準魔法少女、初実戦へ・1
・PM14時40分:千葉県 某森林地区
<森の中を言われた通り真っすぐ進んだら川沿いにでたのです>
川沿いには・・・黒須君!
<他にも3人いるのです>
人・・・では無いです!
<よく見ると顔が骸骨のようなデザインのロボットなのです!>
赤いモノアイの瞳、胴体は一般の軍人さんや特殊部隊の人が着るような防護服、顔を見なかったらただの軍人さんだと思っていたでしょう。
『マッチャ』
<あ、目から赤色のレーザーを黒須君に撃ったのです!>
「ぬ!」
あ、黒須君はステップして避けてくれました。
「ハル、今クロス=リュウが戦っているのはAI搭載の機械兵士だ。排除しろ」
「はい!」
隣に居るラウジーさんの言う通りグローブに付属している小さい錫杖を外して・・・。
「わ!」
話には聞いていたけど本当に錫杖が大きくなってビックリしました。
<さ、ハルちゃん、早速この武器で攻撃するのです!>
錫杖の真ん中辺にトリガーが。
<それを引けば錫杖の宝石から光線が出るのです!>
分かりました。
・・・・狙いをちゃんと定めて・・・。
「⁉」
音もなく直径30cmの光弾が!
<これがこのグローブのメイン武器なのです! 見るのです、発射した光弾が命中して敵が爆発したのです!>
すごい、一発で敵が・・・!
「な、なんだ⁉」
<黒須君も驚いているのです!>
残りの二体も!
‐ボコゴン!‐
‐ボコゴン!‐
<二発とも命中! さすがハルちゃんなのです!>
「新手の敵か⁉」
黒須君は敵の増援を警戒しているみたいなのでわたしの姿を見せて安心させてあげないと。
「黒須君!」
「むッ・・・黒場⁉」
一瞬武器をわたしに向けたけど、わたしと分かってすぐに構えるのを止めてくれました。
こういう冷静な判断力も黒須君が7宝具の使用者として選ばれた理由の1つなのかも。
「黒場、どうしてここに? ・・・というかアンクレットにその錫杖、7宝具じゃないか!」
「はい。黒須君を助けに来ました」
<また足元をじっくり見ているのです>
「・・・私服だがスカートじゃないから、マ・ペットではなさそうだが・・・」
<あ、また魔法少女の悪口を言ったのです! ハルちゃんはいずれミニスカな魔法少女衣装を着て戦う予定なのです!>
そんな予定は一生ありません!
「俺を助けにとはどういう事だ?」
「もう、黒須君が人を殺さずに済むようにです!」
「もう遅い。今日も十一人殺した。今更・・・」
「知っています! だからこれ以上殺さなくて済むようにわたしも頑張ります!」
「黒場、この前俺が言った事を忘れたのか? 戦場に足を運べば犯罪者とは言えソイツを殺す事もあるかも知れないんだぞ?」
「分かっています! でも、今わたしに出来る事はそれくらいです! 黒須君の助けになるくらいしか!」
「黒場、俺の事は気にしなくていいんだ。どうせ俺は・・・」
「『自分は汚れてもいい人間』と言いたいんですね。それは違います!」
「違うって・・・俺はなんの長所も・・・」
「わたしも同じです! わたしも努力が報われませんでした!」
「・・・何?」
「リュウ、ハルの言っている事は本当だ」
「ラウジー?」
わたしに任せるから説得に関与しないかと思っていたラウジーさんが急に何故?
「コレを見て欲しい」
ラウジーさんは一枚の紙を・・・。
「クロバ=ハルのテスト用紙だ」
「わたしのテスト用紙・・・ま、まさか⁉」
「ああ。両親の離婚を招く原因になった答案用紙だ」
「ううう嘘ですよね⁉」
「嘘でクロス=リュウを信じさせるつもりは無い。口で言うより実物を見せた方が信じてもらえるだろうし説得力もある。それともプライドを優先するつもりかい?」
「いえ・・・み、見せても構いません・・・ッ」
<は、ハルちゃん大丈夫ですか?>
本音を言えば見せないでほしいですけど黒須君にわたしが同じ人間だと信じてもらうには仕方がないです・・・ッ!
「そうか。ではリュウ、コレを見て欲しい」
「あ、ああ」
ああ、黒須君にわたしの無残なテスト用紙が・・・。
「東雲ハル・・・東雲は黒場の旧姓か。世界史・・・0点?」
ああ、恥ずかしい・・・!
