準魔法少女と非適合者
・PM15時50分:春日部警察署 屋内訓練場
【屋内の訓練場にハルちゃんを連れてきてラウジーは何をするつもりなのかしら?】
黒須君は帰宅でわたしが呼ばれたのは何か理由がありそうですね。
しかもここの訓練所、レナちゃんと黒須君が模擬戦をした施設に似ています。
〈もしかしてハルちゃんも誰かと戦うために連れてこられたのですか?〉
それは分からないですが、既に試合用のリング上に運動服を着た若い成人男性2人が立っています。
【2人とも20代半ばくらいで顔は・・・まあまあって感じね】
〈身長は少し高いけど腕はちょっと細いので顔がゴツくなかったら頼りなさそうに見えるのです〉
「おお、お待ちしていました」
【すでに警察関係者が待機しているわね】
全員50歳超えている年齢で勲章らしきものを制服の胸元などに付けているのを見ると地位の高い方達でしょう。
〈他の警察の人達は手にアイパッドを持っているのです〉
何かのデータを記録する為でしょうか?
【多分、試合用のリングの上にいる2人だと思うわ。ただ、ハルちゃんを連れてきた理由までは分からいけど】
「ハル、君の所持している7宝具、聖なる手袋を渡して欲しい」
「え? あ、はい」
さっそくわたしの7宝具、テキンノ・ズオープを。
〈ハルちゃんの変身アイテムを渡すつもりですか⁉〉
わたしは変身しません。
【・・・もしかしてあのリング上の2人に・・・】
え?
「やはり迷いなく7宝具を渡せる。偉いよ」
「???」
ラウジーさんは僅かに嬉しそうな表情で7宝具を受け取ってリング上へ。
【やっぱりあの2人に渡すつもりなのね】
どういう事ですか?
【あの2人のどちらかに装備させるつもりなのよ】
ええ⁉
〈あ、本当に片方に渡したのです!〉
「これからあの2人に試合をしてもらう」
「試合って・・・もう1人の人は7宝具所持者相手にどう戦うんですか⁉」
「相手も同質の物を使う」
「同質?」
【あら、相手は綺麗な指輪を持っているわ】
遠くからでもキレイなのが分かる上品なサファイアブルーで宝石は付いていないけど高級な結婚指輪みたいです。
〈対戦相手がその指輪を左手の人差し指にはめたのです〉
あ、わたし達が7宝具を装備した時と同じく指輪をはめた途端に両腕と両足にアンクレットが⁉
【形も同じね。しいて言うなら腕のアンクレットの位置がハルちゃん達の時は上腕二頭筋部分なのに対してあっちは両手首部分くらいの違いね】
でもどうして7宝具が?
「アレは装着型7宝具のプロトタイプで、単純な身体能力の上昇力は正式な装着式の7宝具と同等だ」
「プロトタイプ?」
「そうだ。7宝具を開発者の1人が装着者の負担を調査するために貴重な材料を使って作った試作品だ」
「確かに使用者の方の身体への負担は調べておく必要はあると思います」
あんなに身体能力が上がるなら身体への負担は調べておく必要はあると思います。
〈でもハルちゃんは平気なのです〉
おそらくあのプロトタイプで実験して安全が証明されたからこうして中学生のわたしでも使えるのだと思います。
・・・実験になった人がどういう人かは想像したくないですが・・・。
「というか適合者が見つかったという事ですか?」
「任務を解かれるのが嫌なのかな?」
「いえ、適合者がいるなら中学生のわたしが使うより大人の人が使うべきだと思うので」
【あら、ラウジーの表情が嬉しそうに見えるわね】
「適合者に相応しいかどうかはこれからテストをする」
「・・・これから? 適合者だから使うのでは?」
「クロス=リュウが言っていた事を思い出して欲しい。7宝具を装備した人間が暴走した前例があるという事を」
「確か仲の良かったお友達が殺人を犯したって・・・」
「そう。7宝具は装着者の精神を高揚する性質上そういった状況も考えられる。だからハルやクロス=リュウのように悪用しない優れた精神を持った人間でないと使いこなせない」
「黒須君は本来ちゃんとした大人が使うべきとも言っていましたが、その『大人』が見つかったという事ですか?」
「ソレをこれから見定める」
「み、見定めるって・・・もし暴走したら・・・」
「そんな事は僕がさせないさ」
【あら、測定員の1人がこっちに来たわ】
〈ニコニコなのです〉
「大丈夫です! 我々が徹底的に調べ、信頼できる人材を選びました。暴走の心配はありません!」
「では早速試合を始めて証明して欲しい」
「ええ。2人共準備はいいですね!」
「・・・すげえ・・・!」
「じゅ、準備はいいかな⁉」
「ち、力が漲るぞ‼」
【全然上司(?)の話を聞いていないわね】
〈ハルちゃんの7宝具を装備して興奮しているのです〉
力が上がって興奮状態でもそんなに集中できないものなのでしょうか?
