9話 黒猫団
「さっそくで悪いんだけど、お願いしたいことがあるの」
「は、はひぃ……」
ミゼリーさんは妙にツヤツヤしていて。
一方の私は、さんざん抱きしめられたことでげっそりしていた。
精気を吸われた?
サキュバス?
「実は最近、盗賊の被害に悩まされているの?」
「盗賊……ですか?」
盗賊は、どこにでも掃いて捨てるくらいいる。
討伐しても討伐してもいなくならないから、スライムのように分裂をしているのかな? と、一時期真剣に考えたことがある。
「これも恥ずかしい話なのだけど……」
「恥ずかしい話!」
なぜか、シンシアがわくわくした表情に。
「その盗賊は、元冒険者で構成されているらしいの」
「それって……」
「ウチから逃げ出した冒険者よ」
はあああ……と、ミゼリーさんは盛大なため息をこぼす。
「アクエリアスから逃げ出したはいいものの、そんな冒険者、他所で受け入れられるわけがないわ。依頼を請ける請けないは確かに自由だけど、街の危機に立ち向かわないで逃げるなんて、いざって時は保身に走るって証明しているようなものだもの。誰も信用なんてしない」
「なるほど……」
なんとなく話が見えてきた。
アクエリアスを捨てた冒険者は他所の街へ。
しかし、そこで門前払いを食らい、行き場を失う。
そして、簡単に稼ぐ方法として盗賊に堕ちた……たぶん、こんなところだろう。
「騎士団に頼んでもいいけど、そうなると、ウチの立場は丸潰れ。まあ、面目なんて気にしないんだけど……これ以上ミスを重ねると、ギルドの取り潰しさえあるわ。それだけは避けたいの」
「それで、私に?」
「ええ。どうしようもなくなったら、街の安全が第一だから騎士団に頼むけど……でも、アズちゃんとシンシアちゃんなら、きっとなんとかなると思うの! もちろん、私も微力ながら協力するわ」
「はい、わかりました」
「……協力してくれるの?}
「盗賊なんて放っておけませんからね。街の人の笑顔を奪う人は許せません!」
「ああもうっ、アズちゃあああああん!!!」
「またこの展開!?」
――――――――――
翌日。
準備をした後、私達は盗賊……黒猫団のアジトへ向かう。
「この先にある小屋をアジトにしているらしいわ」
スタッフとローブ。
それと、色々なアイテムが入ったポーチ。
完全武装したミゼリーさんの案内で、森の中を進む。
「どうして、こんなところに小屋が?」
「猟師のために作られたものなのよ。でも、それを奪い取って……」
「アジトにした、っていうわけですね」
許せない人達だ。
猟師さんにも生活があるのに、それを奪うなんて。
「でも、どうして黒猫団っていう名前なんですか?」
「私もよくわからなくて……」
「アズ! ミゼリー!」
隣を歩くシンシアが鋭い顔に。
スンスンと鼻を鳴らして、私達に警戒を促す。
「嫌な匂いがするよ」
「ミゼリーさん、敵襲かもしれません」
「そんな……いったい、どうして私達のことが?」
ミゼリーさんは困惑しつつ、スタッフを構える。
私も、いつでも動けるように足に力を込めた。
「よお、誰かと思ったらギルマス様じゃねえか」
ほどなくして、複数の男が現れた。
十人以上。
いずれも武装していて、ニヤニヤと笑っている。
「こんなところで会うなんて奇遇だな」
「再会を祝して、楽しくて気持ちいいことでもしないか?」
男達が下品に笑う。
楽しくて気持ちいいことって、なんだろう?
「あなた達、バカな真似はやめて、今すぐ投降しなさい。そうすれば、重い罪に問われないように口をきいてあげる」
「「「ぎゃはははっ!!!」」」
男達が一斉に笑う。
「おいおい、この状況わかってんのか? 俺らに命令できる立場じゃねえだろ」
「ってか、あんな惨めな生活に戻ってたまるかよ。盗賊、最高!」
「自分の心配をしたらどうだ? この人数に勝てるとでも」
なかなか不快な人達ですね。
笑い声が響く度、イライラッとしてしまいます。
「妙なおまけが一緒にいるが、そいつもかわいがって……や……る?」
ようやく私とシンシアに気づいた様子で、一人の男の顔色が変わる。
あ。
この人、私と腕相撲をして負けた人だ。
「ひぃ!? あの時のガキと最強種!?」
「な、なんでこんなところに……」
「ガキ相手にうろたえるな、みっともねえ!」
他にも動揺する男がいたけど、他のメンバーに一喝される。
「馬鹿力だろうが最強種だろうが、この人数差だ。俺らの勝ちは決まりだろ?」
「あ、ああ……そうだな、そうだよな」
「へ、へへへ、あの時の恨み、晴らしてやるよ……泣くまでかわいがってやる」
「うわ、お前ロリコンかよ」
……この世界、ロリコンが多いのでしょうか?
勇者も盗賊もロリコンとか、なかなか絶望的な絵柄ですね。
「それに、俺らにはお頭がいる!」
「お頭……?」
「へへ……お頭、出番ですよ!」
「ふふん、任せなさい!」
そう言って姿を見せたのは……
「猫霊族!?」
猫耳と尻尾を持つ女性だった。
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