準魔法少女ともう1人の準魔法少女
・PM14時44分:埼玉県 警察署野外訓練所
「ハア、ハア・・・ッ」
今日の訓練は障害物を乗り越えて目的地に向かう訓練です・・・。
狭い隙間をスライディングで通り抜けたり岩のハードルを飛び越えたり重そうな鉄球の振り子を避けたりとまるで1人運動会をしている気分です・・・。
すごく疲れるし、記録を測るシェリーさん以外居ないから疲労だけでなく寂しさも凄まじいです・・・。
「ハルちゃん、これでラストよ!」
シェリーさんに今日はこの訓練コースを50週するように言われたけど大変すぎて実はもう何週したか分からなくなっていたのでもう終わりだと思うとなんとか頑張れそうです。
最期は狭いトンネルの中をスライディングで通過、コレでラスト・・・頑張らなきゃ!
〈ハルちゃん、ファイトなのです! 魔法少女特有の真っ平胸なら難無く乗り越えられるハズなのです!〉
胸の事は言わないで下さい!
〈見事にクリアしたのです!〉
「そこまで。頑張ったわね、ハルちゃん!」
そう言って左手でストップウォッチを押して右手で首にぶら下げたアイパッドにわたしの速度などの記録をしています。
「はい、水分補給も忘れないでね」
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・は、はい・・・」
シェリーさんから冷たいスポーツドリンクを受け取ったわたしは即座に一気飲みしてしまいました。
〈飲むスピードが凄いなのです!〉
かなり汗をかいたので飲まないと脱水症状とかになりそうです。
例の治癒薬を出す事も考えると水分補給は出来る時にしないと。
欲を言えば今すぐシャワーを浴びて体中の汗を流したいです・・・。
「ハルちゃん、思ったよりスタミナはあるわね。コレなら実戦向けの訓練の段階に行けるのもそう遠くないかも知れないわね」
〈凄いのです! もう1流の魔法少女なのです!〉
ですからわたしは魔法少女ではありません!
「ハァ・・・ハァ・・・黒須君もこの訓練を受けたんですよね?」
わたしよりスタミナがありそうとは言え、黒須君も大変だったと思います。
「う~ん、楽ではなさそうだったけど体格がハルちゃんより小柄なのもあってコース1週にかかる時間は短かったわね」
「・・・やっぱり黒須君はすごいですね」
「ええ。体術やナイフの訓練も上達が早いから教官の人も教えがいがあるって言っていたわ」
「つまり黒須君の足手まといにならない為にもわたしも頑張らないと・・・」
「そうね。頑張るのは大事ね。ハルちゃんはその心配は皆無だからこっちもやりやすいわ」
〈また褒められたのです! さすがハルちゃんなのです!〉
「でも無理はし過ぎないでね。スタミナ使い果たして緊急時に出撃できないなんて事にならないようにね」
「・・・はい」
確かに体力や技術を身に着けても出撃出来ないなら訓練の意味がありませんし。
「というわけで休憩しましょう。そうだ、シャワーを浴びたら室内訓練所でクロス君の訓練試合を見てみるのはどう?」
「黒須君の・・・ですか?」
「ええ。1時間後に近接戦闘の模擬戦をするから見学するのはどう?」
「はい。是非」
わたしの実力だと当分先でしょうけどいつかはそういった模擬戦もするでしょうし、黒須君がどんな訓練を普段からやっているかも知りたいですしシャワーを浴びたらすぐに見に行きましょう。
〈まずは警察署のシャワールームへGOなのです!〉
・PM15時50分:埼玉県 警察署室内訓練所
ふう、シャワーを浴びると生き返った気分になります。
〈汗臭い魔法少女は人気が出ないので清潔を保つのは大事なのです〉
ですからわたしは魔法少女ではありません。
〈もう訓練所には黒須君がいるのです〉
柔道用と思われる試合用のリングの上に立っています。
〈服装はいつもの戦場で着ているのと同じなのです〉
さっそく声を・・・
「お主がクロバ=ハルだな?」
〈背後から女の子の声がしたのです〉
振り返ると10才くらいの女の子がいます。
〈茶髪のツインテールが似合うのです。それに黒いミニスカートに騎士みたいな上着は近接戦闘系の魔法少女のようなのです〉
魔法少女っぽいかはともかく、服装はファンタジー世界の物語に出てくる感じです。
顔立ちはイタリア人っぽいですが。
「はい。そうですが・・・」
とりあえず返事をしないと。
「やはりそうか。自己紹介をする。私の名はレナ=クロード、お主の同志だ」
「同志?」
「お主と同じ装備型7宝具の使用者だ」
「え? あなたが?」
どう見ても10才くらいの女の子だし、身長も140cm未満、145cmの黒須君より10cm近く低くに見えます。
体格もスリムで、外見だけで判断するのは失礼ですけど体格だけなら文系っぽい気がします。
「自分より年下の人間が7宝具の使用者なのは意外かい?」
「ラウジーさん?」
「レナは異世界の1つ、ファエストの王女だ」
「王女⁉」
どうして一国の王女様がここに?
「レナは優秀な王女だ。1年前、9才で異世界の1番厳しい大学を飛び級で卒業している。武術も優秀でこの世界でいうフェンシングに近いルールの競技も身長2mくらいの大人も出場している大会で優勝する程だ」
「す、すごい・・・」
わたしなんかまだ模擬戦前の訓練すら終わっていないのに・・・。
「固くならないでくれ。私とお主はこれから共に戦う仲間なのだから。私の事はレナと呼んで構わない。私もお主の事をハルと呼ぶ。よいか?」
「ええ。こちらこそよろしく、レナちゃん」
〈おお、魔法少女同士の握手! 視聴率もアップなのです!〉
ですからわたしは魔法少女ではありません。
「〝ちゃん〟か・・・。悪くない呼ばれ方だ!」
勢いで『レナちゃん』と呼んじゃったけど、よく考えたら一般市民なわたしが異世界の王女様にちゃん付けは失礼だったかも・・・。
〈気にしすぎなのです。現にレナちゃんは嬉しそうなのです〉
確かに玩具を買ってもらった子供みたいに嬉しそうな表情ですが・・・。
「というか王女なのにどうして直接戦場に?」
ご両親も心配でしょうし、ましてや跡継ぎの子が戦場で命を落とす事になったら国の一大事になってしまうのでは?
「国には私より優秀な5才年上の兄がいる。兄上は亡き両親の後を継ぐ最重要人物だ。もちろん私も死ぬつもりは無いが兄上に万が一の事があったらそれこそ一大事だ。それに7宝具は国の重要物だから使用権があるのは王族・・・兄上以外だと王女の私と弟くらいだが、弟はまだ5才だから私しかいないのだ」
「そ、そうだったんですね・・・」
ご両親が既に亡くなられているというのも驚きですがお兄さんの為に実質身代わりを志願するというのも凄い・・・。
「それにしてもハルは顔がラウジーに似ていると聞いていたが想像以上に似ているな」
「ええ、よく言われます」
でもレナちゃんも黒須君同様、ラウジーさんを呼び捨てで呼んでいるから黒須君同様ちゃんとラウジーさんが怖いだけじゃないのを分かっているんですね。
「さてレナ、ハルとの挨拶が終わったならそろそろリングに」
「うむ、分かった」
レナちゃんは黒須君がいるリングへ。
〈どんな試合になるか楽しみなのです〉
次の更新はもっとかかりそう・・・。




