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準魔法少女  作者: ザキ・S・レッドフィールド
第1章・準魔法少女の始まり
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準魔法少女、現状講習・1

・PM4時30分:直実明の自宅

 警察署に連れていかれるかと思ったら学校の近くにある家賃が高そうなマンションの3階の一室・・・直実さんの住んでいる場所らしいですが・・・。


「さ、食べるといい」

「美味しそうなのです!」


 わたしとアイリスちゃんが座らされたテーブルの上に出されたのはアイスクリーム・・・。

 お皿もアイスの形も綺麗でテレビで見る高級アイスみたいです。

 アイスに飾られているサクランボも形と色が綺麗で高級そうで美味しそうです。


「あの、ラウジーさんこれは?」

「君たちに食べてもらうために僕が作ったアイスクリームだ」


 そう言って私達の対面側の席に座るラウジーさん。


「・・・何故・・・ですか?」

「僕がマ・ペットやテキンノ・ズオープを使った事で君を処罰しようと想像しているみたいだから、勘違いしないようにさ」

「・・・それは、わたしが妙な事さえしなければ手荒なことはしないって事ですか?」

「そう思っていい。質問にはちゃんと答え、君に問題が無ければ安全は保障しよう」


 とか言って実はこのアイスクリームに自白剤の類が入っていたりして・・・。


「ハルちゃん、このアイス美味しいのです!」


 アイリスちゃん、少しは警戒した方が・・・。


「大丈夫よ、ハルちゃん」


 肩に手を乗せてくれた直実さんのその手はまるで妹を安心させるお姉さんのようです。


「ラウジーは危険人物には容赦ない性格よ。刑務所に入れるつもりなら今頃死んだ方がマシと思えるような拷問の真っ最中よ。自白剤も持っているし」


 ・・・その発言はラウジーさんの安全性の証明にはならない気が・・・。


「でもわたし、友達を助けるためとはいえ、不良の人達に暴力を・・・」

「クロバ=ハル、その事ならこの件に関しては君の正当防衛を認めるつもりでいる」

「それじゃあ・・・」

「川に放り投げたのは、やりすぎだけどね」

「うぅ・・・」


 やっぱりやりすぎですよね・・・。


「地面に落下するよりは安全だけど水上で首から落ちたらあの高さでも死ぬ可能性は十分あるのを覚えておいて欲しい」

「す、すみません・・・」

「大丈夫よハルちゃん。不良とはいえ生存は確認してあるから」


 直実さん、不良だから死んでいてもかまわないって言い方ですね・・・。


「さて、質問の時間だ」


 じっとわたしを見つめるラウジーさん・・・。


「テキンノ・ズオープをどこで手に入れた?」


 テキンノ・・・あの手袋の事ですね・・・。

 喋ったら親友のエマちゃんに危害が及ばないでしょうか・・・。

 でも勘の良さそうなラウジーさんだから嘘はすぐにバレてしまいそう・・・。

 自白剤も持っているらしいですし・・・。


「・・・親友から受け継ぎました」


 まだ名前は出さないでおきましょう。


「その親友はどこでテキンノ・ズオープを手に入れたか知っているかい?」


 ラウジーさん、元の持ち主より入手経路の方が気になるみたいです。

 まるでわたしがどう使ったか興味が無いかのように・・・。


「えっと・・・その親友から入手経路までは聞いていないので・・・」

「その親友は今どこに?」

「えっと・・・」


 喋っていいのかな・・・。

 もし喋ってエマちゃんの身に何かあったら・・・。


「どうやら、君は僕が返答次第で君の親友に危害を加える事を危惧しているようだね」

「それは・・・」

「ハルちゃん、本当に警戒しないで。すでにハルちゃんやそのお友達の安全性は保障されているから」

「え?」

「クロバ=ハル、君はあのテキンノ・ズオープを警察に渡せと言われれば躊躇いなく無条件で渡すだろう?」

「は、はい。そのつもりでしたけど・・・」

「あの兵器はかなり危険でね、持ち主の凶暴性が出やすくなる」

「凶暴性?」

「暴力を振るう事に快楽を覚える人間が使ったら衝動的に殺人を起こす事もある」

「え? どうしてですか?」

