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準魔法少女  作者: ザキ・S・レッドフィールド
第1章・準魔法少女の始まり
4/49

準魔法少女、転校先にて・1

・AM8時25分:教室(1-5)

「黒場ハルです。よろしくお願いします」


<お~、丁寧に自己紹介できたのです!>

 警察署でも自己紹介したから少し落ち着いてできました。


「銀髪だ。外人さんか~」

「日本語ペラペラだ~」

「何処の国の人かな~」


 ふうぅ~、一斉に注目されてますます緊張してしまいます・・・。

<ハルちゃんはカワイイから休み時間は質問の嵐なのです>

 嫌な嵐です・・・。


「黒場ハルさんはお母さんがイギリス人だけど6歳の頃から日本で暮らしているから日本語は上手です。さっきの自己紹介を聞いての通り日本語は分かるから遠慮なく声をかけて仲良くして下さい」


 担任の大出(おおいで)先生はそう言って、わたしが今日から座る席を指さしました。


「じゃあ、黒須君の隣が空いているからそこに座って下さい」


 黒須君・・・窓側の一番後ろの席に座っている男の子ですね。

<小柄な男子生徒の隣なのです>

 はい、大人しそうな男の子です。

 体格も小柄ですし、身長も150cmのわたしより少し小さいかも。

 黒須君には悪いですけど、顔もやや童顔系で制服じゃなかったら10才くらいの小学生と言われても信じられたかも知れないです。

 ・・・それにしても黒須って人、わたしを見て少し驚いているようです。

 まるで『なんで此処に?』みたいな・・・。


「それでは今日のHR(ホームルーム)を始めます」

「・・・ラウジー?」


 大出先生はわたしが座ったと同時に今日の日程を軽く説明し、同時に黒須君は小声でわたしにそう言いました。

<ラウジーちゃんとお知り合いだったんですか?>

 驚いていたのはそういった理由があったからなんですね。

 ただ、警察署の署員さんみたいに怯えている様子はないようです。

<さっそく挨拶なのです>

 HRで大出先生が喋っているのでメモ用紙を渡してわたしがラウジーさんでは無い事を伝えましょう。

<スパイ活動中のようでハラハラするのです!>

 そうかなぁ。

 えっと、『私はラウジーさんではないです。人違いですよ』・・・と。


「・・・」


 黒須君、メッセージのメモとわたしの顔を交互に見るのを何回か繰り返したら・・・


「・・・人違いか。悪かった」


 小声で返してくれたので分かってくれたみたいですね。

<ラウジーちゃんとお知り合いって事はこの人も警察関係の人なんでしょうか?>

 それは分かりません。

 ただ、黒須君は日本人みたいだから多分、ラウジーさんの親族ではないと思いますが。

<ではHRが終わったら聞いてみるのです!>

 それにしても黒須君、どこかわたしとの親近感を感じます。

<親近感? も、もしやハルちゃん、初恋なのですか⁉>

 ち、違いますよッ!

 どこかわたしと似た雰囲気だったからです!

<雰囲気? 顔も全然似てないのです。

 う~ん、口で説明するのは難しいのですが・・・。

 ・・・。

 ・・・。

 ・・・なんとなく・・・です。

<何となく?>

 ・・・はい。

<ハルちゃん、やっぱり初恋なんじゃ・・・>

 だから違います!



・AM8時35分:教室(1-5)

「どこの学校だったの~」

「部活何やってたの?」

「家ドコら辺に住んでるの?」

「髪の毛サラサラ~! シャンプーどのメーカーの使ってるの~!」

「お肌もツルツル・・・羨ましい・・・」


<クラス中の女の子に質問責めに遭っていて大変なのです>

 ふうぅ~、誰の質問から答えたらいいのか・・・。

 髪の毛とかもドサクサに紛れて触っている子もいるのです。

 もう助けて欲しいです・・・。

 質問攻めに遭うのは覚悟していましたけど、ここまで凄いとは・・・。


「何をしているんですか? 体育の授業に間に合わなくなってしまいますよ」


 あ、教頭先生です。

<よく知っていますね>

 朝、職員室で大出先生に挨拶に行った時に教頭先生の机に座っていたので。

<すごい記憶力なのです!>


「やべ、急がなきゃ!」


 皆さん、一目散に更衣室に向かいましたね。

<きっと教頭先生が怖いのです!>

 ただ単に授業に遅れたら困るからだと思いますけど・・・。

 というかわたしも急がなきゃ!

