準魔法少女と非英雄・1
・PM10時35分:神奈川県 廃病院地下
【こんな廃病院の地下にテロリストのアジトって何かのアクション映画設定みたいね】
ラウジーさんによるとテロ目的の人型アンドロイドの歩行テストを、地上のこの病院でやっていたって言っていましたね。
〈それじゃあバレちゃうんじゃないんですか?〉
逆にある程度一般人に目撃して欲しかったみたいです。
〈どうしてですか? アイちゃん作戦前の会議は寝てたから知らないのです〉
この廃病院は廃墟マニアや肝試し目的の人が多く訪れる場所で人間・・・の幽霊と勘違いされるかを検証したかったみたいです。
〈検証?〉
【テロ用アンドロイドは一般人に紛れ込んでもバレないように外見が人間ソックリにしているのよ】
ソレを廃墟マニアや肝試しに来た人で幽霊という名の人間に見間違えるかを確かめたかったそうです。
〈でも警察に通報されたらバレちゃうのです〉
【動かないわよ。コレの見た目がチンピラやヤクザだったら警察も動くでしょうけど通報内容が「幽霊が出ました!」で警察が動くと想う?】
さすがにそこまで警察の人達は暇ではないでしょうし・・・。
【そして心霊スポットとしてさらに人が集まって容姿が人間として通じるかチェック・・・。しかも電源は自家発電式なので電力量でバレる心配が無いからのうのうと製造と実験ができる・・・考えたわね】
まあ、もうその実験も製造も出来ないですけど・・・。
【ええ。ハルちゃん達3人で地下に突撃して殲滅されたんだから】
「まったく・・・廃病院の地下にこんな広い施設・・・いや、工場があるとは・・・」
レナちゃんの言う通り、何かの部品を運ぶ複数のレーンからソレらを一か所にまとめて運ばれた場所に自動組み立ての機械、今は止まっていますがさっきまでアンドロイドの骨組みを自動で人型に組み立てる機械が動いていましたし、それが数十か所に・・・。
製造しているのが一般家庭で使う道具なら本当に一般企業の工場と言われたら信じられる光景です。
【今は既に組み立てられた戦闘用アンドロイドの亡骸が大量に転がっているけど】
〈まるでアニメとかの地獄に横たわる大量の死体みたいで気持ちわるいのです〉
確かにわたし達に倒されたアンドロイド達の顔・・・カモフラージュの皮膚が無くなった顔って骸骨みたいでそれが今もわたし達の足元に大量に転がっているので・・・。
「兵器反応無し・・・後はここの『責任者』だけだな」
「待てリュウ、私のセンサーに生体反応が1つ・・・外からこっちに人間が近づいてくる・・・⁉」
〈黒須君のレーダーには反応がないんですか?〉
黒須君が使ているレーダーは兵器や地雷などの罠を発見するのに特化したタイプでレナちゃんが使っているのは生物兵器や人質にされた一般人を探す事に特化したタイプなんです。
「だがすでに警察の方達が建物の周りを包囲してるから敵の増援が来る事は無いのでは?」
『か、姉上・・・!』
レナちゃんのガラス板・・・通信機に5才の子供・・・弟のボコ君が?
〈なんだか顔が真っ青なのです〉
【何かに怯えているみたいね】
「ボコ⁉ どうしたのだ⁉」
『かかか兄上が・・・ッ』
「兄上がどうしたのだ⁉」
「アハハハハハハ‼」
〈なんなんですか⁉ いきなりでかい男性の声が⁉〉
【発狂したような感じもするけど?】
声の主は・・・あ、アレ⁉
「かかか兄上⁉」
三日前に会ったレナちゃんのお兄さんですが・・・。
【ズボンこそ男性物だけど上着は女性が着るキャミソールのへそ出し、顔はバレリーナのような厚化粧、髪型もオールバック、首には髑髏のネックレスと三日前に会った時と別人じゃないかと思えるわね】
〈オカマみたいで気持ち悪いのです〉
い、一体何が・・・?