「あの兵器を装備すれば5才くらいの子供でもプロ格闘技選手をも簡単に殺す腕力を手に入れる事ができるのは一度使った君なら分かるね」

「・・・はい」


 自分の倍近くある体重のある男性を20m以上距離のある川に投げ飛ばすなんて普通の人間にはできないですし・・・。


「もし殺したいくらい嫌いな相手がいても相手が自分より強いなら大抵の人間は我慢する。けど、その人間がテキンノ・ズオープを手に入れたら話は違ってくる」

「・・・その嫌いな人を殺してしまうって事ですか?」


 でも普通の人はそんな事は・・・。

 エマちゃんも人を殺した事は無いですし・・・。


「全ての人間がそうではないがテキンノ・ズオープの興奮作用も相まって相手を殺してしまう可能性もある。『相手を殺せない』という抑止力が無くなるからね。テキンノ・ズオープの能力を使えば証拠を残さずに殺す事も可能だからだ」

「証拠を残さず? そんな事ができるんですか?」

「ああ、できるよ。君が知らないだけでテキンノ・ズオープにはいくつかの能力がある。それを使えば犯罪もやりたい放題だ。だが君はそれを手放せる。安全な人間の証拠だよ」


 証拠を残さず犯罪って・・・あの手袋に透明人間になる能力でもあるのでしょうか?


「君の友人も手放せた・・・だから君の友人がどこでテキンノ・ズオープを手に入れどう使ったかは調べるがあまり疑っていない」


 ・・・喋って大丈夫みたいですね。

 そもそも喋らないならそれはわたしの親友が悪用しているって言っているようなものですし。


「親友の名前は南雲エマって言います。東京都の西新井総合病院に入院中です」

「入院? 面会できる状態かい?」

「・・・あと数か月の命とお医者さんに言われたそうです。2週間程前に会った時は人口呼吸器を付けてかろうじて会話できる状態でした・・・」

「分かった。君の友人の件はこちらで調べておく。次に君に寄生していたマ・ペットについて質問がある」

「ハルちゃん、アイス食べないのですか? 食べないならアイちゃんがもらうのです!」


 アイリスちゃん、少しは話を聞いておくべきでは・・・ってもうわたしのアイス食べてる・・・。


「そのマ・ペットはどこで知り合った?」

「アイリスちゃんもエマちゃんから引き受けました」

「体の弱いエマちゃんに変わってアイちゃんが夜な夜な悪党達と戦っていたのです! てきんの・・・・なんとかを装備して悪者達をやっつけていたのです!」

「ほう、その夜間の戦闘については興味があるね」


 アイリスちゃんは悪い人たちと戦っている事を強調しているつもりでしょうけど、ラウジーさんはテキンノ・ズオープで『暴力』を振るっている事に注目しているみたいです・・・。

 さっきはわたしやエマちゃんがそれを手放せるから疑っていないと言っていたけど、逆に言えば理由も無く暴力や犯罪に使っていたら危険視していたって事ですし。

 相手の負傷具合ではアイリスちゃんが疑われる可能性が・・・。


「相手を死なせてしまった事は?」


 やっぱりラウジーさんは事件性や危険性を疑っています・・・。


「エマちゃんが悪党でも殺しちゃダメって言うから病院送りで済ましたのです!」

「つまり、宿主が止めなければ殺すつもりでいたと」


 やっぱりラウジーさん、アイリスちゃんを疑っています・・・。

 場合によってはアイリスちゃんが監禁・・・下手をすると殺処分される恐れが・・・。

 アイリスちゃんとは短い付き合いでしたけど、お父さんが離婚すると聞いた時や新しい家や学校で不安な時に話し相手になってくれて心強い存在でした。

 そのアイリスちゃんと別れるのは辛いです・・・。


「クロバ=ハル、下校中にテキンノ・ズオープで不良学生を退治した時はマ・ペットに操られていた状態かい?」

「いいえ、わたしの意思です」

「アイちゃんが操れるのはハルちゃんの意識が無いときだけなのです。何故か意識があるときは操れないのです」

「マ・ペットは人間の脳に寄生する。人間が体を動かす時は脳が体に電気信号を出して動く仕組みになっている。マ・ペットはその宿主の電気信号より自分の電気信号を優先させ体を乗っ取る仕組みだ。だが、1億人に1人の割合でマ・ペットの電気信号より宿主の電気信号を優先される体質の持ち主がいるというデータがある。君はその1億人の1人かも知れない」

