準魔法少女と更生施設・1
・AM13時32分:東京都 国立無職者更生施設『ファミリー支援センター』入口
〈でっかい湖の真ん中にハルちゃんが通っている学校くらいの建物と運動場のある孤島があるのです〉
そこへ行くには今わたし達が乗っている異世界兵器対策班のカーゴトレーラーが渡っている高架橋しかありません。
【しかも跳開橋タイプで、普段は橋が水面に対して垂直に跳ね上がる仕組みで本当に孤立しているって感じの孤島ね】
〈これじゃあ帰る時とか不便なのです〉
聞いた話によりますと、脱走防止の為にこういった環境にしたそうです。
【確かに怠け者を収容したニート更生施設だもんね。今まで堕落した生活していた連中がすぐに更生は難しいでしょうし隙あらば逃げ出そうって輩多そうだもん】
〘あ、到着した~〙
登録してある車はフリーパスなのでしょうか、入口も出口も自動で遮断レーンが上がって通れるようになりました。
〈車も止まったのです〉
同時に橋が跳開しました。
【完全に帰り道は封鎖・・・脱走防止ね】
〘外に施設の人っぽい警備員みたいな服着た30歳くらいの男性がいる~〙
【背は客観的に見て180cmは超えているわね。体格も格闘技選手って言われたら信じられる程筋肉質、顔は・・・爽やかなスポーツマンって感じでまあまあね】
「さあ皆降りて。着いたわよ」
直美さんの後を追って降りると窓から見えた男性が笑顔であいさつに来てくれました。
「お久しぶりです直美さん。・・・この学生達が例の?」
「こちらこそお久しぶり。この子達が噂のキッズ・グループよ」
噂のキッズ・グループ・・・そんな風に言われていたんですね、わたし達・・・。
【というかこの施設の人間も異世界兵器の事知っているみたいね】
〘国立って事は国が経営しているって事~?〙
そうだと思います。
「そうですか。初めまして。このファミリー支援センター職員の山岡です。話は聞いて言いますので早速ご案内します」
【体育会系な容姿とは裏腹に社交的な口調ね】
〈笑顔で案内してくれるみたいなのです〉
「・・・・・・」
〘黒須君、誰か探しているみたい~〙
まるで迷子の弟を探しているお兄さんみたいです。
「リュウ、ナガイ=ケンを探しているのかい?」
「え? あ、いや・・・」
ソレを聞いた山岡さんは黒須君に笑顔で返答してくれました。
「ああ、彼なら大人しく授業を受けているよ。中学生でも取れる資格の勉強や柔道の訓練などをしているよ」
「・・・資格?」
「ああ。彼、ミスター・ラウジーに制裁を受ける人にしては賢いからね。まだ学生の内なら問題点の更生は難しくないだろうし、才能を伸ばせるならそうさせたい。永井君、けっこう計算が得意だし運動能力も悪くないから」
「お、おいラウジー・・・まさかケンを将来戦場に⁉」
「リュウ、僕がナガイ=ケンを生かしておく理由は君の相談相手になる1点のみだ。異世界兵器関連の情報を知り過ぎているし覗きなどの問題行動も起こす。本来なら始末の対象だ」
「ま、待ってくれラウジー‼ アイツが異世界兵器関連の情報を知っているのは俺が愚痴こぼすついでにベラベラ喋ったからだ‼ 情報知り過ぎているなら俺が・・・」
「リュウ、君の事は高く評価している。それに君がナガイ=ケンに情報を喋っているのは元々異世界兵器の存在を知っているナガイ=ケンだからだ。少なくとも親しいという理由だけで誰にでも喋る行為はしていないのは十分理解している。むしろ関係者に愚痴を言うだけで君の負担軽減になるなら容認するつもりだ。そしてソレくらいしかナガイ=ケンの価値を見出せないのが現状だ」
【黒須君、なんか永井君には甘い感じねぇ】