「ははは何という恰好をしているのです⁉」
「レナ、ここはロックギアの日本だ。現地の言葉で喋るんだ」
・・・言っている事は分かるんですがレナちゃんが母国語で喋る原因がアナタなのですが・・・。
【もしかして自分がマトモな恰好をしてるとでも思っているのかしら?】
「うぅ・・・あああ兄上・・・その化粧や服装は・・・?」
「もちろん父上と母上への敬意だ! ズボンは父上が穿いていたのと同じ物だ! 上着や化粧も母上が使っていた物と全く同じ・・・両親の敬意を受け継いだ王子らしい恰好だろう?」
【男が父親と同じ服を着るのは分かるけど母親が使っていた物をってのは理解できないわね】
〈これじゃあ変態なのです〉
「れ、レナ・・・コイツ本当にお前の兄貴か? 三日前と全然雰囲気が違うが・・・」
「リュウ⁉ ちちち違うのだ‼ こここコレにはきっと理由が・・・」
レナちゃんは必死に弁護しようとしたけど発言が止まったのを見ると擁護不可能だと思ったんでしょう・・・。
【一流の弁護士でも無理よ】
「リュウ? そういえば君、三日前もボコが人質に取られた現場に居たけど、もしかして君がクロス=リュウか? 訓練試合でレナに勝った・・・」
「そうだが・・・勝ったと言っても技術では負けていた。勝てたのも綺麗じゃない手段を使ったからだが・・・」
「だが勝利は勝利だ。現実の戦場でもどんな手を使ってでも成果を出す者や勝った者が正しい。そうだろう?」
「・・・まあ、否定はできねえが・・・」
「そうだよねえ・・・」
〈お兄さん、悪党みたいな笑顔なのです〉
まるでこれから犯罪犯す人みたいで怖いです・・・。
「レナ、7宝具を僕に渡すんだ」
「あ、兄上・・・?」
「どうしたレナ? 何故躊躇う? まさか兄を疑うのかい? 逆らうのかい?」
「⁉ ・・・な、何をするつもりですか・・・?」
「れ、レナちゃん⁉」
〈仮面を外してお兄さんに渡しちゃったのです〉
【やっぱり両親や兄姉の言う事は絶対な教育受けていたのかしら?】
お兄さんの事を『自分より優秀な兄』と言っていたので敬意もあるのでしょうけど・・・。
「おいレナ⁉」
黒須君も予想外の行動に驚いていますね・・・。
【というかこの流れ、間違いなくお兄さんは黒須君と戦う流れね】
〈そうなんですか⁉〉
「ああ・・・凄い・・・! 力が漲る・・・ッ! こんな素晴らしい物をレナは独り占めしていたのか・・・。クロス=リュウに勝ったら正式に僕が最高位の王だ! そして僕を妹より劣る王子と見下した愚民共を見返し・・・いや処刑してやる‼」
ぶ、物騒な事を言っていますが・・・。
【本当にこの前の人と同一人物かしら?】
〈あ! お兄さんが仮面の顎部分に触れたら顎の下からレナちゃんが3日前に使っていた剣が出てきたのです!〉
あ、あんな所からあの剣が出てきていたのですね・・・。
「さあクロス=リュウ、僕が王になるために死ね‼」
言葉が出ると同時に2人の剣と剣のぶつかり合いが始まってしまいました・・・。
【パワーはレナちゃんの兄の方が少し上なのか黒須君が少し押されている感じね】
「兄上‼ お止めください‼」
「黙れレナ‼ お前は真の王の誕生を黙って見ていろ‼」
お兄さんの言葉にレナちゃんはこの世の終わりのような表情に・・・。
【尊敬していた実の兄の言動がコレじゃあねえ・・・】
「くくく・・・」
お兄さんは悪辣な笑みを・・・何かするつもり・・・あ!
〈仮面を少しずらして黒須君に唾吐いたのです!〉
【二重の意味で汚いわね】
幸い黒須君はギリギリで顔を動かしたおかげで当たりませんでしたが・・・。
「ぐこッ⁉」
【さっきの唾吐きが効いたのか、黒須君前蹴り喰らっちゃったわね】
「死ね‼」
よろめいている黒須君に剣を振り下ろしましたがギリギリで黒須君が自身の剣でしのいだので無事でした。
【でも黒須君、攻撃が重いのか歯を食いしばっているわね】
「ぐぐ・・・レナ! お前の兄貴殺しても正当防衛だからな‼」
〈そう言って今度は黒須君が前蹴りでレナちゃんのお兄さんを押しのけて距離を取ることに成功したのです〉
というか殺しても正当防衛という言葉を使うなんて・・・黒須君は今までテロリストですら殺したくないと思っているのにこんな事を言うのは相当焦っているって事では・・・。
【そりゃあ同じ7宝具を使う相手な上に殺そうとしているんだもの。手加減なんてしている余裕なんてないわよ】
「ぐッ・・・王を蹴るとは・・・クロス=リュウ、タダでは死なさないぞ!」
【剣の鍔部分に付いている時計をいじりだしたわ】
短針を3時に合わせ・・・何を?
