4話 あれ……?
どうやら、シンシアは人型と犬型、自由に切り替えることができるらしい。
よかった。
これで、いつでも、もふもふできる……じゃなくて。
人型のシンシアは目立つから、犬型に戻ってもらった。
犬耳犬尻尾が生えた種族なんて知らないからね。
騒ぎになったら困る。
「とりあえず、冒険者ギルドに行きますよ」
「オンッ!」
シンシアは元気よく吠えて、トテテテと私の後ろをついてくる。
かわいい。
「こんにちは」
冒険者ギルドに入ると、中にいた冒険者が一斉にこちらを見た。
そして、嘲笑を浮かべる。
世間の私の評価は、勇者パーティーを追放された役立たず。
違う、私はなにもしていない!
アリオス達の方が悪いのに……!
そう叫びたいけど、でも、なにも言えない。
真実を話したら報復されるかもしれないし……
それに、どうせ私の言葉を信じてくれる人はいない。
「えっと……」
掲示板の前に移動して、依頼用紙を順に見る。
シンシアの故郷を探したい。
そのためには、こんな小さな街にいたらダメだ。
もっと大きな街へ移動しないと。
そのために、まとまった旅費が必要なのだけど……
「……よし! ちょっと無茶をしてでも、がんばりましょう!」
魔物の群れの討伐。
ソロだとやや厳しいけど、報酬は良い。
この依頼を請けることにしよう。
依頼用紙を持ち、受付へ。
「すみません、この依頼を請けたいんですけど……」
「ん? ……あぁ、そりゃダメだな」
「え? ど、どうしてですか? 必要条件は満たしています!」
「でも、お前は『役立たずのアズ』だろ? 勇者パーティーを追放された」
「……っ……」
その言葉が矢のように私の胸に突き刺さる。
「役立たずに依頼を任せても、失敗するのがオチだろ。どうせ。そんなことになったらウチの信用に関わるからな。許可できねえよ」
「失敗なんてしません! 私は……!」
「はっ、追放されたヤツの言葉なんて信用できるか」
受付の男性が嘲笑する。
それを見て、周囲の冒険者達も笑う。
私は……
「グルルル……!」
私の様子を見て、後ろをついてきたシンシアが唸る。
私のために怒ってくれている……?
「……ありがとうございます。私は大丈夫ですよ」
「キューン……」
うん。
この子がいればがんばることができる。
前向きになることができた。
改めて、受付の男性と話をする。
「必要条件を満たしているのに拒否するのは、違反になりませんか? このこと、他のギルドに報告してもいいんですよ?」
「てめえ……」
「そんなに不安だっていうのなら、テストをしてください」
「テストだぁ?」
「私でも問題がないか、実力を測ってください。それに合格すれば、ちゃんと依頼を請けさせてください」
「……そいつはおもしろい話だな」
話を聞いていたらしく、一人の冒険者がやってきた。
筋骨隆々の大男で、ニヤリと笑みを浮かべている。
「俺が嬢ちゃんの力を測ってやるよ。そうだな……腕相撲でどうだ? シンプルでわかりやすいだろう?」
「……はい、構いません」
「それともう一つ、賭けをしないか? 嬢ちゃんが負けた場合は、俺の女になれよ。へへへ、かわいがってやるぜ」
この街は、ロリコンしかいないのでしょうか……?
「なら、私が勝った場合はお金をもらいます」
旅費はたくさん必要だ。
「いいぜ。なら、さっそく勝負といこうか」
「……はい」
テーブルに肘をついて、男と手を合わせる。
男は丸太のような腕をしていた。
当たり前だけど、私よりも腕力は上。
勝利の可能性は限りなく低い。
でも、技術をうまく使えばゼロパーセントじゃないはず。
よし。
がんばるぞ!
「レディ……」
受付の男性が審判を務める。
「ゴー!」
ゴガァッ!!!
「ぎゃあああああっ!?」
男の腕を砕いて、ついでにテーブルも砕いて……
私の勝利。
「……あれ?」
なんで、私にこんな力が……?
「す、すげえ……!? あの役立たずのアズに、あんな力が……!?」
「おかしいだろ、な、なにかのイカサマで……」
「イカサマでテーブルが砕けるかよ。と、とんでもない力を隠していたんだな……」
「やべえ、俺、この前あいつをバカにしちまったよ……」
周囲の冒険者達もざわざわしていた。
「アォオオオーーーンッ!!!」
呆然とする中、私の勝利を告げるかのようにシンシアが吠えるのだった。
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