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傷だらけのバンビーノ  作者: 川崎殻覇
羅刹に挑むは探索者の誉なり
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 この現代社会において、何が一番儲けられると思う?


 株? 不労所得? …違う、今の世界で最も金を稼ぐのに重要さされるもの…それは…ダンジョンだ。


 2030年を発端として、突如として世界にダンジョンという未知の建造物が出現した。


 世界中に現れたダンジョン…最初は悪魔の仕業だ! …だとか、やれ神の裁きだ! …だとか…エセ宗教家が騒ぎ立て世界も混乱に陥ったが、そんなのは最初だけだ。


 ダンジョンの奥に進めば進むほど発見される未知の鉱石やエネルギー源…そして全人類に突如として発言する異能…。

 人々はそんな混乱を食い殺し、世界はダンジョンに夢中となっていた。


 そんな世界で俺…桐崎護はダンジョン攻略学校に入学しようとしていた。


 ダンジョン攻略学校とは、貴重なダンジョン資源を入手する為に国が設立した国立学校だ。


 ダンジョンに潜る為には大体二つの選択肢がある。


 まず俺のように国立学校に入る事…ダンジョン資源の何割かを国に納めなければならないが最初から装備を支給されたり、ダンジョンの構造を知る事ができる。


 二つ目は学校に入らず、フリーランスとしてダンジョンに潜る道…此方は別に資源を国へ納めなくても構わないが、代わりにギルドに加入するのが原則になっている。


 ギルドとは個人が設立する…まぁ会社みたいなものだ、その良し悪しはあるが自由に動けるのは間違いない。


 俺は家が貧乏だからな…貧乏すぎて自分の能力すら詳しく知らない…そんなんで大丈夫か? と思うかもしれないが…まぁ仕方ない、なる様になるだろう。


 ダンジョン攻略学校の公募に受かって本当に助かった…受からなかったら第三の選択肢を選ばなければならなかっただろう。


 第三の選択肢とは…ギルドにも国にも加入せず、どこにも所属しないでダンジョンに潜る者…いわゆる密入者(アウトロー)だな。

 別にダメってわけじゃないが…何処にも所属していないという事実は信用問題に大きく関わる。もしダンジョン資源を持ってきても買い叩かれることになってしまうだろう。


 だが、何の縛りも無い…所謂自由な立場だ。自由というメリットに対するデメリットはデカ過ぎるが、一応選択肢としてはあり得る。

 そういう手合いは大体社会的地位が低い…密入者とはそんな奴らの最後の選択肢だな。


 さてさて…こんなに長く回想しているからには理由がある、俺は今、大遅刻をしている。


 スゥー…と息を吸い込む…焦るな?焦るなよ?俺…。


「ふっ…まさか入学式で遅刻してしまうとはな。…はぁ、どうしよ」


 待ってくれ…言い訳をさせて欲しい…今日は朝から大変だったんだ、婆さんが荷物を重そうに持っていたり、やけに信号に捕まったり…間が悪いって奴だな。


 もう遅刻確定と認識してからは走るのも止め、ゆっくりと歩きながら学校へと向かっていた。


 さて…そろそろ見えるはずだが…お、見えた見えた。


 目の前に映るのはやけに新しさを感じる建物。

 …でも、これらの建材にはダンジョン資源が使われるとかなんとか…まぁ別にこれがあれで、あれがそれで、最新鋭の設備なんだよっ! …と、言われても。

 はぁ、そうなんすか。…としか言えない。だってそういうのに詳しくないからね。


(誰にも見つかりませんよーに…)


 怒られたくないのでそう願いながら校舎に近付く。

 目に見える範囲では校門には誰も居ない。なんなら閉まっている。


 …さてさて。


 迷わず校門をよじ登り、校内に入る。門が閉まってるからね。しゃーなし、しゃーなし。


 先生の姿も見えないし…定番だったら体育館か?