<更衣室にGOなのです!>



・AM8時45分:体育館

「では先週説明した通り、男子チーム対女子チームでバスケの試合を始める!」


<体育の授業内容はバスケットですか!>

 男子生徒と女子生徒と混合で試合って珍しいですね。


「黒場さん、最初は私達だよ」


 誰でしょうか?

 いつの間にかにわたしの背後に4人います。

 1人はセミロングで背の高い人、わたしの座席前にいた長野(ながの)さんです。

<女の子なのに背が高いのです! 170cmくらいあるのです!>


「お~、転校生ちゃんがあたいと同じチームか!」


<2人目は元気そうな茶髪の女の子なのです>

 このポニーテールの人は相田(あいだ)さんです。

 アイリスちゃんの言う通り、元とても明るそうな人ですね。


「ま、気楽に行こうよ」


<3人目は今度はオールバックでロングヘアの女の子が肩を叩いてきましたのです>

 この人は中安(なかやす)さんです。

<・・・なんでハルちゃんは今日知り合ったクラスの人の名前を知っているんですか?>

 なんでって・・・今朝のHRで大出先生が出席の点呼を取っているときにクラスの皆さんの名前を覚えました。

<す、凄すぎるのです!>

 そ、そうかなぁ。

 名前を覚えるのは大事だと思いますし。


「・・・よろしく」


 あ、水木(みずき)さんも一緒のチームみたいです。

<このショートヘアで前髪分けたヤンデレ風な女の子がですか?>

 ヤンデレ?

<知らないんですか? 好きな人の為に手段を選ばず、好きな人の心が開かないなら殺してでも手に入れたいっていうような恐ろしい人の事を言うのです>

 そ、そういう意味だったんだ・・・。

 でも水木さんはそういう人ではないと思います。

 けっこう口数が少なそうですけど、さっき『よろしく』と言った時に少し微笑んでいましたし、悪い人では無いと思います。

<そうなのですか? アイちゃん、気付かなかったのです>


「ところで黒場さん、バスケの経験は?」


 長野さん、少しわたしに何かを期待しているかのような眼差しです。

<きっとこの人はバスケ部でハルちゃんを誘おうとしているのですよ!>


「バスケの経験は無いです。ルールは知っていますけど」

「ルール、知ってるんだ! なんなら女子バスケ部に入らない⁉」


<やっぱり長野って人、バスケ部なのです。とても嬉しそうなのです>

 バスケ部が人手不足で廃部の危機なのかも知れませんね。

 でもバスケット部に入る予定は無いですし、家庭科とかの部活があるならそっちに入りたかったんですけど・・・。


「大丈夫! 先輩とかも丁寧に指導してくれるから! 体力だって後からつければいいだけだし! どう黒場さん・・・いえ、ハルちゃん!」


<長野って人、獲物を見つけた野生のライオンみたいなのです>

 ふうぅ~、もう下の名前で呼んでます~、断りづらいですよ~。


「ほらほら、黒場ちゃん、困ってるよ。さ、試合始まるから行こうよ」


 中安さん、ありがとうございます。


「もうカグっち(*長野の事)たら、同じクラスにバスケ部がいないからって」

「う、うるさいなぁ!」


 照れている長野さんが少し可愛いです。


「と、とにかく試合を始めるよ! ・・・え~と、あたし達の相手は・・・仲田と中条と永井と桜田と・・・黒須もいるのか」


<おお、今朝のHRでハルちゃんをラウジーちゃんと間違えた男の子が敵なのです! こうして見ると黒須君ってかなり小柄なのです>

 相手チームの男子生徒が全員160cm程なのに対して黒須君だけは・・・やっぱりわたしより小さい、145cmくらいでしょうか・・・だから余計に小さく見えてしまいます。