今も身内の減刑を望む・・・それこそレナちゃんが罪を犯したお兄さんの減刑を望んでいるときのようです。
「リュウ、兄弟同然に育っているナガイ=ケンを庇いたいのは理解できる。だが、知り過ぎている上に問題行動が多いのも事実だ。問題行動はナガイ=ケン自身の意志だ。責任も彼自身にある。それにこのままでは罪を重ねる一方だ」
「・・・一体ケンに何をさせるつもりだ・・・?」
「それはナガイ=ケン次第だ。彼がこの更生施設で何かしらの才能があるならソレを活かさせるつもりだ。同じ戦場関連でもナガイ=ケンの長所によっては安全な場所でのデスクワークもさせるつもりだ」
「・・・・・・」
〈黒須君、何も反論しなくなっちゃったのです〉
【そりゃあ、永井君が問題行動しまくったのは事実だもの。むしろラウジーに目を付けられて将来を保証されているんなら儲けものよ】
「・・・分かった。とりあえずこの任務が終わったらケンの意見を聞いてみる」
〘お友達の事諦めたの~?〙
いえ、ラウジーさんが処刑や拷問などの罰が無いので納得したのだと思います。
【ラウジーの罰だと処刑とか普通にあり得るからねえ】
「黒須君、前々から思っていたんですけど、永井君とそんなに仲が良いのはどうしてですか?」
黒須君の性格からして永井君のようなタイプはあまり好きでは無さそうだと思うのですが・・・。
「ああ、アイツとは兄弟みたいなもんだからな。両親同士の仲が良いから物心がつく頃から家族ぐるみの付き合いが多かったし、小学校の頃から両親が共働きでケンの家で夕食や寝泊まりする事も多かった。本当に兄弟みたいに一緒に育ったからな・・・」
「それで今回の件も永井君が心配なんですね」
〘ソレってもう血のつながっていない兄弟同然~〙
【どうりで覗きとかするレベルのバカを黒須君が心配したりする訳ね】
ただのクラスメイトなら黒須君もそこまで気にしないと思います。
〈絶対見捨てているのです〉
「まあ、アイツが問題行動をしたのは事実だからな・・・。仮に実の兄弟だったとしても容認擁護は出来ないからな・・・」
さすがに永井君が犯罪レベルの事しているのは理解しているんですね・・・。
【むしろ容認擁護していたらその方が問題よ】
「何をしているッ‼ 立てッ‼」
〘施設のグランドから怒鳴り声が聞こえる~〙
グランドには地面に両膝両手を着いている人とその後ろに身長が高い格闘技者のような体格の人が2人います。
【体格の良い2人は両方共30歳超えているかいないかの年齢ね】
〘2人共、洗濯叩き棒みたいなのを持っている~〙
〈地面に両手付いている人は40歳過ぎている太ったおじさんで汗だくなのです〉
「ふ、ふざけるなッ! こんなの虐待だ! 体罰だ!」
40歳の人は文句・・・抗議をしていますが・・・。
【その言葉を聞いたと同時に2人共洗濯叩き棒で交互に40歳の男のお尻を思いっきり叩き出したわね】
「言い訳警報発令~ッ‼」
「被害妄想警報発令~ッ‼」
「ソレ等の原因は常に怠惰と甘え也~ッ‼」
「ひ、ヒィ~ッ‼」
【尻で叩かれた途端、中年の男は鼻水垂らしながら走り出し始めたわね】
〘同時に叩いた人達2人も一緒に走り始めた~〙
「あの中年男は40歳になるまで親に暴力振るって金を巻き上げて遊んで暮らしていた男だ」
この施設の職員の山岡さんが説明し始めました。
〈ギャグ漫画見ている人みたいにニヤニヤ笑っているのです〉
「あの中年の両親は息子の横暴に耐えきれずに国の家庭相談所に相談し、結果、あのニートはココに放り込まれたんだ」
「それであの指導を・・・?」
「ああ。ちょっと優しくしても調子に乗って付け上がるだけだからね。ニートになったのも両親が肉体的に弱いから逆らうのが簡単だったのと働くのが面倒くさかったという典型的な怠け者の言い訳だ」
