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旅では人間性が見えてくる、のか?

 旅の中でお互いのことが分かってきた。

 キュビュドは相変わらずなぜか俺のことを毛嫌いしていて、俺がいる会話の中には入ってこようとしない。俺はキュビュドが喋っていても平気で会話に入っていくのだが、そうすると嫌悪感を隠そうともせずにまず俺を睨む。『話に入ってくんな』という感じだ。俺はそんなことをいちいち気にしてられないのでそのまま雑談をする。輪の中にいる他のメンバーは多少気まずそうにする。しかしそれ以上の反応はしない。言葉にはしないが一方的にキュビュドが俺を嫌っているということをみんなが理解していて、その上で中立を保っているといった感じである。まあ、年齢差を無視すればいじめっ子による俺へのいじめではあるのだが、冒険者の7人パーティではいじめもクソもない。そんなことをしたら出来る仕事も出来なくなる。みんなもそれは理解しているようだった。

 一方で俺と仲良くなったのはチトで、金のためなら仕事を選ばない何を考えているか分からない15歳の若手という俺の事前情報の印象と違って、サバサバしたいい奴だった。仕事を選ばないというのは本当のことなのだが、そのお陰か年齢の割に過去の仕事の話が滅法面白く、俺は彼の話を聞くのがすっかり好きになってしまった。彼の話を聞くと人間の人生には本当に色々な種類があるのだと思う。向こうも俺のことが気に入ったらしく、チトの方から話し掛けて来る回数も増えていった。

 ただ、客観的に見ると、年代の近いギリツグやヒャギオガとはあまり会話をしていない。というかぎこちない感じだった。お互いに表面的な付き合いに終始していた。この理由もなんとなく分かって、ギリツグたちは金のために仕事を選ばないというルートにはまだ入っていない。その立場からだと、15歳にしてすでに裏社会ともコネができているチトはやばい奴なのである。関わると自分もそのルートに入ってしまう危険があって、かといって冒険者という仕事をしていて裏社会と敵対してもいいことはないので、自然に表面的な会話になってしまうのだろう。俺も若い頃はやばそうな奴とはなるべく関わり合いにならないようにしてきたからその気持ちはよく分かった。

 ガ・シュノナも人畜無害な、あまり敵を作らない男のはずだが、キュビュドからは嫌われていた。そのほかの人間とは特に問題なく仲良くなる感じ。とはいえ世代的に俺やクミャリョと話すことが多かった。チトとも俺を通して仲良くなっていた。

 キュビュドはギリツグのほかにはクミャリョとしか友好的でない。何を考えているのかよく分からないが、自分が親しくなれる人間の数が決まっていて、そのために交流を持つ相手を厳選しなくてはならない呪いにでもかけられているみたいだった。クミャリョとギリツグが、キュビュドから選ばれた人間ということになる。基準がよく分からない。それに、別に冒険者に限らないが、親しくなっておいて損をすることはないというのが普通の人間の振る舞いだとすると、俺の目には彼はかなり損をする生き方をしていると映った。この仕事が終わって村に戻ったときのことを考えると尚更なおさらだった。

 この旅は馬車を乗り継いでの3日間と、徒歩でうろうろする3日間の合計6日間だった。この6日間で一番のトラブルメーカーだったのがヒャギオガだった。俺は最初から予想していた。

 彼は勧誘されたわけではなく勝手についてきたメンバーだ。その上で野営の手伝いやちょっとした共同作業などを言われるまで一切やろうとしない男だった。傲慢だとか怠慢だとかいうのではない。単に、周囲を見てもみんなが何をしているかが分かっていない、分からないというタイプの人間だったのである。


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