「さ~、勝つぞ~。あたしは(センター)をやるね!」


(センター)って何ですか?>

 そうですね、(センター)とは主に味方のゴール下を守ったり、シュートを外した時に高く飛んでボールをとったりと、ゴール下での仕事をするのがメインと言ったところでしょうか。

<なら、一番背の高い長野ちゃんが適任なのです>


「じゃああたいは(フォワード)~!」


(フォワード)ってどんなポディションなんですか?>

 えっと、(フォワード)は主に得点を取るのが仕事・・・といった所でしょうか。

 場合によってはリバウンドなどの(センター)の仕事をする場合もあります。

<元気そうな相田って子にピッタリなのです>


「黒場さんは何かやりたいポディションはある?」

「いえ、わたしは特には・・・」

「ふ~ん。まあいいか。別に何か賭けている試合じゃないし、ポディションとか気にせず気楽にやろうよ」


 中安さん、そういってもらえるとありがたいです。

 ミスの心配とかをしていたのでそういった気遣いは嬉しいです。


「・・・・・・」


 水木さん、どうしたんでしょうか?

<さっきから相手チームの黒須君を見つめているのです>

 しかも敵意があるようにも見えます・・・。


「ねえ黒場さん」

「なんでしょう?」

「審判の先生にバレないように黒須に攻撃できる武器ある?」

「ぶ、武器ですか・・・・? 黒須君に・・・?」


 な、なんだか物凄い殺気が・・・。


「この間服買いに行ったらあたしのウエストがきつくて着れなかった服と同じサイズの服を黒須は「ゆるくて合わない」って言っていたの・・・」


 水木さん、体を震わせながら歯軋りする姿が怖いです・・・。


「あたしは頑張ってダイエット成功させたのに・・・ッ」

「そ、それは単に黒須君が小柄なだけで水木さんが太っているわけではないと思うのですが

・・・」


 水木さんの身長は150cmのわたしより5cm程高いので水木さんより10cm程小さい黒須君の方が小柄なのは仕方ないのでは・・・。


「知ってる? 黒須の奴、あの後カロリー高そうなケーキ買ってた・・・。この前もラーメン屋で油多めのラーメンを頼んでいたの。・・・まるで『自分は食べても太らない』と主張するかのように・・・」

「そ、それは水木さんの考えすぎでは・・・」

「許せない・・・許さない・・・ジュスガバギ・・・ボソギデジャス・・・」


 最後に何かの呪文のような言葉・・・意味は知りませんが多分、『呪う』とか『殺す』とかそんな感じの嫉妬や妬みを含んだ言葉なのは水木さんの鬼のような形相を見ていると安易に想像できます・・・。


「さあ皆、始めるぞ!」


<先生はもう始めるつもりなのです>


「じゃあジャンプボールはあたしに任せて」


 水木さんの言葉は聞かなかった事にして試合に集中しましょう。

<ジャンプボールって何ですか?>

 審判の人が上空に投げたボールをジャンプして取り合う事です。

<だから背の高い長野って子が志願したんですね>


「もらった!」


<おお、やっぱり長野ちゃんの圧勝なのです!>

 背が高いし、ジャンプ力もありますね。


「よ~し!」


 ボールは中安さんにいきました。

<中安ちゃん、GOなのです!>


「もらったぁ!」


<ああ、黒須って子に取られたのです!>

 黒須君、ドリブルも上手だしスピードもあります。

<ドリブルって何ですか?>

 ドリブルとはボールを床に叩きながら走る事です。

 そうしないとトラベリングと言って反則行為になってしまうんです。

<ああ、もうゴールの下まで走っているのです!>


「させるかあー!」


<おお、相田ちゃんと長野ちゃんも早いのです!>

 もう黒須君に追いついています。


「中条!」


<あ、勝負せずに仲間にパスしたのです! 根性無しなのです!>

 そんな事は無いと思います。

 2人にマークされていますし、無理に突っ込んでボールを取られるよりはいいと思います。


「頼むぞ、中条!」

「おう、任せろ!」


 今、中条って男の子に一番近いのはハルちゃんなのです!