「ちゃんと記入しているのに0点・・・逆にすごい気が・・・ん? 一番初めの解答欄だけ空白だ。・・・まさか」
「そうだ。クロバ=ハルは誤って解答欄の1問目を1個ずらして書き込んでしまった。選択式問題が無いからマグレ当たりは無い。さらに解答欄の数も偶然1つ多く印刷されていてハルのように1問ずらして書き込んでも気付きにくくなってしまった」
「それで1個ズレて回答したのに気付かず0点・・・でもそれがなんで両親の離婚と?」
「自宅に直接届けられるテストだから隠しようが無かった。そしてクロバ=ハルの実の母、シノノメ=レイが娘の点数に激怒して空き瓶やゴルフバットなどでクロバ=ハルに暴行した」
「なッ・・・虐待どころか殺人未遂じゃねえか・・・。なぜそこまで?」
「クロバ=ハルの実の母シノノメ=レイは過去に学歴で苦労した経験があり、娘は良い学歴にしようとかなり拘っていた。姑が死亡してからは抑止する人間が居なくなり、娘への娯楽は全面禁止、友人の誕生日パーティへの参加も禁止していた」
「・・・やりすぎだろ」
「夫もそう思って頻繁に口論になっていた。だがクロバ=ハルは両親の不仲を防ぐ為に勉学に励んだ。自分が良い成績を出し、良い学校に進学できれば両親の不仲も無くなるとそう思っていた」
「・・・で、頑張った結果がこの0点の点数・・・か」
「そうだ。母親のシノノメ=レイは娘への暴力が原因で逮捕、親権も剥奪された。父親は再婚し名字がシノノメからクロバになった」
「・・・俺の学校に転校してきたのも再婚が理由か・・・」
「そうだ。そしてクロス=リュウと出会った。自分と同じ努力で現実を変えられなかった同志という存在を」
「同志? 俺と黒場のどこが同志なんだ?」
「クロス=リュウ、君だって過去に努力を踏みにじられた過去がある。小学4年生の時の事、バスケットの試合で褒められようと頑張ったのを覚えているだろう」
「・・・まさか、あの映像を黒場に見せたのか?」
黒須君、すごく不機嫌そうです・・・。
「おいラウジー! まさか黒場を戦場に行かせるために見せたのか⁉」
黒須君の言い方は明らかに動画を見せた事よりわたしを戦場に誘導した事で怒っています。
黒須君が1番ツライのに、それだけわたし・・・いえ、他人を気にかけてくれる・・・やっぱりそんな優しい黒須君だけにツライ想いをしてほしくない・・・!
「ああ。ただ、見せなくても体育の授業で君への仕打ちを見ていたから過去の映像を見せなくても共感はしていただろう。そして君が戦場にいる事を知った。なら同志の事をもっとよく知って欲しいと思ったからだ。なにせ君の相棒になるかも知れない人材だからね」
「俺の相棒? そんなの頼んだ覚えねぇぞ」
「だが頼りになる仲間がいれば仕事も楽になる。犯罪者相手とはいえ人間を殺す事も無くなるだろう」
「それは黒場が代わりに人を殺すって事か⁉」
「違う。クロバ=ハルが君を救いたいだけだ。もう君は誰も殺さなくて済むかも知れない」
「黒場がマ・ペットの能力でテロリストが死ぬのを防ぐからか? だが場合によっては殺す必要のある場合もあるぞ?」
「クロバ=ハルは、その覚悟はできている」
「・・・そうなのか黒場?」
「はい」
「・・・何故そこまで?」
「黒須君、心の底から笑っていますか?」
「何?」
「この前、体育のバスケットの授業後、わたしが声をかけた時に嬉しかったと言っていましたけど、心の底から喜んでいましたか?」
嬉しいと言っていたけど、今思うと本当は『あのまま叱られたままよりはマシ』で嬉しかっただけなんじゃないかと思います。
「黒須君だって本当は叱られない方がいいですよね? 現実が辛すぎるから自分の事を過小評価しているだけですよね?」
「別に自分の事を過小評価している訳じゃねえ。本当に俺は褒められる所なんて・・・」
やっぱり説得は難しいのです。
何か方法は・・・あ、ラウジーさんがここに来る前に悪口を言うくらいの事をって・・・そうだ、わたしも強気にならなきゃ・・・!
