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準魔法少女  作者: ザキ・S・レッドフィールド
第1章・準魔法少女の始まり
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準魔法少女、転校先にて・2

・AM9時40分:廊下

<ハルちゃん、休み時間にどこへ行くんですか?>

 黒須君の所です。

 今、黒須君は廊下を1人で歩いていますし、話すなら今です。

<ど、どうしたんですかハルちゃん? 何か怖いのです>


「あの、黒須君」


 黒須君、さっき嫌な事があったので落ち込んでいると思います。

 せめて話を聞いて黒須君を励ませるのなら・・・。


「ん? 黒場か。どうした?」


<理不尽な仕打ちを受けた後とは思えない普通の返事なのです>


「・・・さっきの・・・その・・・体育の授業の事なんですけど・・・」

「体育の授業? それがどうしたんだ?」


<やっぱりあんまり気にしていない様子なのです>


「体育の村田先生は・・・黒須君の事を目の敵にしていました。ヒドイ扱いもされていました。・・・黒須君は、平気なんですか?」


 一瞬少し驚いた表情をしましたが、すぐに笑みを浮かべました。

 まるで『そんな事か』というような表情なのです。


「ああ、アレね」


 気にしていないどころか少し嬉しそうです。


「あんなに理不尽な事をされて黒須君は悔しくないんですか?」

「気持ち良くはねぇけど、所詮俺はその程度の人間って事だ」


 まるでいつもの事のように・・・やっぱり黒須君は自分が理不尽な仕打ちを受けているのを自覚しています・・・。

<ならなんで何もいわないんですか?>

 わたしもその通りだと思います。


「でも、少しくらいなら反論してもいいと思います。他の人が何も言われないのは反論するかららしいですし、それなら何か意見しても大丈夫だと思います! 実際、黒須君は何も悪くないですし・・・」

「まあ、そうかも知れないけど、今まで何も言わなかった俺が意見したらそれはそれで何か言われるだろう」


 何故でしょう、また黒須君、少し嬉しそうです。


「でも・・・」

「あの場で村田に何か言ってみろ。口論になって試合進行の妨げになるからな」

「それだけで・・・」

「それに俺が叱られ役にならなかったらあの村田の事だ。どうせ別の誰かを叱られ役にするだけだろうぜ」


 まさか、誰かが叱られるのを防ぐ・・・それだけの為に我慢を?


「ま、勝手に言わせておくさ」

「・・・黒須君は平気なんですか? このままでいいんですか?」

「よくはねぇけど、忍耐力くらいしか俺の取り柄がないからな」


 忍耐力・・・取り柄・・・。


『1年5組の黒須君、至急、職員室まで来て下さい。繰り返します』


<あ、校内放送なのです>


「あ、俺呼ばれてる。じゃあな」


<少し急ぎ足で行っちゃったのです。何の要件か知っているのでしょうか?>

 ・・・アイリスちゃん。

<何ですか?>

 今日のHRで黒須君とわたしが似ているって言いましたけど・・・撤回します。

<撤回?>

 黒須君はわたしと違います!

 辛い境遇でも、ちゃんと向き合って耐えています!

 ヒドイ仕打ちのも耐えるだけでなく、周りの人も気遣って・・・!

<は、ハルちゃん?>

 わたしだったら・・・ただ落ち込むしかできません・・・。

 だからお父さんも離婚して再婚を決意したんです、わたしがこれ以上落ち込まないように・・・ッ。

<ハルちゃん・・・>

 わたし、体育の試合中、何故言えなかったんだろう・・・。

 体育の先生に一言「ヒドイです」って・・・。

 黒須君の辛さが分かるハズなのに・・・。



・PM4時0分教室(1-5)

<ハルちゃん、もう帰るのですか?>

 はい、まだ引っ越しの整理整頓が終わっていないので。

<じゃあ部活見学は明日からですね>

 はい、教室の外にはクラスの男子の皆さんが・・・アレ?

<クラスの男子生徒達が血相を変えてハルちゃんの前に集まってきたです>

 わ、わたし何かしてしまったんでしょうか?


「く、黒場‼」


 な、中条君、なんだか怖いです・・・。


「は、はいッ・・・な、何でしょう?」

「黒須に声をかけたって本当か⁉」


 もしかして体育の授業の後に声をかけたのを見られていたのでしょうか?