〈あッ! 姿が消えたのです!〉
もしかしてレナちゃんが使っている7宝具の能力⁉
「マズイ‼」
〈黒須君が上空にジャンプしたのです!〉
【ジャンプと同時に空き缶より少し小さい筒状の・・・閃光手榴弾⁉】
背を向けて目を塞がなきゃ!
「ぐぐッ」
姿は見えませんがレナちゃんのお兄さんの声が聞こえたので効果はあったみたいですね。
〈耳がキンキンするのです~!〉
【黒須君は・・・目にゴーグルをつけているわね】
肉眼では見えないレーザーや温度などで人を探すサーマル機能があるゴーグルらしいので
もしかしたら温度でレナちゃんのお兄さんの位置を把握しようとしているのかも。
「そこか!」
黒須君は剣の鍔部分にある時計を3時に合わせて銃にチェンジ・・・足元に向かって5発発射しました。
「おのれ!」
【お兄さんの声が聞こえたって事はあの辺にいるのね。まあ、台詞からして当たってはいないみたいだけど】
「今度はコレだッ‼」
〈あ、姿が見えたのです〉
よく見ると時計の針を6時の位置に・・・え⁉
〈今度は分身したのです‼〉
【ひいふうみい・・・本物含めると合計で5人ね】
お兄さんは仮面をつけたままですけど分身は全員仮面の無い巣状態です。
【あの気持ち悪い化粧の顔が並んでしかも無表情・・・キモさ5倍ね】
〈でも分身全員が同じ武器を持っているのです〉
「今度こそ殺されろ‼」
〈全ての分身と一緒に上空の黒須君にむかっていったのです!〉
【リンチにするつもりね】
黒須君は自分の武器の時計の針を・・・9時に!
〈あのハンマーを使うつもりなのですね〉
【あら、武器がハンマーに変かしたわね。アレに何の効果が?】
〈物凄い超スピードで行動できるのです!〉
【ん? 黒須君が消えた?】
「ぐあッ!」
〈お兄さん達全員が床に叩きつけられたのです!〉
わたし達にはジャンプしたら見えない壁にぶつかって落っこちたように見えますが実際は黒須君が超高速でお兄さん達にハンマーで攻撃をしたのでしょう。
【黒須君が本体の倒れているお兄さんの上に立っているわ。アレ? いつの間に武器が剣に?】
あの武器は強力ですが身体への負担が大きいらしいので長時間は使えないみたいです。
実際はもっと使えるのでしょうけどまだ任務中で後の事を考えるとあまり使用したくないのでしょう。
【あら、さっきは正当防衛とか焦っている台詞言っていたのに】
もしかして・・・。
「もう終わりだ馬鹿王子」
そう言って振りかざした剣をお兄さんの顔に・・・刺す事は無く代わりに顔の横の床に突き刺しました。
〈お兄さんの肩を踏みつけているのでもうお兄さんは武器を使えないのです〉
「7宝具を外せ」
「まだだッ‼」
〈お兄さんの分身四体が起き上がって黒須君に向かってダッシュして来たのです!〉
「させません!」
【あら、ハルちゃんが援護攻撃? やるわね】
〈ハルちゃんの錫杖から放たれた光弾4発が分身に全部に命中なのです!〉
当たった途端に分身が消えてしまいました・・・。
【ゲーム的な表現をするなら分身にダメージ与え続ければ消える的な存在なのかしら? もしくは本体が死ぬor気絶するかかしら?】
「な⁉ な、何故だ⁉ コレはクロス=リュウと僕の戦いの筈だ‼ 反則だ‼」
「反則? いきなり一方的に戦いを挑んだり唾吐く行為をする人が言う台詞ですか? そもそも『どんな手を使ってでも成果を出す者や勝った者が正しい』と言ったのは貴方ですよね?」
「ふざけるな‼ 僕は負けていない‼ クロス=リュウにも・・・レナにも・・・‼」
「いいや、敗北だよ。バッツ」
ラウジーさん⁉
読者よ、もし紙数さえ尽きなければ、
私は、このいくら飲んでも飲み飽きることのない
この甘い水を少しなりとも詩に歌って見せただろう。
しかしこの第ニ篇のために用意された紙数はもう
すべて書き尽くした。だからこれ以上先へは
芸術の手綱が私を引き留めて行かせないのだ。
神曲 煉獄編 第三十三歌より抜粋
ラウジー「ケンジロウ、内容の中途半端さを名作で誤魔化そうとする底辺投稿者が君が先ほどまで穿いていたトレーニング用の靴下の匂いを嗅ぎたいそうだ」
ど、読者よ・・・少し分別があるなら自分で考えてくれ・・・。
死にもせず生きもせず私がどうn




