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決意を改め、二年が経過した。
僕はある悩みができた。
普段以上に僕は屋敷を彷徨き始め、耳を生かして色々情報収入するために行動した。
こういった行動は年相応の……はず。屋敷の使用人たちの会話から何かしらの情報を得られる可能性あると思ったからだ。
結果は収穫なし。
でも、体力をつけるという目的もあるため、別にいいだろう。
でも、その分僕の面倒を見ているシンが少し大変そうであった。
さて、話は逸れてしまったが、最近の悩みについてだ。
将来、安定だと思っていたのも束の間であった。
その原因というのが……。
「キアン様……何故今日の目安が終わっていないのですか?」
「いやーね……あはは。……申し訳ない」
父上である。
書斎への出入りを始めてしばらく経ち、ある程度仕事の雰囲気がわかり始めた頃、ふと、僕自身の住んでいる屋敷の内装が気になった。
ここ数日間は父上の書斎に行くことなく、シンと一緒に屋敷の探検をしていた。
だが、それが原因なのか、仕事の進みが遅くなり、遅れが生じてしまった。
僕がシンを連れ回してしまっているのと、父上が僕が書斎にこなくなってしまったから仕事のやる気低下が要因だ。
前者はともかく後者はどうなのかと思うが、原因ば僕だ。
シンが僕の世話に時間を割いているためだ。
ただでさえ、父上は僕が書斎にいる時だけは、『頑張るぞ』と呟きながら仕事をし、進みも早いので、いいのだが、僕やシンがいないから一人で仕事をしている。
このままではまずい。
そして現在、たまたま書斎に来たのだが、父上はシンに説教を受けていた。
「何故早くご相談してくださらないのですか?まだ、良いですが、これ以上遅れが生じてしまっていたら取り返しがつかなくなっていましたよ」
「……本当に申し訳ない。だが、一つ言いたい。……この仕事量を一人でやるのは限界があって」
「ならなおさら相談してくださいよ!」
「……」
僕は黙って二人のやりとりを見ていた。
どうすれば良いのか考えている。
ここ最近、僕がシンを連れて行動することが原因。
今初めて父上の書斎に入ったとき、シンと父上の会話を思い出すと、シンは僕の面倒を見て、仕事の手伝いもしている。
ここ最近シンは父上の仕事の手伝いをしていないし、シンはもともと父上の専属執事。父上は過保護らしく最も信用しているシンに僕の世話を頼んでいる。
このままでは僕の行動が制限されるし、仕事が回らない。
だから、僕は思考し、一番の解決策を導き出す。
よし、僕の専属執事を探そう。
屋敷を歩き回って候補は一人見つけてある。
この前、僕のせいで罰を喰らってしまったあの人だ。
そのためにはまずは執事が主人を叱り続けるっていうカオスから脱出しなければならない。
僕は状況打破のための一言を言った。
「ちちうえ!」
「いや、だからわるかった……何だいアレン?」
「む……」
父上は呼んだだけで弱気の声音から一瞬で威厳のある声をし、シンは僕を少し睨む。
父上……もう僕に威厳あるところを見せようとしても手遅れですよ。
それにシン、話の途中で入り込んでしまって悪いけど、その目は子供にしちゃいけないものかと……。
色々ツッコミどころ満載だが、僕もここにいるのはまずいと思い。
「ぼく、ははうえのところいきますね」
「え……」
僕が言ったあと、父上はショックを受けたのかしょぼくれた。
「キアン様、私はアレン様をユリアン様の元へ連れて行きますので、作業に取り掛かっていてください。すぐに戻りますので」
「……わかったよ」
あーあ、なんか、僕の発言で父上、落ち込んでしまっているな。
多分今日仕事捗らなさそうだなぁ。
しょうがない。人肌脱いでやるか。シンも早く仕事に入りたそうな感じだし、こうなったのは僕が原因だ。
少しくらい役に立たないと。
それに、僕はこれから一人で行動したいため、シンが一緒ではまずい。
「シン、ぼくひとりでいけるからだいじょうぶだよ!」
「……承知しました。お気をつけて」
「うん」
シンは僕の言葉に少し驚きはしたが、1秒でも仕事を始めたいのか、すぐに了承してくれた。
あとはしょぼくれている父上に対して。
これは対処が簡単だ。
「ちちうえ!おしごとがんばってください!」
僕は満面な笑顔でそう言って書斎を退室した。
『シン……早く終わらせようか』
『……はぁ、承知しました』
うん、どうやら大丈夫そうだ。
父上は単純だ。
ここ最近扱い方がわかった気がした。
父上の書斎を出て、僕は母上の場所へ向かうことはなく、僕の専属執事候補の元へ向かっていた。
父上の書斎は2階にあるため、階段を降りて1階の隅にある物置小屋へと向かった。
僕の目的の人物は一ヶ月前、父上の仕事を初めて見学した日にサボりがバレて現在、罰を喰らった人物。
使用人のウェルだ。
サボりがバレてから、ウェルはシンからお叱りを受け、二週間ほど前に罰として物置小屋の掃除するよう言い渡された。
ユベール家の屋敷物置は数えていないがわかっている範囲で5部屋以上はある。
しかも、その一つの部屋の広さは部屋によって違うが、一番広いので縦横約10メートル、高さにして3メートルほどの部屋だ。
そこに使わなくなった家具や骨董品、本などが詰められる。貴族間との付き合いでいただいたものなどを保管するのにそれくらいの部屋がいるらしい。
そんな部屋の掃除をウェルはまじめに一人でしている。
しかも、罰を言い渡されたその日からずっとだ。
この罰は僕が原因でもあるが、逆に僕自身がウェルを認めた要因でもある。
倉庫は基本掃除は半年に一回で現在、ウェルはシンから言い渡されて一人で掃除をしている。
でも、これはウェルにとっては少しかわいそうだが、罰としてはぴったりなのだろう。
もともと掃除中のサボりで罰を喰らうことになったウェル。
埃まみれの広い倉庫を一人で掃除するには負担が大きすぎる。
普通の人なら途中で折れてしまうほどだ。
でも、ウェルは文句を言いながらも未だに続けているのだ。
まじめで責任感が強い。
これはどこの領にもあることなのだが、平民が通うための学校が存在する。
日本で言う義務教育のようなものだ。6歳から成人の15歳までの平民の子供は通わなければいけない。
優秀な成績を収めている生徒は領主に報告がいく。
優秀な生徒にはそれ相応の就職先がある。例えば優秀さを買われて商会で働く者、直接領主の屋敷の使用人に雇われるもの。
勉強を頑張り、優秀な成績を収めればそれ相応の未来があるのだ。
ウェルもそのうちの一人で、学生時代の優秀さを買われ雇われていて、シン自身の評価も高い。
だからこそ専属にしたいと思った。
それに、もう一つ目的があるとすれば、僕が素で接することのできる人が欲しい。
あまり人を信用しすぎるのはいけないと思うが、話せる範囲で、僕自身が行動しやすいように立ち振る舞いができるよう、それを支えてくれる人物が必要だと思った。
ぶっちゃけ幼い子供の演技を続けるのが我慢できない。
『はぁ………』
「お、いた」
父上の書斎を出て移動すること五分、目的の人物のため息を発見。
「さて……引き受けてくれるかな?」
僕は深呼吸し、部屋をノックした。
読んでいただきありがとうございます。
次回は今日中に投稿します。
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