそこで、かまぼこサブレを毎日買っていた。
スーパーやコンビニでも一部しか取り扱っていない入手困難なそのお菓子が、私は大好きだ。
ピンクと白の可愛らしい見た目と、素朴な甘さとかまぼこの香りが絶妙にマッチしたその味に、見事に虜になった。
購買に着いてから、私は一目散に、かまぼこサブレを探した。
隅から隅まで探し回った。
そして、とうとう気づいてしまった。
「え、まじ。
この大学、かまぼこサブレ売ってないの?」
「あぁ、そっすねぇ。
宮城の大学で取り扱ってるのは、根田椎大だけだった気がするっすぅ。」
私は一気に体の力が抜けてしまった。
かまぼこサブレが食べられないなら、大学に通う意味がない。
ああ、やっぱりこの人生も失敗だ。
私の人生では、なんとしても、根田椎大学に合格することが必要なんだ。
そのためには、歴探で手にしたような実績を作らないといけない。
私は今まで、歴探に入部したことを何度も後悔した。
でも、結果的には実績を作ることができたし、歴探で過ごした日々も悪いことばかりではなかったのだ。
部活の仲間と遠征に行ったり、文化祭の準備をしたり、夏には海で手持ち花火をしたり。
仲間との大切な思い出がたくさんある。
「あれ、大丈夫っすか?ゆうゆう氏ぃ。」
あの氣流さえいなければ...。
心臓の鼓動が速くなり、私は意識が遠くなっていくのを感じた。
気がつくと、私はまた、成高の入学式に戻っていた。
またか。
4度目の人生...。
1度目は氣流に会って失神、2度目は友達が消え、3度目は成功に見えたけど、まさかのかまぼこサブレとの別れが。
もう、何かを失うのは嫌だ。
...今度こそ、絶対楽しい人生にしよう!
「行き当たりばったりだけど...なんとかなれーッ!!」