「自分に自信がないんですね。なら黒須君、今すぐこの仕事降りて下さい!」
「な、何・・・⁉」
「自分すら信じられない人がこの先任務を続けられるんですか?」
す、すみません黒須君・・・本当はこんな事言いたくないのに・・・。
「あ、いやだが・・・お、お前こそできるのか?」
<黒須君、珍しくうろたえているのです>
「わたしはマ・ペットに操られない特異体質です。マ・ペットの能力で怪我を癒す事もできます。長所はあります。7宝具が無くても戦場で役に立ちます! もしわたしに戦場に来て欲しくないのでしたらそれ以上の黒須君の長所を見せて下さい!」
「な・・・ッ」
<まるで隠していたHな本を親に見つけられたかのように戸惑っているのです>
「リュウ、君の負けだ。今まで自分の事を過小評価したのが裏目に出たね。今の君にクロバ=ハルを止める事は出来ないよ」
ラウジーさん、なんだか嬉しそうな表情です。
<アイちゃんにはいつもとどう違うか分からないのです>
「ぬぅ・・・ッ。・・・ラウジー、お前も俺に任務を降りろと言うつもりなのか?」
「そんな事は言っていない。むしろ君にはできるだけ長くこの仕事に関わって欲しいくらいだ。だからこそクロバ=ハルが必要だ。クロバ=ハルなら君の良きパートナーとなってくれるだろう。7宝具の悪用や暴走の心配もない。君が求めていた信頼できる仲間だ。意義はないね?」
「・・・確かに、今の俺に反論する権利も理由も無いな・・・」
<滅茶苦茶悔しそうなのです>
「黒須君、もう自分は汚れてもいい人間だと思わないで下さい。弱いのは黒須君だけじゃないんです。わたしだって同じ弱い人間です。そして黒須君は一生懸命頑張っています。たとえ7宝具という道具の力でも懸命に頑張っています。黒須君は胸を張って生きていていい人です!」
「黒場・・・だが俺は既に何人も・・・」
「それを言うという事はやっぱり辛いんですね。わたしは黒須君が相手を殺めてしまうのが辛いのが見ていて悲しいです。だからそんな黒須君の助けになりたいんです!」
「黒場・・・」
「それに、テロを防ぎたいのはわたしも同じです。今日、クラスメイトの長野さんのご両親がテロに巻き込まれて亡くなりました」
「長野の両親が?」
「長野さん、うつ病患者のようでした。もう、これ以上長野さんのような辛い思いを誰にもしてほしくないんです!」
「・・・黒場、くどいようだが戦場に足を運ぶ以上、生身の人間を殺すかも知れないんだぞ? 撃てるのか? 殺せるのか?」
「出来なければ戦場から追い出されるんですよね?」
「・・・やる気満々か・・・」
<黒須君、すごく残念そうにため息を吐いたのです>
それだけわたしの事を気にかけてくれた証拠です。
本当は誰にも戦場に来てほしくないんだと思います。
誰よりも戦場の辛さを知っているのですから。
「そうか。・・・なら早速テストだ!」
「え?」
く、黒須君が銃口をこちらに向けたのです!
「伏せろ!」
伏せろって・・・あ、後ろから気配・・・もしや、
<ハルちゃんがしゃがんだと同時に発砲したのです!>
『テンノクムホク・・・ガ・ガ・ガ・・・』
‐ボォォォン‐
<いつの間にかに背後にいたロボットの敵が爆発したのです>
「とりあえず仮合格だ」
「仮合格?」
「ああ。この後人間相手と戦う予定だ。ソイツは人間だがテロリストだ。一応生け捕りにしてほしいと言われているが・・・逃がすくらいなら殺せとも言われている」
「・・・わたしにそのテロリストを殺せ・・・って事ですか?」
「殺すのは殺さなければ逃げられてしまう場合だけだ。生け捕りにできるならそっちを優先してもいいし俺もそうしたい」
そっか、黒須君が今まで殺めてしまったテロリストの中には逃がさない為に攻撃して殺してしまった事もあるんですね・・・。
「黒場、もしこの後テロリストに逃げられそうになったら・・・本当に撃てるのか?」
黒須君は目で『今からやめてもいいんだ』と言っているように見えます。
・・・けど、
「・・・撃てます」
それじゃあ黒須君は救えませんし、テロを防ぐ事はできません。
黒須君にも、多くの人にも、傷付いてほしくないんです!
「そうか・・・」
<また黒須君は残念そうな顔なのです>
きっとわたしが戦場に行くのを防げなかったからだと思います。
他人に汚れてほしくなかった・・・今もそう思っているんだと思います。
「付いてこい。この先にテロリストのアジトがある。合格かどうかはそれで決める」
<そう言って森の奥へ歩み始めたのです>
この森の奥にテロリスト達のアジトがあるのでしょう。
「分かりました」
この後の活躍次第でわたしが黒須君の役に立つかが決まるんですね・・・。
「いけないなあ・・・子供達が戦場に来ちゃ・・・」