<止めるのです!>

 は、はい!


「うっ・・・仲田!」


<よし、ハルちゃんの強襲は成功なのです!>

 ただジャンプしてシュートの妨害をしただけなんですけど・・・。

<でも敵が攻撃を止めたのだからハルちゃんはお手柄なのです!>

 ああ、でもパスした仲田君にシュートを打たれてしまいました。

‐ガン‐

<あ、でもリングには入らなかったのです>

 リバウンドをしなきゃ!

<りばうんど?>

 シュートして外したボールを拾う事です。

<それなら背の高い長野ちゃんが近くにいるから大丈夫なのです>

 はい、長野さんなら簡単にボールを・・・え?


「よっしゃあ!」


<く、黒須って男の子がボールを持っているのです!>

 すごいジャンプ力です・・・。

 長野さんよりボールの近くにいたとは言え、身長の高い長野さんより高く飛ぶなんて・・・。

 黒須君、身長が150cmもないのに20cm以上差のある長野さんより高くとぶなんて、すごいです・・・。

‐ピーーーーッ‼‐

<先生が笛を鳴らしたのです>

 な、何か問題が?


「ファウル!」


<ふぁうる?>

 えっと、反則行為の事です。

 でも黒須君は特に問題行動をしたようには見えませんでしたが・・・。


「黒須! 今長野の腕に肘当たってたぞ! 女子に怪我させたらどうする気だ‼」


 確かにバスケットで相手の体に触れたり叩いたりしたら基本反則ですが、意図的にならともかく、さっきみたいな体がぶつかりやすい状況だとある程度は黙認してくれるって聞いたんですが・・・。

<OKなんですか?>

 OKというかボールが取りやすい位置に居ないとさっきのような状況でボールが取りにくいから位置の取り合いなどで多少の接触は黙認してくれないとボールに近づけないので・・・。

<でも黒須君は反則扱いされたのです>

 わたしが見た感じではぶつかっていたか分かりにくいですが当たっていたとしても怪我につながるレベルでは無いと思うのですが・・・。


「分かったなら返事くらいしろ!」

「・・・はい」


 でも黒須君、笑みでは無いけどあまり気にしていないように見えます。

<もしかして心当たりが?>

 そんな風には見えませんが・・・。


「さ、ハルっち! さっさと反撃しようぜ!」

「あ、はい。相田さん!」


 とにかく試合に戻りましょう。

<相田ちゃんの言う通り、反撃するのです!>


邑久(おく)っち、ボール運びは任せたぜ!」


 中安さんがボール運びです。

 わたしはパスしてもらったらすぐにシュートを打てるようにゴールのすぐ近くで待機です。


「黒場さん! 受け取ってー!」

 わわわ、中安さん、わたしにロングパスをする気です!

<しっかり受け止めるのです!>


「中安、お前の黄色のパンツ丸見えだぞ」

「え⁉」


<中安ちゃん、永井って男の子の指摘にとっさに手で押さえる仕草をしているのです>

 でもジャージだからスカートがめくれる心配はないので永井君の罠だと思います。


「隙あり」


<ああ、永井って男の子にボールを取られたのです! 汚いのです!>


「あぁ! 汚いぞ永井! ていうか私の下着の色知っているって事は着替え覗いたな‼」


 中安さんの着替え覗いたって事は一緒に着替えていたわたし達女子全員の着替えも覗いたって事にもなるので授業後に女子全員で永井君に真相を問いただす必要がありますね・・・。


「無視。・・・(りゅう)!」


<ああ、黒須君にボールが渡ったのです!>

 黒須君、もうゴール付近に。

<でも長野ちゃんがもう守りに回っているからシュートは打てないのです>


「仲田!」


<仲田って男の子にボールが渡ったのです!>

 ああ、もうシュートを打っています・・・!


