表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
準魔法少女  作者: ザキ・S・レッドフィールド
第1章・準魔法少女の始まり
6/48

準魔法少女、初戦闘

 ・・・ここは・・・病院?

 個室のベッドに女の子が1人・・・あれは・・・エマちゃん⁉


「ハルちゃん、アタシもうすぐ死ぬんだって」


 隣には・・・わたし?


「え?」


 エマちゃんのベッドの横に置いてある椅子に座りその台詞に驚愕するわたし・・・コレってもしかして過去の記憶・・・の夢?


「先生達が話してるの聞いちゃったんだ。もう数か月の命だって」

「そんな・・・」


 エマちゃんは日本に引っ越して初めてできた友達だった。

 海外から日本に来て初めて仲良くしてくれたのがエマちゃんだった。

 当時、多少は日本語が分かっていたけど上手く喋れない部分もあってクラスの子と上手くコミュニケーションが出来なかったわたしに声をかけてくれたのがエマちゃんだった。

 上手く日本語が喋れなくても構わず付き合ってくれて、引っ込み思案なわたしが他の女の子達とも仲良くできたのもエマちゃんが先導したりしてくれたからだった。

 他の女の子と話すキッカケが増えて日本語が上手くなり、自然と他人に話しかけることができるようになった。

 全てはエマちゃんのおかげ、エマちゃんはわたしの救世主でもあった。

 そのエマちゃんが死ぬなんて信じられなかった。

 その時のわたしは大粒の涙を流した。


「死にたくないけど受け入れるしかないと思う。でも、やり残したことがあるの。それをハルちゃんに引き継いでほしいの」

「やり残した事?」

「うん。ハルちゃんに受け取ってほしいものが2つあるの。それは・・・」



・AM6時00分:黒場ハルの自室

 ‐pipipi‐

 ・・・う~ん、目覚まし時計の音・・・朝・・・起きなきゃ・・・。

 悲しい夢を見てしまった・・・。

<あ、ハルちゃん、目を覚ましたのですね>

 おはようアイリスちゃん・・・ってアレ?

 なんでわたし制服を・・・?

<アイちゃんがハルちゃんを操って着替えたのです!>

 ・・・え?

<ハルちゃんが寝ている時にハルちゃんの体を操って着替えたのです!>

 でもわたしの体は操れないんじゃ・・・?

<なんと、ハルちゃんの意識が無いときはハルちゃんの体を操れる事が分かったのです! だから試しに制服に着替えてみせたのです!>

 それでわたしが制服を着ていたんですね。

 でもジャージを履き忘れています。

<なんで昨日と同じようにスカートの下にジャージを履くんですか?>

 エマちゃんから受け継いだ『あの力』を持っている以上、いつ戦いになってもいいようにですよ。

<ハルちゃんは恥ずかしがり屋さんなのです>

 これが普通です。

 普通の女の人はスカートの中を見られるのは恥ずかしい事です。

<大丈夫なのです! カメラマンさんがちゃんとスカートの中が見えないように撮影してくれるのです!>

 なんですかそのカメラマンさんって・・・。

<つまり魔法少女のプライバシーは完璧なのです! ハルちゃんも綺麗な足を皆に見せつけてやるのです!>

 ですからわたしは魔法少女ではありません。

 ・・・あのハンガーにかけてあるあの服・・・いえ、衣装は・・・?

<アレはエマちゃんがアイちゃんと一緒に悪い奴らをやっつけていた時に着ていた服なのです! 人気魔法少女アニメ、『マジカル☆サシャちゃん』の服をモチーフにした魔法少女の戦闘服なのです!>

 こ、これを着てエマちゃんは外で・・・⁉

 どうみてもアニメの女の子が着るようなド派手な衣装・・・スカートの丈はかなり短くてちょっとかがんだり風が吹いただけで下着が見えてしまいそう・・・。

 服のいたるところにハートマークの装飾品・・・着るだけでも恥ずかしいデザインなのにこれを着て外に出て戦うだなんて・・・わたしだったら恥ずかしくて家の中から出られなくなると思います・・・。