「ご両親が注意したら暴力を振るっていたのですか?」
「ああ。それどころか金をせびり、食事が不味かったら暴力、パチンコで大損した腹いせに暴力、クズ息子だったそうだ」
【クズというかゴミね】
〈ひど過ぎるのです〉
「大人しくこの更生施設に入ったんですか?」
「いいや。あの無職だけでなくここに入るような連中はほぼ拒否するだろうね」
「では無理矢理連れて来たんですか?」
「無理矢理という意味ではある意味そうなるね」
「ある意味?」
「ここに入る無職者達はこの施設職員の養子になってから入るんだ」
「養子?」
「そう、あの無職野郎みたいに暴力振るうレベルなら被害者を保護という名目で警察が連行した後にここに放り込む方法もあるけど、単なる引きこもりとかはそうはいかない。さすがに警察でも無職というだけで連行はできない」
確かに警察の役目は犯罪を防ぐのが目的で無職の人を構成させるのは専門外ですし・・・。
【もし実行したら越権行為とか騒がれそうだしね】
「しかし、もしその無職者が家の人間でなくなったら?」
「・・・あ!」
「気付いたようだね。そう、ココの職員の養子にする事で今までぬくぬく寄生していた家はただの『他人の家』になる。不法滞在になるから警察が動ける。しかも帰る家がこの施設・・・つまりこの更生施設が実家だから拒否できないんだ」
【なるほど、考えたわね。確かにこの方法なら家から合法的に追い出せるし、追い出し先も合法的にココに送れるわね】
〈しかもココに入ったら逃げ出せそうにないのです〉
〘脱走できたとしても帰る場所が無いからこの場所に帰る事になっちゃう~〙
「でも簡単に養子にする事はできるんですか?」
そういうのって本人の同意やサインが必要だと思うのですが・・・。
「もちろんその対策もしてあるさ。親に『手続きが必要だから一緒に市役所に行って欲しい』と声をかけて本人が『代わりにやっといて』と言えばOKだ。その声も保護者に録音するように言ってあるから文字通り代わりに手続きするのさ。ここに来るニート共は大抵書類系を保護者に任せてあるからね。万が一ニートが市役所に行っても騙しようはいくらでもあるさ」
「もしかして国立って事はソレ等も国が公認・・・いえ、黙認しているって事ですか?」
「その通りだ。民間の更生施設だったらそこまで上手くはいかなかっただろう。まあ、実際はミスター・ラウジーが色々と上層部に一声かけてくれたからなんだけどね」
【やっぱりラウジーが絡んでいたのね】
さすがにこれだけの事は国会でも簡単に決められないでしょうけど、ラウジーさんなら可能でしょう。
「でも体罰とかはマスコミとかが騒ぎそうなんですけど・・・」
「ああ、ソレも大丈夫だ。まずここに来るマスコミは国が許可した報道機関、つまり国の息がかかった報道機関だけだ。それにここのニート共はスマホなどの連絡手段は基本保護者が金払っている。ココに来る前に保護者に電話会社との契約を切るようにしてもらっている。Wi‐Fiはあるが万が一貯金とかあってまだ契約しているニートやWi‐Fiを利用した通話機器がいても授業中は使用禁止だしコッソリ使用できたとしてもその時間は特殊な妨害電波が出ているからネットはおろか撮影も不可能だ」
【つまり、体罰の現場を撮影した動画を拡散して助けを求めるのは不可能って事ね】
け、刑務所みたいです・・・。
