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準魔法少女  作者: ザキ・S・レッドフィールド
第1章・準魔法少女の始まり
13/54

準魔法少女、病院にて

・AM6時40分:北総合病院特別室

 病院の受付の人にラウジーさんの名前を出したら案内された特別室、職員の人が開けてくれたドアに入ると中は見慣れない機械がいくつかある以外は普通の診察室みたいでした。

 中にはラウジーさんとシェリーさんと・・・アイリスちゃん!


「あ、ハルちゃ! 会いたかったのです~~~‼‼‼」


 アイリスちゃんは迷子の幼い子供が母親と再会できて飛びつくかのようでした。

 一体昨晩に何が?

 とりあえずアイリスちゃんを落ち着かせるために頭をそっと撫でてあげましょう。


「うぅ~、ハルちゃんもエマちゃんみたいに撫でてくれて嬉しいのです・・・」

「そ、それで昨晩は何があったんですか?」

「ラウジーちゃん怖すぎるのです! ちょっとでも強気な発言したら不気味な色の液体が入った注射針を用意するし、休憩中にちょっとでも逃げようとするとさっきまで別の部屋に居た筈なのに気づいたらアイちゃんの隣に居るし、一晩中寝ないで何かしているし、一晩中監視されているみたいで怖かったのです~~~!」

「一晩中寝ないって・・・昨日は重力を操作したとか言っていましたし、ラウジーさんは何者なんですか?」

「その質問に答えて欲しいなら君が相応の協力を警察側にする必要があるな」

「つ、つまり今は教えられないって事ですね・・・」

「その通りだ。さっそく協力してもらうよ」

「は、はい」

「じゃあハルちゃん、この中の椅子に座って」


 室内にある黒いボックス、中には白い椅子とテーブルが1つ、テーブルの上に直径15cm程の透明な円柱型の瓶あるだけでそれ以外は何もないし何も置くスペースが無いかなり狭い空間でわたしの調査をするにしては監視カメラとかが一切ないです。


「さ、入って」


 シェリーさんはわたしにこの中に入るように言っていますが・・・


「この中にカメラとかが無いですがわたしの事を調べなくていいんですか?」

「大丈夫よ。この空間自体が検査機になっているから」

「この中全部が・・・ですか?」

「ええ。全部今私が持っている端末にデータが送信されるようになっているから」


 シェリーさんの手には縦横30cm程の正方形アイパッドらしき端末が。

 アレにデータが送られるのでしょうか?


「さ、中に入って。瓶の中に例の液体を入れてね」

「は、はい」



・AM7時00分:北総合病院特別室

「これで500㎖ね」


 本当にアイリスちゃんの怪我を治す液体は500㎖も出せるんだ・・・。


「ハル、何か体に不調はないか?」

「少し、・・・いえ、結構のどが渇きます」


 今すぐペットボトルの水を飲みほしたい程です。

 口の中は妙に乾くし喉はカラカラだし目も乾燥している気がします。

 まるで血液以外の体中の水分が無くなった感じです・・・。


「ラウジー、ハルちゃんの体内の水分がかなり減っているわ。血液だけでなく唾液や胃液に発汗用の体液、摂取した胃の中の水分までも液体に利用されているわ」

「そ、そんな事まで分かるんですか?」

「ええ。今ハルちゃんがいる空間全体が特殊モニターになっているから。体温や脳波、血液の流れや胃の中の消化具合、骨格の異常まで分かるわ」

「す、凄くハイテクですね・・・」

「ええ。この世界(ロックギア)には無い技術よ」

「異世界の技術って事ですね」

「それとハルちゃんから摂取した水分はマ・ペットを通して例の治癒薬になるみたい。マ・ペットがろ過機みたいな役割をしているから菌やウィルスを浄化してくれているみたいね」

「そ、そういう仕組みだったんですね・・・」


<アイちゃんも知らなかったのです>

 なんでアイリスちゃん自身が知らないんですか?