少なくともわたしは周りの声が聞こえなくなるという事はなかったですが・・・。
「いくぜえ‼‼」
【勝手に試合を始めだしたわね】
〈プロトタイプを付けた人も戦いだしたのです〉
こ、この人達、本当に7宝具の装着候補者なんですか?
上司の人達が「待ちなさい!」と言っているのに無視して戦っています・・・。
「ガハッ」
【指輪装着者のパンチがハルちゃんの装着者の顔面にヒットしたわ】
〈殴られたと同時に血が噴き出たのです〉
「ッ・・・く・・・!」
痛みを堪えて耐性を立て直そうとしている隙にプロトタイプ装備の人の飛び蹴りが胸部に命中しました。
〈今度は尻もち着いて倒れちゃったのです〉
「くたばれカス野郎!」
そのまま倒れている相手の腹部にパンチを叩きつけて・・・
「ぶゴわッ!」
【少し血の混じった唾液を大量に吐いたわね】
「死ねえッ」
〈もう一回パンチを叩きつけるつもりなのです!〉
ま、まさか本当に殺す気じゃ⁉
「やめないか‼‼」
指輪装着者の顔に赤いペンキが付着しました。
【上層部の人の手には逃走犯の追跡を目的に使うペイントボール発射装置を持っているわね】
〈あのでっかい懐中電灯みたいな道具がですか?」
【ええ。あの先端の穴から1、7cmのペイントボールが発射されるの。当たったらボールが弾けて当たった奴に付着するって仕組み】
「何故勝手に戦った⁉」
〈ペイントボールを撃った偉い人はカンカンなのです〉
「こ・・・この野郎ッ‼」
もう一人の対戦相手の人、鬼のような形相でいつの間にかに武器を⁉
【アレをプロトタイプ装着者に向けて撃つつもりね】
防御力が上がっているとはいえ当たったら・・・。
「ごこごッ・・・ッ‼⁉」
急に前向きに倒れて・・・そのままリングにめり込んでしまいました・・・。
〈まるでギャグ漫画で人が高い所から落っこちてそのまま床にめりこんだみたいなのです〉
「やはり暴走したか」
も、もしかしてラウジーさん⁉
〈もしかしてアイちゃんに使った事のある重力操作を?〉
【あら、重力操作なんて事もできるの? 恐ろしいわね】
「さて、対戦相手みたいになりたくなかったら今すぐ指輪を外せ」
【ラウジーの目は完全にゴミを見る目ね】
「だ、黙れこのガキィ‼」
〈従うどころかラウジーさんに向かってダッシュしたのです!〉
【モーションからしてパンチをお見舞いする気ね】
「ぎごッ⁉」
プロトタイプの人はいきなり前のめりに⁉
〈な、何があったのですか⁉〉
【プロトタイプの男の腹部を見ればわかるわ】
え?
〈あ、バスケットボールくらいの大きさの手でグーパンチを喰らっているのです!〉
手はホラー映画などに出てくる妖怪のような黒い手で手首から先が無い・・・完全に『拳だけ』です・・・。
「おお・・・むお・・・ッ」
【相当強力だったのか、プロトタイプの男は今の腹パン一撃で気絶したわね】
同時に両手両足のアンクレットも消えました。
「ラウジーさん、今の手は?」
「アレは僕の手の1つだ。いつもは0、1mm程で僕の周りで待機している。攻撃などの必要時にあのように空気を吸って大きくなる。実はもう1つあるがあの程度の相手なら1つで十分から使わなかったけどね」
確か身体能力の上昇はわたしやレナちゃん、黒須君が使っている7宝具と同じって言っていた気が・・・。
【ラウジーは白兵戦も恐ろしいって事ね】
ラウジーさん、装着者の人が気絶したと同時に床に転がったプロトタイプを拾い、そのままリング上へ・・・。
【さっきの『手の1つ』を使ってリングの床にめり込んでいる対戦相手を芋を引き抜くかのように引きずり出したわね】
〈ハルちゃんの7宝具を使った人も気絶しているのです〉
ラウジーさんは7宝具だけ回収してわたしの元へ?