「もちろん考えも無く体罰をしているわけではないよ。現にちゃんと努力して更生の意志がある者には暴力は振るっていない。今グランドを走らされているニートだって言う事を聞かないどころか他のニートに暴力を振るおうとしたからだ。何でもかんでも暴力が正しいとまでは思っていない。ただ、時には暴力で解決が最善だからここではソレが実行されているだけだよ。君達が7宝具という特殊な兵器を使って暴力で解決しているようにね」
確かにわたし達のやっていることは暴力で解決です・・・。
〈違うのです! 正義の鉄槌なのです!〉
「おっと、別に3人を責めているわけでは無いよ。むしろ君達の暴力・・・いや、活躍で多くの民間人が救われているのだから」
「そう言っていただけるとありがたいです」
「まあ、自分が言いたいのはこの施設の暴力は正当だと主張したいだけさ。教育委員会などの平和主義の輩は『暴力反対!』と考えも無しに言うがそう言った連中は・・・例えば小学校などで教師が暴力を振るえないのをいいことに好き放題やっている悪ガキに対してどうすればいいか何のアイディアも出さずに反対する『だけ』だ。案があったとしても『対話で解決』とほぼ的外れな事を言うからなあ」
【まあ確かに悪ガキの中には『殴ってみろよ』みたいな事言い出す馬鹿もいるからねえ】
〘しかもそういう子はさらに悪さする可能性もあるよ~〙
〈アイちゃんならぶっ飛ばしているのです!〉
「その『暴力反対』を貫き通した結果が今の日本社会で、自分の悪行をネットに晒すような馬鹿が続出する現状だと思っている。もちろん暴力そのものを肯定しろとは言わないけど、この施設の暴力に反対するなら『良い案』を出して欲しい。俺が言いたいのはそれだけさ」
「わたしは暴力でテロリストと戦っているので人の事は言えないです」
「すまない。さっきも言った通り3人を責めている訳じゃないんだ。ただ考えも無しに暴力で解決しているのではないと分かって欲しいだけだ。すまなかったね」
まるで保育園の先生が泣きそうな園児をなだめるかのような口調と表情・・・この人は本当にわたし達を悪く思っていないのが伝わって安心できます・・・。
【30歳くらいの年齢じゃあねえ。顔はまあまあだけどハルちゃんの恋人するにはよほどの年収じゃないと割に合わないわね】
そういう目で見てはいませんしこの人に失礼です。
「・・・ところで、まさかケンもここの施設の養子に?」
「いや、永井君は表向きは職場見学及び体験だ。来週には出所予定だ。ここの職員に『保護者』はいないよ」
「そうか・・・」
黒須君、かなり安心しているみたいです。
【腐っても兄弟同然の親友だからねえ】
「まだ走り終わっていないぞ!」
「も、もう無理・・・休ませて・・・コーラ飲ませて・・・ッ」
〘さっきの中年ニートがダウンしてる~〙
【疲れるのは分かるけどこの状況でコーラってどんだけ図々しいのよ】
「偽脱水症状警報発令~ッ‼」
そう言って教育担当の1人が布団叩きみたいなのでお尻を思いっきり叩きました。
「偽疲労困憊警報発令~ッ‼」
〈もう1人の指導員の人もお尻叩いたのです〉
「ソレ等の原因も常に怠惰と甘え也~‼」
「ひ、ヒ~ッッッ⁉」
〘中年ニートは3発目が来る前に走り出した~〙
【まるでコント番組みたいね】
〈でもカメラマンさんがいないから現実なのです〉
この光景とこの施設の存在を全国のニートの人達が知ったら怯えそうですね・・・。
「さあ、異世界の王子様達が待っているからそろそろ施設の中にはいろう。こっちだよ」
〈すっかり忘れていたのです〉
【異世界の王子様がイケメンでハルちゃんの事を気に入ったら玉の輿だから発言には気を付けた方がいいわよ】
そういう事を考えてはいけません。
消費期限が過ぎたお菓子食べてお腹が・・・。
職場のトイレが和式だから超辛い・・・。
だれか職場のトイレを洋式に・・・。
4
かゆい
うま