「あまい!」


<おお、長野ちゃんがボールを叩いて阻止したのです!>

 でもボールを叩いた時に少し仲田君の腕に長野さんの手が当たっていたのでファウルになるかも。

<でも笛は鳴っていないのです>

 黒須君はファウルになったのに・・・。

<ボールが中安ちゃんの手に渡ったのです>

 そのままゴールに向かってドリブル、中安さん結構早いです。


「させるか!」


 中条君が立ちふさがります。


「ならロングパス!」


 相田さん、もうゴール付近にいる長野さんへロングパスしました。

 すごいスピードなのです!


「くそ!」


 男子チームの皆さんは急いで戻っていますけどもう無駄でしょう。


「もらった!」


 シュートが決ま・・・


「遅いぜ!」


 黒須君がもう長野さんの目の前に⁉

<長野ちゃんの持っているボールを叩き落としたのです!>

 まだジャンプ前とはいえまたかなり身長差のある長野さんの妨害ができるなんて・・・。

<凄まじいジャンプ力なのです>

 早くボールを追わなければ・・・。

‐ピーーーーッ‼‐

 また先生の笛の音・・・今度は何が?


「おら黒須! また長野の手に当たっていたぞ! 退場にするぞ!」


 さっき長野さんがシュートを阻止した時は少し当たっていたのにノーファウルなのに・・・。

<あの体育の先生、黒須君に恨みでもあるのでしょうか?>


「はい」


 黒須君、また何事も無かったかのように返事を・・・。

<あんなヒドイ扱い、アイちゃんだったらとっくにキレているのになんで何も言わないのですか⁉>


「ハルちゃん、どうしたの?」

「あ、いえ、何でもないです」

「そう。なら早く戻ろう」

「はい」


 皆さんはあまり気にしていないみたいですけど、黒須君が怒られるのは日常茶飯事なのでしょうか?


「黒須! 頼むぜ!」


 また黒須君にボールが回りました!

<も、ものすごいスピードでゴールに向かっているのです!>

 ディフェンスに向かった中安さんもアッサリ抜かれてしまいました・・・。

 かなり上手なドリブル・・・黒須君はやっぱりバスケットの経験者なのでしょうか?


「行かせない!」


<水木ちゃんがゴール下で待ち構えているのです>


「ヅヅギデジャス! 黒須!」


 み、水木さん、物凄い形相です・・・。


「グロンギ女の相手はご免だ!」


<近くに居る永井君にパスしたのです!>

 永井君はシュート・・・かと思ったら体勢こそシュートのフォームですけどボールはゴールから少し距離をとった黒須君の元へ。

<ボールもっている手以外はシュートのフォーム、騙されたのです!>


「今だ!」


<黒須君はボールを受け取って速攻でシュートの体勢にィ!>


「ボソグ! 黒須!」


<いつの間にかに水木ちゃんが目の前に立ちはだかっているのです!>


「遅い」


<でも既に黒須君はシュートしているのです!>

 でも水木さんがこの勢いで黒須君に迫ったら・・・。


「ぶおッ⁉」


<水木ちゃんの身体が黒須君にぶつかって黒須君が転倒したのです!>

 く、黒須君、大丈夫でしょうか?

<あ、そういえばボールは?>

‐スパッ‐

 ああ、ボールがゴールリングに入ってしまったのです・・・。

‐ピピィー‐

 審判の先生の笛が・・・やっぱりディフェンスファウルだから黒須君にフリースローが。

<フリースロー?>

 誰にも邪魔されずシュートを撃つチャンスの事です。

 シュートを打つ時に守備の人が打つ人に物理的に触れたり叩いたりした場合はシュートを打った人にフリースローが与えられます。

 シュートが入ったら1回、入らなかったら2回です。

<き、厳しいのです・・・>

 まあさすがに水木さんがやりすぎなのでこれくらいで済んで・・・。


「オフェンスファウル!」


 ・・・え?