 ちょっと恥ずかしい・・・。


「は、はいかけましたが・・・」


 男子の皆さん、すごい剣幕ですが、それが何か問題でもあるのでしょうか?


「黒須めェ! エヴィさんだけでなく黒場にまで手を出しやがってェ!」


 ・・・え?


「一体黒須に何をされたんだ⁉」

「黒須の奴、まさか脅迫を・・・!」


 ・・・どうしよう。

 ただ声をかけただけなのに黒須君が犯罪者扱いをされている気がします・・・。

 というかなんでこんな事態に?


「ハルっち、気にしなくていいよ。いつもの事なんだから」


<相田ちゃんなのです>

 どうやら状況を説明してくれるらしいです。

 長野さんや水木さんに中安さんも一緒ですね。


「い、いつもの事なんですか?」

「エヴィ君人気あるからねえ~」

「エヴィ君?」

「ハルっち、エヴィ君の写真見る?」


<相田ちゃんのケータイの画面に可愛い女の子が写っているのです>

 外国人・・・フランス辺りの国籍でしょうか。

 かなり肌の白いキレイな顔立ちです。

 鍔付きの帽子からわずかに見える滑らかで綺麗な金髪に金色の瞳、年はわたしと同じくらい、体格は男の子にしては細い・・・というか女のわたしと同じくらい・・・。

 首の細さや長袖だけどわずかに見える手首は女の子みたいに細いです。

<もしかしたら実は本当に女の子なのかも知れないのです>

 でも外見だけじゃ断定はできませんし。

 世の中には並の男性より筋力のある女性もいますし、他の人が『君』付けで呼んでいますし、多分男の子なのでしょう。

<男の子の服を着ているという事はこの子も今朝のラウジーちゃんと同じ性同一障害の女の子なんでしょうか?>

 それはないと思いますが、確かに女の子みたいです。

 少し驚いた表情をしているのはいきなり撮影されたからでしょうか? 


「かわいいでしょ~。黒須の奴、そんなエヴィ君と一緒に暮らせるなんて羨ましい・・・」

「黒須君と暮らしているんですか?」

「うん。エヴィ君は日本に留学しに来たんだけど、ちょうど黒須の両親とエヴィ君の両親同士が仲良くて黒須の家で預かる事になったとか。エヴィ君が通っている学校も黒須の家から近いらしいし」

「それで同じ家に住んでいるんですね」


 でも長野さんはそれを不満そうに説明しているのはいったい・・・?


「そう! きっと膝枕してもらいながら耳掃除とかエヴィ君に女の子の服着せたり一緒にお風呂とかもしているに違いない!」

「耳掃除はともかく男の子に女の子の服を着せるのはさすがにないかと・・・。それに男の子同士なら別に一緒にお風呂に入っていても問題ないのでは?」

「「「「「違う!」」」」」

「わわわッ⁉」


<男子生徒達がいきなり叫びだしたのです>

 ちょっと怖いです・・・。


「エヴィ君は、本当は女の子なんだ!」

「男装が趣味なだけで身も心も女の子なんだぞ!」

「黒須の奴はそんな可愛い子と一緒に暮らしてんだぞ!」

「黒須は美少女の手作り料理を毎日食べているんだぞ!」

「うらやましすぎだ!」


<凄まじいまでの嫉妬なのです>

 黒須君の気苦労が伝わった気がします。


「ちょっと男子達! いいかげんエヴィ君が男なのを認めろ!」


 クラスの女子生徒の中村さんです。


「そうよそうよ!」


 つられて他の女子生徒の皆さんも中村さんに賛同しています。

<今にも戦争が起こりそうな雰囲気なので>。

 も、もしかしてわたしが黒須君に話しかけたのが原因に?

 ふうぅ、すごい罪悪感が・・・。


「あーあ、また始まっちゃったね」


 相田さんはこの光景をまるで舞台劇を見ているかのように楽観しています・・・。


「ハルちゃん、いつもの事だから気にしないで」


 長野さんも相田さんと同じように気にしていないですね・・・。


「い、いつもの事なんですか?」

「そう。エヴィ君の話題になると大抵ああなっちゃうの」

「エヴィ君、女の子みたいで可愛いからねぇ~」

「たしかに女の子みたいですね」


 学ランを着ていても女の子っぽいエヴィ君、スカートを穿いたら誰も男だって気付かないくらい可愛いと思います。


「もしかしたら本当に女の子かも知れないですね・・・ってアレ? 皆さん?」

「「「「・・・・・・」」」」


 ・・・相田さん、長野さん、水野さん、中安さん、どうしてわたしの肩を力強く掴むんですか?