 エマちゃんは体が弱い上に運動も苦手だから『あの力』を使う時はアイリスちゃんに体を操ってもらって戦っていたって聞いていたけど・・・。

 コスプレ趣味があったのは知っていたけどソレを着て戦っていたんだ・・・。

<ハルちゃんならきっと似合うのです! エマちゃんと体格も同じくらいだからさっそく試着するのです!>

 絶対に却下です。

<ああ、しまわれてしまったのです・・・>

 さ、朝ご飯の準備に行きましょう。



・AM6時20分:黒場家リビング

『次のニュースです。今日春日部市のデパートで謎の爆破事件が起きました』

 また爆破事件・・・。

<またってどういう事ですか?>

 あ、アイリスちゃんは昨日の朝は寝てましたから昨日のニュースを見てないんでしたね。

 ここ最近起きている爆破事件です。

 テロの噂が立っているのに警察が原因不明としか発表しないんです。

<それって実は警察がグルとかじゃないんですか?>

 まさか・・・。

<なら警察のお義兄さんに聞いてみるのです!>

 あ、噂をすれば鎧さんが下りてきました。


「・・・お、おはようハルちゃん・・・」


 義兄の鎧さん、まだヨロヨロですね・・・。


「きょ、今日は仕事休みなんですか?」

「・・・ああ。今日・・・は休・・・みさ」


 笑顔だけど身体は辛そうです・・・。


「今日の朝ご飯はベーコンエッグと焼き鮭ですけど・・・食べれます?」

「た、食べさせて・・・! なんならお金払うから・・・」

「お、お金は取りませんからゆっくり食べて下さい・・・」


 ニュースの爆破事故の事を聞こうと思ったけどこの様子じゃ警察の不祥事かも知れない事を聞く事は出来そうにないですね・・・。



・PM4時10分:教室(1-5)

「ハルちゃん、一緒に帰ろう」

「あ、長野さんも下校ですか?」

「うん、今日女子バスケ部休みだから」

「体育館が使えないのですか?」

「ううん、顧問の先生がいないから休み。うちの学校、何故か顧問がいないときは部活しちゃいけないって決まりがあるんだ」

「変わった規則ですね」

「そうだね。さ、一緒に帰ろ」

「はい」


<ハルちゃん、部活見学はいいのですか?>

 お義母さんに買い物を頼まれているので・・・。

<それじゃあ見学は明日からですね>

 それにせっかく長野さんが誘ってくれたので。

<これでお友達ゲットなのです!>

 長野さんは部活で一緒に帰れない事も多いかも知れないけどやっぱりこういう人がいると嬉しいですね。



・PM4時20分:帰り道

「あそこだよ。あそこのシュークリーム美味しいよ~」


 屋台を指差して駆けだす長野さんは小さい子供のようですね。

<あそこのシュークリームがそれだけ美味しいのからなのです>

「ハルちゃん、何個食べる?」


 長野さん、走りながらお財布を出してますけど、もしかしてわたしに買ってくれるつもりなのでしょうか?

 いきなり奢ってもらうのは気まずい気が・・・。


「あの、わたしお金持っているので大丈夫ですよ」

「ハルちゃん、気にしなくていいよ。ハルちゃんが女子バスケ部に入る記念だから」

「あの、わたしまだ女子バスケット部に入るなんて言った覚えは・・・」

「冗談だよ。本当は両親の宝くじが当たって臨時のお小遣いをもらって懐が暖かいだけ」

「そうだったんですか」

「だから今回だけだよ」


 そう言って長野さんは店員さんにお金を払って商品を2つ受け取って、そのうちの1個をわたしに。


「それではお言葉に甘えて」


 <おお~美味しそうなシュークリームなのです!>

 貰った途端に甘い匂いが・・・本当に美味しそうです。


「もらい」


<あ、誰です⁉ ハルちゃんのシュークリームを横取りしたのは!>

 身長180cmくらいで、高校生くらいの男の人・・・。

<リーゼントにピアス、手にはタバコ・・・不良なのです! 他にも同じようにガラの悪そうなのが数人いるのです!>


「モグモグ・・・うめえな」

「ちょっと! なに勝手に食べてるのよ!」


<ハルちゃんの代わりに長野ちゃんが抗議しているのです>


「文句あんのかコラ」

「ある!」


 長野さん、こう言う人に攻撃的な発言は危険なのでは・・・。


「んだコラ」

「うわッ」


 ああ、長野さんが胸倉つかまれて・・・どどどどうしましょう⁉


「放せこの不良!」


 全員身長が180cm以上・・・リーダーっぽい人は190cmくらいあるかも。

 170cmある長野さんが小さく見える程背の高い人たち・・・このままじゃ長野さんが・・・。

<ハルちゃん、変身なのです!>

 え?

<今こそ『あの力』を使う時なのです!>

 『あの力』・・・エマちゃんから受け継いだあの力・・・。

 使うのは怖いけど、使わなかったらわたしに声をかけてくれた長野さんが危ない・・・!

 友達になってくれた人を救わなくちゃ!

<さっそく取り出すのです!>

 確か鞄の中に・・・あった!

 紫色の片方のみの手袋で手の甲部分に虹色の羽の蝶が描かれた紫色の手袋、これを左手にはめて・・・。

<おお、ハルちゃんの胸元にはめたグローブと同じ形のグローブが音もなく出現したのです! いつ見てもカッコいいのです!>

 左手にはめた手袋の違いは右手用で手の甲部分に錫杖の形をした金属が付いているくらいですね。

 これを右手にはめれば・・・!

<おお、ハルちゃんの両腕と両足にアンクレットが装備されたのです!>

 力がみなぎる・・・。

 以前試しに装着した時も思いましたが、まるで自分が怪獣になったのかと錯覚するほど力が湧き出ているのを感じます!

<マジカル☆ハルちゃん見参です!>

 ですからわたしは魔法少女ではありません。

 でも・・・これで長野さんを救える気がします!