<オフェンスファウル?>

 この場合、オフェンス・・・つまり攻めていた黒須君がファウル(違反)扱い・・・。

 つまりゴールに入った点数も無効扱いに・・・。


「え?」


 黒須君も何が起きたか分からない様子で先生を見ています。


「何だ黒須、文句あんのか?」

「・・・別に」


 黒須君はあまり気にしていないようですが・・・。


「おい! 今のはどう見ても水木のファウルだろ!」


 中条君が苛立って先生に抗議しました。


「な、なんだ! 別に・・・おかしくは・・・」


<この先生、さっきまで凄く偉そうだったのに中条君に対して急にしどろもどろになったのです>

 まるで黒須君だけは叱るのが許されているかのよう・・・。


「よせ中条」


 黒須君、中条君をなだめようとしています。

<一番の被害者なのに・・・>


「黒須?」

「俺のファウルで一発退場、これでその場は収まる」

「いや・・・だが、黒須!」

「おい坂本、俺退場みたいだから交代しよう」

「え? あ、ああ・・・」


 黒須君は何事も無かったかのようにコートから出ていってしまいました・・・。


「~~~ッ、クソ!」


 中条君が凄く苛立っているのは審判の先生の判定なのか黒須君の対応への不満なのか・・・。


「よ、よーし。試合再開だ!」


<先生も何事も無かったかのうように再開の笛を鳴らしたのです>

 他の人達もすぐに試合に戻りました・・・もしかして黒須君へのこういった対応は日常茶飯事のなのでしょうか?



・AM9時00分:体育館

「先生、10分経ちました。交代の時間です」

「よ~し、次のメンバーはコートに入れ」


<ハルちゃんの出番は終りみたいなのです>


「おつかれ、ハルちゃん」

「あ、はい」


<おお長野ちゃん、小さい缶ジュースを差し出してくれたのです!>


「あの、コレは?」

「今日はあたしのオゴリ。あ、言い忘れてた。うちの学校、体育の授業は脱水症状とかの防止のために飲み物を持ってきてもいいんだよ」

「そうだったんですか。ありがとうございます」


<スポーツでひと汗掻いた後のジュースは一味・・・ハルちゃん、どうしたのですか? ジュースを飲まないのですか?>


「・・・あの、長野さん」

「何?」

「体育の村田先生、黒須君の事をかなり嫌っているみたいですが、黒須君と先生の間に何かあったんですか?」

「ああ、村田のいつもの逆恨みね」

「逆恨み?」


 黒須君は過去に何かしたのでしょうか?

 コート脇に座っている黒須君は何事も無かったかのように隣に座っている永井君と何か喋っていますが・・・。


「うん。村田の奴、黒須をバスケ部に誘ったのに断ったのを根に持っているんだよ」

「断っただけで・・・ヒドイ・・・」

「それにあの村田、さっきの中条への態度を見たら分かると思うけどけっこうチキンハート野郎で下手に叱って教育委員会とかに何か言われるのが怖くて黒須にしか叱れないんだよ」

「ど、どうして黒須君は叱れるんですか?」

「そりゃあ、黒須の両親は共働きでほとんど家にいないし黒須も反論したりチクったりしないからそれを良い事に黒須の事を叱りまくってんだよ」

「そんな・・・それじゃあ黒須君があまりにもかわいそうですよ!」

「でもまあ、あたしから言わせれば黒須も黒須だよ。あんな理不尽な説教に何も言わないんだから冤罪を受け入れているようなもんだよ。意見すらしないんだから、あれじゃあ怒って下さいって言っているようなもんだよ」


 ・・・本当に黒須君は悪いんでしょうか?

<ハルちゃん?>

 黒須君が非難されるべきなんでしょうか?

<どうしてそんなに気になるんですか?>

 ・・・わたしを見ているみたいでした。

<ハルちゃんを?>

 わたしも、・・・お母さんによく怒られても何も言えませんでしたから。

<お母さん? もしかして本当のお母さんですか?>

 はい・・・。

 わたしもテストで100点を取れなかっただけでよく怒られていましたから。

 高得点でも評価してもらえない、何も言い返せない・・・怒られている黒須君は、お母さんに怒られているわたしを見ているようでした・・・。

<ハルちゃん・・・>

 わたし、今分かりました。

 今日初めて黒須君を見たときに親近感を感じたのは、わたしと同じ境遇だったからなんだって・・・。

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