<しかも4人共笑顔なのです>

 笑顔と言っても目が笑っていませんが・・・。


「じょ、冗談ですよ・・・」


<どうやら皆心の中ではエヴィって子が実は女の子じゃないか心配しているみたいなのです>

 外見が可愛いから余計に心配していて、わたしに言われてそれがさらに不安の火に油を注いでしまったのでしょう。


「す、すみません。軽率な事を言ってしまって・・・」


 確かに好きなアイドルが実は自分と同性だって知ったら少なからずショックだと思います。

 わたしは好きなアイドルとかいないけど、もし自分が『異性』として応援していたらと想像するとあまり気持ちよくないですし。


「分かってくれればイイよ」


 4人は何事も無かったかのように教室を出て言ったのです。

 まだ他の女子生徒と男子生徒がエヴィ君の性別の事で口論になっているのに・・・。

 本当に此処ではこう言う事って日常茶飯事なんですね・・・。

<さ、ハルちゃんも家に帰るのです>

 は、はい。



・PM4時25分:黒場家

「お、お帰り・・・」


 家に帰ったらかなりヨロヨロでやつれた義兄の鎧さんが出迎えてくれました。

<本当に今にも死にそうなのです>

 本当に2ℓ献血したのでしょうか・・・。


「は、ハルちゃん・・・健次郎から伝言がある・・・」


<健次郎ってハルちゃんのお義兄さんに臭そうな汗拭きタオルを押し付けた人ですね>


「・・・お弁当・・・美味しかったって・・・」


 あ、麻雀は健次郎さんが勝ったんですね・・・。


「そ、それじゃあ、僕は・・・寝るから・・・。夕飯はもう食べたから僕の分はいらないから・・・」


 夜勤明けな上に大量の血を取られて本当に死なないか心配になってきました。

<それより今日の晩御飯は何ですか?>

 ハンバーグを作る予定です。

<美味しそうなのです! アイちゃんハンバーグ大好物です!>

 それじゃあ部屋で待っていてくださいね。

 昨日みたいに食事中に出てきたら今度こそバレてしまいますから。

<は~い!>



「シェリー、調査の結果は?」

「ええ、調査の結果、前回調べた時同様、クロバ=ハルの両親共にこれと言って怪しい物は出てこなかったわ。実の母『シノノメ=レイ』も服役中だから調べるまでもなかったわ。今のところシロね」

「そうか。まあ、何かあるとしてもすぐにボロは出さないだろうけどね」

「それとクロバ=ハルの性格だけど、引っ込み思案なのは元々の性格のようね。実の母親に暴力を振るわれていた影響ね。両親の離婚も母親の暴力が原因だったみたいだし。今朝会った時のクロバ=ハルは本来の性格でマ・ペットによるものではない可能性が高いわ」

「データによると1億人に1人程の割合でマ・ペットの支配影響を受けない体質の人間がいるとの結果が出ている。引き続き調査を頼む」

「分かったわ」

「ハンク、学校でのクロバ=ハルはどうだった?」

「特に怪しい様子はなかった」

「そうか」

「それよりクロス=リュウがまた理不尽な仕打ちを受けていた」

「そんな馬鹿な真似をしたのはどの教員だい?」

「3学年の体育教師だ。ラウジーが派遣した体育教師が今日は病欠で3年の体育教師が臨時で担当し・・・すまない、俺の監督責任だ」

「それにしては今日の任務前、クロス=リュウは少し気分が良さそうだったが」

「そうなのか?」

「ああ。いつもはそういう仕打ちをされた時は表情に少し出る」

「そんな機嫌が良くなるような事は見ていないが・・・」

「まあ、いずれにしてもその馬鹿な教師は二度とクロス=リュウに理不尽な仕打ちをしないようにしてくれ。解雇してもいい。クロス=リュウが精神的にマイナスになる要因は排除しなければならない」

「分かった」

「ハンクは引き続き学校でのクロバ=ハルの調査も行ってくれ」

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