準魔法少女のアドバイス
・PM16時50分:埼玉県 警察署前喫茶店内
珈琲ってよく眠気覚ましに利用されるって聞きますけど自分で試してみるとあまり眠気覚ましになっていない気がします。
〈そんなに眠いのですか?〉
今日の訓練の疲れがまだ残っているので・・・。
〈訓練しなくてもハルちゃんは強いのに〉
いえ、それは7宝具があるからです。
それに鍛えて体力をつければいつかは眠気に襲われる事は無くなると思うのでこれからも訓練は頑張る必要はあると思います。
「待たせたな」
〈あ、レナちゃんなのです。服装が違うので雰囲気が違うのです〉
服装は腰の部分に赤い薔薇の刺繍付きの黒いレースギャザースカート、上は黒いブレザーでスカートと同じ赤い薔薇が両肩に刺繍された少し派手で上品な恰好で海外の幼い王女様って感じですね。
〈後ろに黒いコートと紺色のコートを着た大人の女性もいるのです〉
レナちゃんは異世界の王女様なのでボディガードの方でしょうか?
〈2人共背が高いので強そうなのです〉
手に持っているアタッシュケースも大きいし重そう・・・もしかしたら重火器が入っているのかも知れませんね・・・。
「お前達、先に宿泊先で待機していてくれ。先程言った通りハルと2人きりで話がしたい」
「ワカリマシタ」
〈お辞儀をしてレナちゃんの指示でアッサリ帰っちゃったのです〉
もしかしたら単なる世話係、故国ではメイドさんみたいな立場なのかも知れませんね。
「さて、さっそく話を・・・の前に店に来たのだから何か注文しないとな」
〈ちょうど店員さんがオーダーを取りに来たのです〉
「いらっしゃいませ。ご注文は?」
「う~ん・・・ハルは珈琲か。・・・わたしも同じコーヒーを」
「かしこまりました」
「レナちゃんは珈琲が好きなの?」
「いや、この世界ではまだ飲んだ事が無い。名前は知っているが」
「そうなんだ。でも知らない物でも色々な物を試すなんて勉強熱心なんですね」
「いずれファエストやもう1つの異世界とこの世界は交流するかも知れないからな。他国の事を王女の私が何も知らないのというのは交流の上では良くないからな」
「いずれ?」
「まだ深く交流する時期では無いという事だ。交流するという事は自国の技術を相手に教えるという事だ。医療だけでなく兵器などの技術もだ。たとえ科学技術が劣っている相手でもだ。詳細を教えなくても存在自体は知られる。そうなるとハルのいる世界の科学者達だけでなくテロリストも欲しがる。現に我々の世界のテロリストがロックギアにファエストの兵器を売っている」
「た、確かにそれが原因で黒須君やわたしが戦場に足を運ぶ事になりましたが・・・」
「医療だってそうだ」
「医療?」
「ああ。医学を提供するという事は色々なウィルスや寄生虫などの存在を教える事になる」
「・・・もしかしてそのウィルスの悪用も危惧しているって事ですか?」
「そうだ。そのウィルスをばら撒かれる可能性もあるし、ワクチン制作にしても『どう使われるか』の研究をする口実になる。治療法と偽って感染拡大の研究に使われる可能性もある」
「ば、バイオテロは確かに恐ろしいですよね・・・」
ウィルスは変異して今までのワクチンでは効かない可能性もあるので悪用されたらただの爆破テロより恐ろしい規模の被害があるのでそれを考えるとレナちゃんが交友関係をまだ結ばないというのが分かります・・・。
「ただ、先に違法に兵器を売ったのは私の住む世界のテロリストだからな。ハルの住む世界に被害を出した以上無視は出来ないし大きい顔も出来ない。ラウジーがお互いの世界の高官に『余計な事』をしないよう釘を刺してくれたから良かったが・・・」
「ラウジーさんが万能過ぎてすね・・・」
「ああ。アイツは何世紀もの年月を生きているからな。資金も発言力もラウジー以上の存在は居ないだろう」
「それだけの権力があるなんて・・・ラウジーさん、普段は何をしているんですか?」
たとえ不老不死でもただ生きているだけで権力を得られる程世の中甘くないですし・・・。