<さっそく不良共をやっつけるのです!>

 無駄だと思うけど一応警告だけはしましょう。


「長野さんから離れて下さい!」

「んだテメエ」


<あ、この不良ハルちゃんの胸倉掴んできたのです!>

 やっぱり話し合いが通じる相手ではないですね。

 ならちょっと強引だけど・・・えい!


「え? ごわああああああああああああああああ⁉⁉⁉⁉⁉⁉」


<やったのです! 不良の腕をへし折ってやったのです!>

 ちょっと力を入れただけで・・・やっぱりこのグローブ恐ろしい・・・。


「この野郎!」

「わ!」


<ああ、ハルちゃん目をつぶっちゃだめです!>


「痛てえ! なんだこの女、硬いぞ⁉」


<パンチした不良の方が痛がっているのです!>

 エマちゃんは体がダイヤモンドより硬くなるって言っていたけど・・・あながち嘘じゃなさそうですね・・・。


「このガキ!」


<あ、ナイフでハルちゃんを刺そうとしてきます!>

 見える・・・さっきは思わず目を瞑ってしまったけど、冷静に見ると相手の動きがスローモーションのように鈍く見えます。

<おお、顔をちょっと動かすだけでナイフをかわしたのです!>

 この力は動体視力も上がるみたいですね。


「くそ! 空手五段を舐めんなあ!」


<リーダーっぽい今度の不良は飛び蹴りを仕掛けてきたのです!>

 受け身ばっかりじゃ相手は攻撃を止めてくれませんし長野さんを救えない・・・なら、


「うお⁉」


<飛び蹴りしてきた不良の足をキャッチしてどうするんですか?>

 こうします!


「えいッ‼」

「う、うわああああああ‼‼‼‼‼‼」


<おお、リーダーらしい不良を砲丸投げのように投げ飛ばすなんてすごいのです! 20メートルくらい飛んだのです!>

‐ジャポン‐

<近場の川に飛ばされてザマアミロなのです!>

 投げ飛ばされた距離は長いけど落ちた場所が川なら死ぬ事はないでしょう。

<おお、こんな時でも相手の命を考えるなんて。ハルちゃんは心優しき魔法少女なのです!>


「な、なんだこのガキ・・・⁉」

「ば、バケモンだ!」

「に、逃げるぞ!」


<不良達が一斉に逃げ出したのです>

 これで一見落着ですね・・・後は・・・。


「は、ハルちゃん・・・?」


 尻もちついて開いた口が塞がらない長野さんにどうやって言い訳するかですね・・・。

<魔法少女の正体を知られてしまったので一大事なのです>

 どう考えても格闘技習っていただけなんて言い訳は通じませんし・・・どうしましょう。

<あ、長野ちゃん手に怪我をしているのです!>

 ならアイリスちゃんの出番ですね。

<任せてなのです!>

 アイリスちゃんによるとマ・ペットと融合した人間には何かしらの能力が備わるらしいです。

 アイリスちゃんの能力は手に空いた穴から怪我を治す液体を出す能力。

 多少の怪我ならすぐに治るので便利です。

 この前も包丁で指を切ってしまった時もこの能力で何事もなかったかのように治しましたし。


「っ・・・?」


 わたしの手から流れる液体は、最初は傷口にしみるけどすぐに痛みが無くなるので使いやすいです。

<前に1ℓくらい一度に出した事もあるのです>

 そんなに出せるんですね。


「あ、アレ? 傷が・・・消えた?」


 さて、長野さんにこれらの事をどう説明しましょうか・・・。


「何かを隠している様子だったが、やはり7宝具を持っていたか」


 その声は・・・わたしソックリなラウジーさん⁉

 隣には義兄の鎧さんが所属している班のリーダー直実さん、それに知らない女子高生くらいの女性も・・・。


「え? ハルちゃんが2人⁉」


 初めての長野さんにはわたしがもう1人いるように見えるのですね。


「シェリー、ナガノ=カグヤの保護を」

「分かったわ」


 ラウジーさんの隣にいたシェリーと呼ばれた女子高生くらいの女性は尻もちついている長野さんに手を差し伸べています。

<どこへ連れて行く気なのでしょうか?>


「クロバ=ハル、君は僕と来てもらうよ」

「ど、どこへですか?」

「僕の隣にいるナオミ=メイの家だ」

「理由は・・・『この力』ですよね・・・」

「その通りだ。君が身につけているテキンノ・ズオープの事だ」


 てきんの・・・ずおーぷ?

 この手袋そういう名前だったんですね。

 まあ、それよりもわたしの運命の方が気になりますね・・・。

<なんでですか?>

 ただの女子中学生がこんなすごい道具を所持していて警察関係者の人達が見逃してくれるとは思えませんし・・・。

 ほとんど正当防衛とはいえ、不良の人達にソレを使って暴力を使いましたし・・・。


「おまけにマ・ペットも持っているとは・・・」

「え?」

「その手に空いた不自然な穴はマ・ペットの影響だろう?」


<わわわ、バレてるのです⁉>

 やっぱりこの人鋭い・・・嘘ついたら絶対に見抜く人だ・・・。


「さ、来てもらうよ」


 ふうぅ、ラウジーさんの相変わらずクールな表情がよけいに怖いですよ・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