表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

05. 再転

 2021年7月7日


 過去に戻ってから、3ヶ月が過ぎた。

 人生は2度目ともなると案外味気なく、あっという間に時間が経ってしまった。


 私はあまりの授業の退屈さに欠伸をして、窓の外を眺めた。

 七夕の今日に相応しい、雲ひとつない青空。


「わあ、綺麗ー。」


 それにしても、勢馬池の音楽の授業は相変わらず、退屈すぎて面白い。

 歌う時間なのに誰も声を出さないせいで、勢馬池の独唱会になっている。

 4人でカラオケで集まる時は、いつも友莉ちゃんが勢馬池の真似をして歌ってくれた。


 元の人生の友達ともう一度仲良くなるために軽音に入部した私は、違うバンドやパートの人たちとも積極的に関わることで、元の人生並みに友達を作ることができた。

 まだ関わっていないけど、3年生になれば、友莉ちゃんともおーばともまた仲良くなれるはず。


 友達をたくさん作ることが正しいルートならば、きっと私はそのルートを辿っているはずだ。

 今度こそ、友達も失わず、氣流トラウマからも逃げ切って、楽しい人生にするんだ。


 ...もう、あんな思いは2度としたくない。


 私は目を瞑って考えていた。



「ゆうゆう氏ぃ〜。」


 誰?

 聞いたことのない声が私の名前を呼んでいる。

 目を開けて声のする方を向くと、知らない顔が限界まで顔を近づけて、私を覗き込んでいた。


「わああーー!!!」

 私は思わず叫んだ。

「うほぁ!どしたんすかぁ、ゆうゆう氏ぃ。」


 赤眼鏡に赤いチェックの帽子といった、女子小学生のようなファッションセンスの女子が、黄色い歯を剥き出して、私に笑いかけている。


「え......。すいません、誰...?」

「誰ってぇ、ひどいっすよぉ〜、ゆうゆう氏ぃ。

 夢慈那むじなっすよぉ、夢慈那ぁ。」


 いやまじで誰だよ。


 池袋に常駐していそうな彼女は、どうやら私のことを知っているらしい。


 鳥肌が立つのを感じながら、私は彼女に尋ねた。

「ごめんなさい、えっと、変なのは承知なんですけど、あなたと私ってどういう関係...?」

「ちょっとさっきからなんすか〜?

 冗談にしてもひどすぎっすよぉ。

 夢慈那、さすがに泣いちゃうっすぅ〜。」


 一人称が名前なタイプの彼女は、しくしくと泣く素振りをしてそう言った。


「ごめんなさい...、ちょっと混乱してて。失礼なんですけど...。」

「しょうがないなぁ。

 夢慈那とゆうゆう氏はぁ親友っす。言うなれば、魂の伴侶ソウルメイトっすぅ。」


 わあ。

 今までもこういった感じの友達は居たけれど、親友とまで言われる関係になったことはない。


「あ、そうなんだ。」

 私は無難な返事をしてから、スマホを確認し、ここがどこなのかを知るため、辺りを見渡した。


 スマホには、2025年10月23日と表示されていた。

 そして、おそらく、ここはどこかの大学の講義室だ。

 私は近くに張り紙を見つけた。


 "重負えふらん大学 学園祭"


 重負乱大学といえば、宮城の有名な底辺大学だ。

 私はそこに通っているのか?


 最初の人生で私が通っていた根田ねたつい大学は、頭がいいわけでも悪いわけでもない、普通の大学だった。

 歴史探究部で出した実績のおかげで、AO入試で合格できた。

 その実績がなければ、私は面接で一言も喋ることができなかった。


 そうか。私、受験に落ちたんだ。


 軽音で友達をたくさん作って、勉強もせず遊びまくった結果、私の学力で通えるのはこの大学くらいになってしまったのだろう。


 でも、底辺だからって、親友がオタクだからって、楽しく人生過ごせないわけじゃない。

 VINEの履歴を見る限り、高校時代の友達ともまだ繋がりはあるみたいだし。


 大丈夫。この人生、間違ってなんかない。


 「Fラン大学?だからなんだってんだよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