「色々やっているがラウジーは主に普段は新薬などの医療関係の研究をしている。未知のウィルスのワクチン制作や予防薬、安楽死の薬など様々な医療に貢献している。その資金で慈善企業を立ち上げ様々な貧困な国の民を救い、そして支持を得てさらに発言力を得る。政治の世界にも高額な寄付をしている。この世界の日本のような政治家はすぐに無駄遣いするからラウジーの寄付を止められたら税金を何十倍にしないと元の贅沢ができないから完全にラウジーのいいなりになる。まあ、その頃にはそういった無能な政治家はすぐに無駄遣いなどを理由に追放されるがな」
「前にシェリーさんがラウジーさんの言う事を聞かない人は近いうちに事故死か病死すると言っていましたが追放で済むならむしろ幸運な気がしてきました・・・」
「そうだな。話を戻すが、まずは私のいた世界の兵器を売りさばいたテロリストとそれを所持しているテロリスト、そしてそれを購入した犯罪者達を全て逮捕してから本格的に平和的な交流だ。・・・それが実現する頃にはハルも私も成人年齢になっているだろうがな・・・」
「それだけ既に多くの兵器が出回っているって事ですね・・・」
「ああ。だから異世界のハルを巻き込んですまないとは思うが今後も私と協力して欲しい」
「もちろんです」
10才のレナちゃんが頑張っているのに年上のわたしが頑張らない訳にはいかないですし。
「そう言ってもらえて嬉しいぞ」
そう言って笑顔になるレナちゃん、こうして見るとやっぱり10才の女の子だなって思えます。
「・・・それで、わたしに相談があるみたいですが、どんな相談ですか?」
〈レナちゃん、急に気まずそうになったのです〉
付き人(?)の人を先に帰らせるくらいですからかなり言い辛い事なのでしょう。
「・・・ハルは今日のクロス=リュウとの試合で・・・その・・・」
「?」
「く、クロス=リュウが言っていた事についてどう思うか?」
きっと黒須君の戦場にスカートを穿く行為が馬鹿か痴女と言っていた事ですよね・・・。
〈アレはハルちゃん達魔法少女全てを侮辱する言葉なのです!〉
だからわたしは魔法少女ではありません。
「えっと、レナちゃんを挑発して混乱させる為だし黒須君の言い過ぎな部分もあるけど・・・その・・・やっぱり女の子がスカートで戦うのは良くないと思うの」
〈何を言っているのです! ハルちゃんはもうエマちゃんから貰った魔法少女服を着ないつもりなのですか⁉〉
アレは近いうちにエマちゃんに返す予定です。
エマちゃんがもう死なないと分かったなら『形見』として持っている理由もないですし。
「そ、そうか・・・」
レナちゃん、残念そうな表情だけど何か思うところがあるのか、わたしの意見に納得した様子です。
「ハルは・・・私の母が間違っていたと思うのか?」
やっぱり死んだお母さんの事を尊敬しているんですね・・・。
「わたしも戦場での経験は浅いので規則等はあまり語る資格は無いと思いますが・・・スカートで戦うって事はスカートの中を同行している仲間の人達に見せる事になりますし・・・」
「うう・・・」
「それに・・・その・・・」
〈周りを見渡してどうしたのですか?〉
今からレナちゃんに言い辛い事を言うからです。
今は他の客が少ないし周りの席には人が居ないので言いましょう。
「今日の模擬戦、遠くから見ていたわたしからもレナちゃんの下着、何度も見えていましたよ」
「ぐぐッ・・・ッ」
〈レナちゃん、顔が真っ赤っかなのです〉
多分、今までは見られていないと思っていたのでしょう・・・。
「は、母上が設立した女性部隊『クロード』の隊員によると『案外見えないもの』と言われていたから大丈夫かと・・・」
「多分、本当の事を言った男性は怒られるか殴られるのを恐れて言わなかったんだと思います」
あんなに短いスカートで戦って何も見えないなんておかしいですから・・・。
そもそも本当に緊迫した状況では敵味方関係なく女性のスカートの中を見る余裕は無いでしょうし・・・。
「・・・やはりハルに相談して正解だった・・・」
「え? どうしてですか?」
「国の者に相談しても『貴方は間違っていない』と言われるのからだ」
