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第1話 一万円くれるなら何でもします

「高校に入学したばかりでお互いに知っている人は少ないと思うので、最初のHRの時間は自己紹介をしてもらおうと思います」


 先生が教室にいる全員の生徒の顔を見るように視線を動かしながら言った。

 すると、一部の生徒を除くほとんどの生徒があからさまに嫌そうな顔をする。


「ちょっと君たち! そんな嫌そうな顔しないでよぉ……。だって仕方ないじゃん。こうしないとお互の事知れないんだしさ……」


 先生は非常に申し訳なさそうに言いながら、手元のノートに視線を移して言葉を続ける。


「まぁ、そういうことだから……お願いね。あ、もちろん自己紹介しやすいようにフォローは……出来ればするから、えっと、安心してね」


 こんな先生のフォロー、不安しか出来ないのはきっと俺だけでは無いハズ。

 というか、そう信じたい。


「んじゃ、まずは……えっと、どうしよ。とりあえず出席番号順でいいか。いや、良くはないかもだけど決まらない方が良くないと思うから。一番の人、緊張すると思うけど頑張ってね!」


 そう言って女の先生は俺の方を向いてニコッと笑いかけてくる。


「では、うん。おねがい」


 人差し指をピンと伸ばしてこちらに向けられたので、俺はため息を付きながらわざと面倒臭そうに立ち上がった。

 机の並び方も出席番号順だから、俺は一番隅の席になる。

 なので俺は後ろを軽く振り向いてから口を開く。


秋田あきた瀬良せら。見たら分かると思うけど男です」

「……え、それだけ? 何か趣味とか無いの?」

「趣味……あ、読書ってことで」

「雑ッ。……まぁいいや。一人目だから緊張してるんだよね?」


 笑顔で尋ねられ、反射的に首を縦に振る。


「じゃあ最後にみんなに一言どうぞ~。それ言ったら座っていいよ」


 先生はノートに何かをメモしながら、こちらを向かずに言う。

 俺は一回小さく深呼吸してから、さっきより一段階ぐらい大きい声をだしてこう言った。


「俺は陰キャですね」


 教室の空気は、凍りついた地獄のようなよく分からない謎の空気になった。

 ただ、俺の一言でしらけた事だけは確かだろう。


 何故こんな事を言ったのか、自分でも良く分からない。

 でも自己紹介は正直に言っておいた方が良いので、別に問題は無いハズ。


「えぇーと……え? ……終わりでいいですか?」


 そう先生に聞いてみると、相手からの返事が返ってくる前にどこからかは分からないが小さな拍手が聞こえてくる。

 それに釣られるようにして、教室にいる他の生徒も拍手をし始めた。


「ありがとうね。トップバッター」

「あ、はい」

「じゃあ次は――――」


 そうして次々と先生によって強制的に自己紹介をさせられていった。


 




 あれから45分ほど立ち、遂にやってきた最後の自己紹介。

 自己紹介するのは、綺麗な艶のある黒い髪に宝石でもはまっているのではないかと思うほど綺麗な瞳を持った、スタイルの良い、人一倍存在感のある美少女だった。


 その子が最後に言った一言は衝撃的なものだった。


『10000円くれるなら何でもします』


 教室にいる男子達は、きっと冗談だとか思っているのだろうけど、俺には彼女は冗談を言っているようには見えなかった。

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