「ハル、コレを飲むといい」


 そう言うとラウジーさんはペットボトルに入った500㎖のミネラルウォーターをわたしに渡してくれました。

 のどが渇いているのでとてもありがたいです。


「いただきます」


<ハルちゃん、すごい勢いで飲んでいるのです!>

 ゴクゴク・・・ふう・・・生き返った気分です。

〈500㎖を一気飲み、凄いのです!〉

 お行儀が悪いかも知れないですけど、一度飲みだしたら止められなかったです。

<そんなに喉が渇いていたのですね>


「大丈夫、ハルちゃん?」

「はい。水分補給をしたらかなり楽になりました」


 と言ってもまだ喉の渇きを感じますけど。

<あ、あんなに飲んだのにですか⁉>

 なんというか、今飲んだミネラルウォーターを体が一気に吸収してそれでもまだ足りないと身体がわたしに要求しているかのようです。


「シェリー、検査結果は?」

「命に関わる程では無いけど血圧や脈拍が少し低下しているわ。今日は激しい運動はやめた方が無難と言ったところね。水分吸収の候補は一番が胃の中にある摂取した水分で血液は一番利用候補が低いみたいね」

「そ、そんな事までわかるんですね・・・」

「でも順位が低いからと言っても使われない訳では無いわ。他の水分だって無くなって良い物では無いわ。大量にマ・ペットの治癒薬を使えば失血多量や脱水症状で命を落とす事も考えられるわ。肌もカサついてしまうわよ」

「つまり、使い過ぎは危険という事ですね」

「そういう事」

「シェリー、資料を」


 シェリーさんから測定結果がプリントされた紙を受け取るとラウジーさんわたしを見つめてきます・・・何か問題でも?

<ラウジーちゃんは怖いから睨まれると恐ろしいのです>


「ハル、君はまだ部活動に入っていないみたいだが、何か入部を希望している部は?」

「え? なんでわたしがまだ無所属なのを知っているんですか?」

「クロス=リュウが通学している学校だ。諜報網は引いてある」


 黒須君は警察関係者だから黒須君に何かないように学校での出来事をすぐに把握できるようにしているんでしょう。

 監視カメラやラウジーさんの息のかかった先生もいるのでしょう。

 ラウジーさんは権力もあるみたいですから不可能ではないのでしょう。


「用事が無いのならまたココに来てほしい。時間経過での君の体調を見てみたい。場合によっては提供量を減らすつもりだ」

「え? 減らしてもいいんですか?」


 自分の負担が少なくなるのはありがたいですけどラウジーさんが言い出した量が摂れなくなってしまうのでは?


「体調を崩されて採取できなくなっては意味がない。乳牛だって乳を取りすぎて採取できなくなったら困るのと同じだ」

「でも、警察の方達の役に立てるなら多少は・・・」

「君が体調を崩して成果が出せないなら、君の体内のマ・ペットを殺処分するだけだ」


<ひぃ~ッ! ハルちゃん、絶対に倒れちゃだめなのです~!>

 は、はい・・・。


「それに今日死刑予定の人間が三人もいる。大量に必要になったらその人間を使うしどれくらいで死ぬかそれで実験もする」

「死刑・・・予定・・・?」

「ああ。昨日言った通り、異世界兵器は公にできない存在だ。君のいるこの世界(ロックギア)で異世界兵器を犯罪に使用した者は即処刑と、この世界の各国の代表と会議で決定している」

「裁判無しで・・・ですか?」

「そうだ。もし死刑そのものに反対の意思があるのならその犯罪者達に殺された被害者の遺族全員に死刑の反対の署名を貰うしかない」

「・・・いえ、異論はありません」


<反対しないのですか?>

 死刑囚とは言え人の命で実験というのは良くない事ではあるとは思います。

<ならどうして反論しないのですか?>

 被害者の人達は文字通り大事な人の命をその死刑囚の人達に奪われています。

 死刑を免除という事は被害者の人達の税金なのでその犯罪者達の食事代などが使われるという事でもあります。

 そう思うと優先するのは加害者では無いと思うのです。

 ・・・ただ、


「黒須君はどうなるんですか? 黒須君は出来るだけ相手を殺さないようにしています」


 殺した事があると言っても全ての敵を殺しているわけでは無い筈です。

 その殺していない人達を全て死刑にするって事は黒須君の苦労が全て無駄になってしまいます。

 そんなの、黒須君が可愛そうです・・・。


「クロス=リュウはその事は既に知っているよ」

「え?」

「捕らえた敵がどうなるかは教えている。その事を承知の上で出撃している。直接殺したくないというのもあるが、こちらが生け捕りにするようにするのは先程の死刑囚を新型ウィルスのワクチン制作の実験材料にするなど利用する為で救える命もあるからだ。それに役に立たない死刑囚を刑務所で一生過ごさせるのは税金の無駄だ」