【あら、少し嬉しそうな表情ね】
「ハル、このように7宝具は装着者が精神的に未熟だとこうなる。もし信用できる人間を見つけても7宝具の事は公表しないでほしい。今回は人的被害が無かったがいつでも『止められる』状況とは限らない。それを覚えて欲しいから今日ココに連れてきた」
「・・・黒須君も7宝具を悪用しないだけでわたしを信頼してくれたのはこういう光景を何度も見ていたからなんですね・・・」
「そうだよ。7宝具に関しては安易に他人を信じてはいけない。間違った人間に渡したらこの試合のようになるのを忘れないでほしい」
「ま、まって下さいミスター・ラウジー! まだ適合者の蝶野巡査長が残って・・・」
「チョウノ=タカシ巡査長も不合格だ」
そう言ってラウジーさんはスマートフォンサイズのガラス板・・・レナちゃんが自国の人を読んだ時に使った通信機と同じ物?
【それを床にかざしたらガラス板から光が出て床に映像が映ったわ】
こういう近未来映画みたいな光で東映された映像って半透明ですが、床に写った映像は高画質で普通のTVを見ているのと変わらないです。
〈凄い技術なのです〉
映像に写っているのはどこかの一軒家の真正面・・・この家・・・黒須君の家⁉
「ミスター・ラウジー、この映像は・・・?」
「すぐにチョウノ=タカシ巡査長が映る」
ラウジーさんの言う通り、家の前に制服を着た警察官の男性が1人・・・。
【警官はチャイムを鳴らして家の扉の前で待っているわね】
というか手には拳銃を持っていますが・・・?
「な、何故蝶野巡査長が⁉」
「じゅ、銃を持って・・・ま、まさか・・・⁉」
上層部の人達も驚いていますが・・・一体何が?
『春日部警察署の者です。黒須竜君はいますか?』
銃を片手に・・・黒須君にどんな要件が?
【というかこの映像、音質も綺麗ね】
『今出ます』
この声、インターホンに出たのは黒須君だったんですね。
【あの後すぐに家に帰ったのね】
返答から数秒後、扉が少し開き・・・え⁉
〈この警察の人は扉を強引に開けようのしたのです!〉
【でもチェーンロックがかかっているからダメだったわね】
『くそ!』
駄目だと分かった途端、扉の隙間に銃口を⁉
『ぎゃああああああッッッ』
〈でも警察の人が銃を持っていた手を抑えて苦しみだしたのです〉
【手が変な方向に曲がっているわね】
チェーンロックが外れる音と同時に扉が開き・・・7宝具を装備した黒須君⁉
『無事か⁉』
家の前に10人くらい人・・・私服ですけど集まった男性達の1人が黒須君を襲った警察の人に手錠を・・・私服警官でしょうか?
〈あ、映像が消えたのです〉
「見ての通り、チョウノ=タカシ巡査長は7宝具を装備した時の快楽と、7宝具の力で成果を出して昇格する目的の為にクロス=リュウの7宝具を奪おうとした」
ラウジーさんが言い終わるとさっき映像を映すのに使ったガラス板に黒須君の顔が映って?
『おいラウジー』
声の主は黒須君です・・・。
『また7宝具目当ての警官が来たぞ・・・。先月は5人だったが今月はこれで25人だ・・・」
に、25人も・・・?
「大変だったね。ではその警官を候補者に推薦した春日部警察署の者達に謝罪をさせようか?」
『いや、いい。どうせ『次はちゃんとした候補者を』とか『以後気を付けるよう心掛ける』みたいな事言われる『だけ』だからな・・・』
ソレを聞いた春日部警察署の人達は図星だったのか、音声が聞こえるガラス板から目を逸らしていますね・・・。
【黒須君、不憫ね】
「さ、ハルも帰宅するといい。車は用意してある」
ラウジーさんは苛立っているけど何も言えないでいる春日部警察署の上層部人達を無視して屋内訓練施設を出て行きました。
【もしかして今回みたいな暴走多いからハルちゃんにも見せて恥をかかせようって魂胆かしら?】
それは分かりません。
単純に7宝具の危険性を見せたかっただけかも知れませんし・・・考えても仕方ないのでわたし達も帰りましょう。
〈ハルちゃんも早く帰るのです! アイちゃんケーキ食べたいのです!〉
今月中に投稿できた・・・。
特に深い内容じゃ無いのに疲れた・・・。
寝るか・・・。
・・・あ、エアコン壊r
(死体の体液で汚れていてここから先は読めない)