「それは・・・レナちゃんが王女だからですか?」
「ああ。私の国は王族への忠誠心がとても高い。父上も、その前の歴代の王も民に慕われる存在だった。地位のある者も忠誠心が高い。母上も結婚前は戦場で多くの功績を残した英雄だから悪く言う者は皆無だ。だから同じ相談をしてもハルのように指摘をしてくれなかっただろう・・・」
「お父さんはお亡くなりになったらしいですけど、お兄さんは何か言ってくれないんですか?」
「兄上も母上の事を尊敬している。母上を否定するような発言はしない」
「・・・同い年の子で相談できそうな人はいないんですか?」
「私は学校を飛び級で卒業したから同年代で相談できそうな相手が居ないんだ。まあ、いたとしても私が王女だから気遣ってハルみたいに指摘はしてくれなかったと思う」
「・・・レナちゃん、今まで1人で頑張っていたんですね」
「でも今はハルがいる。姉が出来たみたいで嬉しいぞ」
「あ、姉ですか?」
「ああ。地位も故国も関係ない、こういう言い辛い相談ができる相手・・・ずっと欲しかった」
確かにそういうのって姉妹だから相談しやすいというのはあると思います。
「唯一『女』として叱ってくれそうな母上も私が5才の時に亡くなった。だからハルには今後もこういった相談をしたいのだが・・・ダメか?」
「いえ、わたしで良ければ」
〈レナちゃん、クリスマスプレゼントをもらったかのように明るい笑顔になったのです〉
「そうか! これからもよろしく頼む!」
きっと、今まで『女の子』としては1人で過ごしてきたんですね。
飛び級できる程の天才だからよけいに相談相手が居なかったから心細かったのでしょう。
天才でもまだ10才だから寂しかったんですね。
「お待たせしました。珈琲です」
〈レナちゃんが頼んだコーヒーが来たのです〉
「珈琲・・・。砂糖やミルクを入れると聞いたがどれくらい入れるのか?」
「う~ん、人によっては珈琲の苦さが好きという人もいますし逆に砂糖やミルクをたっぷり入れる人もいますしコレは人それぞれだと思います」
「ちなみにハルは今、どれくらいミルクや砂糖を入れているのか?」
「いつもはミルクを多めに入れますけど眠気覚ましに今は何も入れていません」
「・・・なら最初はわたしも何も入れないで飲んでみるか」
そう言ってお皿と一緒にカップを音を立てずゆっくり持ち上げる優雅な仕草、他国のお姫様なんだなと再認識させられます。
〈でも口に入れた瞬間顔が少し歪んだのです〉
「は、ハル・・・ファエストにも苦味を売りにしている飲み物や食べ物はあるがこの珈琲はそれを上回るぞ・・・」
「そ、そうなんですか?」
異世界だと苦い物が苦手な人が多いのでしょうか?
「ハルは何も入れていないと言っていたが平気なのか?」
「ミルクを入れた方が美味しいと個人的に思いますけど、慣れるとミルクや砂糖無しでも美味しいですよ」
「こ、この苦さがか・・・?」
「あ、無理してそのまま飲む必要はないですよ。試しにミルクを入れて・・・」
「そ、そうか。なら入れてみるか。・・・2、3個くらいは多いか?」
「多めですけどそれくらいの量を入れる人は珍しくないですし・・・」
「お前砂糖入れすぎじゃねえの?」
〈奥の方で声のでかいで喋っている高校生グループがいるのです〉
4人用テーブルで携帯ゲーム機で遊びながらお菓子や珈琲を飲んでいます。
「お前味覚が子供だな」
「ああ、よく言われる。でも好きだからいっぱい入れる♡」
そう言って直径1、5cm程の角砂糖を3個も入れて・・・
「い、いや待て! ハルが何も入れずに美味しく飲んでいるのなら私も最後まで・・・!」
「れ、レナちゃん⁉」
「だ、大丈夫だ・・・。私は王女として大人向けの料理や飲み物を食べる必要があるからな。こ、子供っぽい行動は控えないとな・・・ッ」
・・・子供っぽいと言われてムキになる事が一番子供っぽいと教えてあげた方が良いでしょうか?
仕事帰りに少しづつやっているからとはいえ時間がかかった・・・。
次の投稿いつになるだろう・・・。
多分8月の終わりくらいだろうな・・・。