 体育館らしき建物を探すが、見当たらない。というかこの建物全体が学校らしくないので判別が出来ない。

 校舎というよりも会社とかのビルと思った方がいいかもしれないな。


「そこの君!何をしているのですか!?」


「へぁ!?」


 突如として呼び止められて驚いてしまう、振り向くとスーツを身に付けた眼鏡の若い男が…。


「もう入学式は始まっているんですよ! 急いで下さい!」


「お?」


 先生…? に手を引かれ案内される…いやぁ助かった助かった。


 今から入学式会場に入るのは目立つ! …との事なので、俺は壇上の横の隅の方へ案内された。俗に言う舞台袖。


 今は新入生代表の挨拶中らしい。

 いやー、真面目に挨拶して偉いなぁ…それを聞いてる生徒達も偉い! ちゃらんぽらんな俺とは違い、他の生徒達の意識は高い様だ。


 あ、そうそう。そんな意識が低い俺の異能なのどが…。

 公募の時に簡易的な検査はしたんだが、その時に『脅威的な能力!』と出ただけで、詳しい内容は全く知らない。

 簡易的な検査だから仕方ないと思いつつ、詳しい内容はいつわかるんだろうな…とそわそわもしている。


 他の奴はそんな博打の様な気持ちで応募した俺とは違い。この学校に入りたくて仕方ない! って奴らな訳だからな、そら真面目に聞くだろう。


 不真面目な奴らは大体ギルドに入る。別にそういった奴限定ってわけでもないけど。

 ま、俺にもギルドの伝手はなくもないんだが…その伝手は今現在消息不明…それに所属ギルド知らない。それに頼れる気もしない。

 なので、実質伝手なんてないのでこんな博打を打つしかなかったわけだ。


「ふぁ…ぁ」


 欠伸が止まらん…真面目な話はどうしてこうも眠気を誘うかね…。


 そんな時。

 ギッ…! …っと、壇上にいる新入生代表の女から睨まれる…やべ、バレたか?


 …でもまぁバレても別にいいか。

 だって俺は遅刻をしているダメ野郎。きっともうどうしようもない奴だと認定されてるだろ。


 あーいう真面目そうな奴とは関わらんが吉。色々と因縁ふっかけてくるからな…めんどい。


 …

 ……

 ………


 時は流れ、俺を除いた各々が自分の所属するクラスに移動する。

 俺はその前に異能の精密検査をするらしい。先程言っていた細かい検査だ。

 何で俺だけ? という疑問は最も、その答えとしては…他の奴は大体調べてから来てるから、だ。


 …多分それが当たり前なんだろうな、知らんけど。


「全く…手間かけさせないで下さいよ…それでは目の前にある水晶に手をかざしてください」


「へーい…」


 雑な対応をされながらも言われた通りに手をかざす。


 その瞬間水晶が輝く。

 …おぉ…眩しい…浄化されるぅ…。


 内心そうふざけていると…次第に輝きは収まり、水晶に文字が浮かぶ。円に文字が書いてると見辛ぇな…。


 なになに?…えー…なんか四つ書いてるな。異能を発覚するのは最初だと二つでも多いらしいし、これは結構すごいのでは?


 さて、肝心の内容は?

 …一つ、血潮再生。ほっとけば傷が勝手に治るらしいな…多分有用。


 二つ、裂血逆襲。血を流せば流すほど自身の身体能力増加…一個目と合わせると強い? のかもしれん。


 三つ、蝕みの鮮血…俺が敵と認識したものに俺の血液が付着するとその敵が弱体化? するらしい。

 …というか俺の能力全部物騒過ぎないか?これが普通なの?


 最後に……これはなんとも…うん……。


 最後の奴は個人的には必要無い…むしろ要らないが…あるものは仕方ない。割り切るか…。


 教師らしき奴が何やら喜んでいるのが見える。

 そしてどのパーティに入れるかぶつぶつと独り言の様に捲し立てていた。


 怖い、怖いよ? それにパーティは自由に組ませてくれるんじゃないの? 勝手に決めちゃあかんでしょ? 多分。


 先程の雑さは鳴りを潜め、変に口角を上げる教師に辟易しながら、能力測定室から教室に向かう。


 少し歩いた後、ガラリと扉を開ける。

 扉を開けた瞬間、様々な奴からの注目を浴びる。…あん? 何見てるんだおら。


 喧嘩腰で周囲を見る。

 でも、冷静になって考えてみればいきなり教室に入って来た奴がいたらそら見るよな…喧嘩腰止め…!


「桐崎君の席は…あ、新入生代表の隣ですね、移動してください」


 ゲ…マジか。


 さっき関わらない様にしようと決めた女の隣の席…端的に言って最悪だ。


「あー…よろしく?」


 一応挨拶…挨拶は人間の基本だからな。


「………」


 けれどもだんまり…さっきので嫌われたか? …ま、いっか。気にすることでもないし。


 少しの居心地の悪さと、新生活への期待が両方存在し、これからの新生活が不安になる。

 …ん?不安に傾いてない? 気のせい?


 …ま、なる様になるだろ。

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