「わ、わたしが1億人の1人・・・ですか?」


 自分が1億人に1人といきなり言われても現実味が・・・。


「しかし君は不良学生を撃退した後にクラスメイトの怪我をマ・ペットの能力で治した。アレはマ・ペットの操作ではないのか?」

「アイリスちゃんの能力自体は使えるみたいです。液体を出すのはアイリスちゃんの意思で出すのですが・・・」

「その液体はどれくらいの規模の怪我が治せるか興味あるね」

「深さ1cmの切り傷も治せたのです! エマちゃんが負傷した時にアイちゃんの能力でパパッと直したのです!」

「それ、初耳です」


 軽い傷なら治した事あるけど深さ1cmもの怪我も治せるなんて・・・テキンノ・ズオープといい、アイリスちゃんの能力といい、わたしってすごい能力備えて生活していた事に驚かずにはいられないですね・・・。


「~~~ッ、素晴らしいわ!」


 声をあげたのはさっきまで黙っていた直実さんでした。

 まるで高額当選した宝くじを拾ったかのような嬉しそうな顔です。

 一体何が嬉しいのでしょうか?


「クロバ=ハル、僕は君がテキンノ・ズオープとマ・ペットを大人しくこちらに手渡せば君を無条件解放するつもりでいた。けどナオミ=メイはそうでもないらしい」


 直実さんが?

 もしかして直実さんはわたしを疑っている・・・ようには見えないです。

 どちらかと言うと将来大金を稼げるアイドルを見つけたプロデューサーさんみたいです。


「ハルちゃん!」


 急にわたしの顏に自分の笑顔を近づける直実さん・・・怖いです。


「警察に協力してほしいの!」

「警察に・・・協力・・・?」


 どういう事でしょう。

 ただの中学生のわたしに協力って・・・。


「貴方は7宝具を使っても悪用しないイイ子よ!」

「7宝具?」

「そしてマ・ペットの癒し能力は戦場で衛生兵としても役に立つわ!」

「衛生兵?」

「ハルちゃん、私達と一緒にテロリストと戦ってほしいの!」

「て、テロリストと? いったいどういう意味ですか・・・?」


 そもそも7宝具って何ですか?


「僕が説明しよう」


 興奮している直実さんと違ってラウジーさんはクールなままです。


「君が使ったテキンノ・ズオープは異世界で造られた物だ。7宝具と呼ばれている7つの兵器の1つだ」

「・・・異世界?」

「別空間とでも言っておこう。その異世界は君が住む世界以上に化学が発展している」


 別次元って・・・まるで漫画とかの話みたいで信じがたいですけど、あの手袋が異世界の物だって言われると逆に信憑性があります。

 女子中学生のわたしが一瞬でパワーアップするのがわたしの住む世界の話だって言われても逆に信じられなかったと思います。


「その異世界とこの世界を繋ぐ扉は今まで発見されていなかったが2年程前にその扉が発見された」


 ラウジーさんの顏は変わらずクールですけど、隣で聞いている直実さんは嫌な思い出があるのか悔しそうな表情をしています・・・。


「その扉、警察やマトモな科学者とかが発見していたらどれだけよかったか・・・」


 直美さんが舌打ちして言うという事は相当嫌な出来事が・・・?


「直美さん、何かあったんですか?」

「何かなんてレベルじゃないわ‼」


 わわわ・・・ッこ、今度はテーブルを叩いて怒り出しました!


「・・・あ、ごめんなさい・・・思わず2年前の事思い出しちゃって・・・」


 良かった、わたしに対して怒っているわけでは無いようです。

 わたしが怒らせてしまったのかと思ったので安心しました。


「わ、わたしは気にしていないのでおかまいなく・・・」

「え、ええ。ではその2年前の事を話していいかしら?」

「はい」

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