「で、でも黒須君、昨日はそんな事わたしに・・・」

「それはもし君が相手を殺さなければならない事を伝えても戦場に行くと言い出した時の切り札として黙っておいたのだろう。健全な一般人に死刑台に送る作業に関わって欲しくない。そういう人間だ。クロス=リュウは」


 確かにあの場でわたしが「それでも行く」と言った後にこの事実を知ったら確実に心が揺らいでいたと思います。

 直接殺さなくても処刑上に送る手伝いをする・・・犯罪者とはいえ殺しに関わっているのも同然ですし・・・。

 そして黒須君はわたしを巻き込まないようにその汚れ仕事を今後も・・・。


「黒須君、立派ですね・・・。一番辛い筈なのに・・・」

「ああ立派さ。7宝具の使用者に選ばれた理由の1つだ」


 ラウジーさん、よく見ると微笑んでいますね。

<アイちゃんには全然分からないのです>

 本当にしっかり見ないと分からない程わずかにですけど。

 昨日も黒須君の事を紹介する時も弟の自慢をするかのように嬉しそうに見えました。

 黒須君の事を高く評価しているのでしょう。


「ハル、君は聞き分けがいいね」

「?」 


 ラウジーさん、わたしを見ながら黒須君を語る時と同じ表情を?


「君ならクロス=リュウを救う事が出来るかもね」

「わたしが黒須君を救う?」


 一体どういう意味でしょうか?


「ハル、君にしかできない事があるという事だよ」

「???」

「その事についてはいずれ説明するよ。本題に戻るが部活動に入る予定が無いなら帰り道にここに来て欲しい。採取後の君の健康状態もチェックしたい」

「分かりました。急ぎで入部したい部活は今のところ無いので学校が終わったらすぐにここに向かいます」

「それと君のクラスメイトのナガノ=カグヤには昨日の事は口外しないように言っているが、もし誰かに喋っていたならそれも知らせてほしい」

「長野さんが・・・ですか? というか昨日わたしと別の場所に連れていかれた後長野さんはどうなったんですか?」

「特に何もしていない。単に昨日見た事を口外しないよう交渉しただけだ」


 交渉・・・長野さん、脅迫とかされていなければいいんですが・・・。


「・・・もし長野さんが昨日のことを誰かに喋っていたらどうするんですか?」


 ラウジーさんの事だから未成年だろうと容赦なさそうです・・・。

<アイちゃんにも厳しいので怖い事しそうなのです>


「相応の処罰をするだけだ」


 処罰・・・ラウジーさんの処罰は命にも関わりそうです・・・。


「殺すつもりなんですか?」


 わたしと仲良くしてくれた人が殺されるのは嫌です。


「それはナガノ=カグヤ次第だ。まあ、彼女の性格からして口外などしないだろうし、こちら側を脅迫するようでは無いとは思うけどね」

「では何故そのような監視の依頼をわたしに?」

「君はナガノ=カグヤの友人だ。彼女の本心を聞き出すのにはうってつけだ。それに君ならナガノ=カグヤが問題を起こそうとしても止める事もできるからだ」

「つまり、長野さんが誰かに喋る気で、長野さんに死んでほしくなかったらわたしが止める努力をしろって意味ですか?」

「そう思ってもいい」


 な、長野さん・・・どうか誰にも口外していないでくださいね・・・。



・AM8時00分:教室(1-5)

「ふぁあ~~~」


 教室に大欠伸をしながら入ってきたのは黒須君なのです。

 夜間任務明けな上にアイリスちゃんと戦ったから疲れがまだ残っているのでしょう。


「・・・黒場?」


 何故でしょう、黒須君はわたしの足元に注目している気が・・・。


「・・・本物だな」

「え?」

「スカートの下にジャージを穿いている。マ・ペットではなく本物だな」

「そ、それだけで?」

「ああ。あのマ・ペットは戦場にスカート穿いて出撃する痴女精神の持ち主だ。スカートの下にジャージを穿くなんてマトモな行為はできない筈だ」


<あーッまた魔法少女の悪口言ったのです!>

 でもわたし自身が痴女扱いされていなくて少し安心しました。


「ところで黒場、お前が持っていた7宝具は今どこに?」

「ラウジーさんが持っています」


 昨晩、黒須君が帰った後わたしから渡しました。

 黒須君やラウジーさん達に迷惑をかけたのでこれくらいはしないといけませんし・・・。


「そうか・・・」


 何故だか黒須君、ホッとしている気がします。


「昨日俺が捕らえたテロリスト、死んだらしい」

「・・・え?」

「俺に撃たれて地面に転げまわった時に変なウィルスに感染したらしく、病院に運ばれた後、深夜に体調が急変して今日の朝死んだらしい」


 確かに右腕を撃たれて地面に転がった時に負傷部分が地面に何度も密接していましたがそれだけでそういう事態も・・・?


