表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

10. 再転

 2025年10月23日


「ゆうゆう氏、そろそろお昼食べるっすよぉ。

 購買行きましょ〜。」

「うん、行こう。」


 私は、左右にひょろひょろと揺れながら歩く夢慈那と購買へ向かった。

 重負乱大学は初めて来た。少し探検をするような気分だ。

 窓から真っ赤に紅葉した大きな木が見える。

 施設も綺麗に掃除されてるし、偏差値以外は、まあまあ良いじゃん?


 構内の広さには驚かされたが、それに対して購買はとても狭い。

 品数も多くはなく、何か買いに来ている人も少ない。


 元の人生では、大学で購買に行くのが日々の楽しみだった。

 根田椎大の購買はとても広かった。

 そこで"かまぼこサブレ"が、私を毎日待っているのだ。

 普段は自宅から自転車で30分かかるコンビニで買い溜めをしているが、大学生になったら、大学でそれが買えたのだ。

 一応言っておくが、30分自転車を漕がないとコンビニがないわけではない。

 スーパーやコンビニでも一部の店舗でしか取り扱っていない、とてつもなく入手困難なお菓子なのだ。

 もちろん、大学では買い溜めをできるほどの量は売っていないので、大学生になってもコンビニには通っていた。


 私は、毎週30分自転車を漕いでも苦にならないほど、かまぼこサブレが大好きだ。

 ピンクと白の可愛らしい見た目と、素朴な甘さとかまぼこの香りが絶妙にマッチしたその味に、見事に虜になった。


「今日の日替わり弁当はなんだろなぁ〜。

 あれ、ゆうゆう氏〜?」


 購買に着いてから、私は一目散に、かまぼこサブレを探した。

 隅から隅まで探し回った。

 そして、とうとう気づいてしまった。


「え、まじ。

 この大学、かまぼこサブレ売ってないの?」

「あぁ、そっすねぇ。

 宮城の大学で取り扱ってるのは、根田椎大だけっすねぇ。

 夢慈那、それ聞いたときめっちゃショック受けたからぁ、よおく覚えてるっすよ〜。」


 私は一気に体の力が抜けてしまった。


「ゆうゆう氏もあれ好きなんすかぁ?さすがソウルメイトっすねぇ!」

「う、うん。」


 かまぼこサブレが食べられないなら、大学に通う意味がない。


「あれ、ゆうゆう?」


 …この声、聞き覚えがある。

 私は慌てて振り向いた。


「な、なかれん...?え、なんでこんなとこいるの?」


 何が起きているんだ?

 彼が通うはずの大学は、ここまで底辺の大学ではないはずなのに。


「なんでって、授業受けてお昼になったからご飯買いに来たんだよ。なんだその顔は。」


 私は気持ちの整理がつかず、顔中の筋肉が緩むのを感じた。


 彼は、私と同様、受験に失敗したのだろう。

 理由はたぶん、私が歴探に入らなかったことで、なかれんと歴探を繋ぐものがなくなったからだ。


「そんじゃ、俺もう行くから。またな。」


 私の選択が、誰かの人生をこんなにも変える可能性があるんだ。


 なかれん...。あんなに大学を楽しんでいたのに。


 ...まあ、そんなことはどうでもいい。

 今、何よりも重要なのは、かまぼこサブレが重負乱大学には無いということだ。


 私は今まで、歴探に入部したことを何度も後悔した。

 でも、結果的には実績を作って、根田椎大に入学することができたし、歴探で過ごした日々も悪いことばかりではなかったのだ。

 部活のみんなと遠征に行ったり、文化祭の準備をしたり、夏には海で手持ち花火をしたり。

 仲間との大切な思い出がたくさんある。


「あれ、大丈夫っすか?ゆうゆう氏ぃ。」


 あの氣流さえいなければ...。


 心臓の鼓動が速くなり、私は意識が遠くなっていくのを感じた。



「新入生、退場。」


 気がつくと、私はまた、成高の入学式に戻っていた。


 またか。


 4度目の人生...。

 1度目は氣流に会って失神、2度目は友達が消え、3度目は成功に見えたけど、まさかのかまぼこサブレとの別れが。


 もう、何かを失うのは嫌だ。


 ...今度こそ、絶対楽しい人生にしよう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