「黒場、戦場に足を踏み入れるって事はそういう事もあるって事だ。ラウジーに来るように言われても断っていいんだ」


 そういうと自分の席に座って何事も無かったかのように授業に使う教科書などを出し入れしています・・・。

 本当は辛い筈なのにわたしの方を気遣って・・・黒須君は強くて優しい人だと痛感させられます。

 それに比べて自分は協力できる立場にあるのに黒須君に協力なくて良いと言われて安心している・・・自分が恥ずかしいです・・・。

<そんな事ないのです! ハルちゃんだって心優しいのです!>

 でも・・・。


「おはようハルちゃん!」


 長野さんが元気よく挨拶してくれていました。


「おはようございます」


 そうだ、まずは昨日の事を聞かないと・・・。


「ハルちゃん昨日は大丈夫だった?」


 と思ったら逆に長野さんの方から聞かれました。


「あの後ハルちゃんソックリな子に連れていかれたけど大丈夫だった? 何かされてなかったの?」

「いえ、特に何も・・・」


 まさかわたしの方が心配されるのは予想外でした。

 長野さんの目にもラウジーさんは恐ろしく映ったのでしょうか?


「そうだったの? なんかあの子、得体の知れない感じだったけど・・・」


 確かにラウジーさんは『利用価値のない者』や『無能な者』には容赦ないって言いそうですしそれを有言実行できる権力も『力』もありますし、長野さんも直感的にそう思ったのでしょう・・・。


「ハルちゃん、本当に何もされていないの?」


 長野さん、すごく心配そうな表情・・・わたしの事を友達だと思ってくれている確かな証拠が見れてすごく嬉しいです。


「はい。わたしは何もされていないです。それより長野さんこそ大丈夫だったんですか?」


 長野さんは完全な一般人、口封じのために何かされていないか心配です。


「ううん、何も。昨日見た事は口外しないでくれって言われただけで特に何も」


 ラウジーさんの部下(?)のシェリーさんに連れていかれたけど暴力とか脅迫とかをされていなくて一安心です。


「それどころか高級レストランの無料チケット貰っちゃった。千葉県にある『ササハラ』っていうイタリア料理店知ってる? 1人一食1万円するんだよ!」


<羨ましいのです! アイちゃんもそうして欲しかったのです!>

 いえ、そうでもないと思います。

<どうしてですか?>

 高級レストランのチケットを贈呈・・・一見、好待遇に聞こえるけど、わたしにはラウジーさんが『これだけ待遇を良くしたんだから問題行動には容赦しない』と遠回しに言っているように聞こえます。

 待遇を良くする事で長野さんが約束を破った時に重い処罰をする理由を作ったのでしょう。

 今朝のラウジーさん、長野さんが誰かに喋っていないか確認してほしいと言ったのはこういう事だったんですね・・・。


「それでね、ハルちゃんもそのイタリアの高級レストラン一緒に行かない?」

「え? わたしもですか?」

「うん。そのチケット家族用で4人まで無料で使えるの。あたしは1人っ子で3人家族だから1人分余るの。ハルちゃんを家族という事にすれば使えると思うからハルちゃんもどう?」

「いいんですか?」

「うん。昨日はハルちゃんに助けられたし、そのおかげで高級料理食べられる訳だし。今週の土曜日空いてる?」


 警察への薬液提供も食事後に提供すればラウジーさんも納得してくれるでしょう。


「ありがとうございます。土曜日は特に予定は無いです」

「じゃあ土曜日はあたしの家族とお昼一緒だね! それとその日は身長的にあたしがハルちゃんのお姉ちゃんだね!」


 何だか長野さん嬉しそうです。

<きっと長野ちゃんはハルちゃんみたいなかわいい妹ができて嬉しいのです>

 それは違うかと・・・。


「よろしくねハルちゃん!」

「はい。長野さん」

「『お姉ちゃん』・・・でしょ?」


 ・・・長野さんの満面の笑みを見るに、どうやらアイリスちゃんの考えが当たっていたみたいです・・・。

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