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27話 シンシアの戦い

 シンシアは街の正門の前にいた。


「……」


 腕を組んで、街道の彼方を睨んでいた。

 アクエリアスには誰一人通さないと言うかのように、仁王立ちで構えていた。


 そんなシンシアは、アズの言葉を思い返していた。


「いいですか? 次々と策が失敗したら、盗賊達は絶対に焦ります。冷静にものを考えることができなくなって、稚拙な行動に出るはずです。たとえば……数にものを言わせれば、街の一つや二つ、落とせるに違いない。だから突撃すればいい……って」


 アズは未来を見通していたかのように……

 その言葉が現実のものとなる。


 隠れることをやめた盗賊が一人、また一人と姿を見せる。


 どこにそれだけ隠れていたのか。

 そうやって呆れてしまうほどの数で、総勢、三十人くらいが現れた。


「最初からこうしていればよかったんだよな。ちまちまとした策なんて、めんどくせえ」

「おう、そうだな。ほれ見ろ。騎士も冒険者もいねえ、ただのガキが……って、最強種……なのか?」

「見たことねえ種族だけど……まあ、最強種だとしても問題はねえ。これだけの数に勝てるヤツなんていねえさ」

「それに、見た目はいいな。へへ、殺すなよ? その前に、たっぷりと楽しめそうだからな」

「……」


 盗賊達のゲスな会話を耳にしても、シンシアはまったく表情を変えない。

 ただ、今更動じることはないだけで、感情の変化がないわけではない。


 彼女の瞳は怒りに燃えていた。


 ぶっちゃけてしまうと、シンシアは、アクエリアスのことはどうでもいい。

 人間が嫌いなわけではないけど……

 かといって、好きでもない。


 普通だ。


 でも、アズのことは大好きだ。

 迷子になっていた自分を拾ってくれて、優しくしてくれて、笑顔を向けてくれて……


 家族のように想っている。

 姉みたいに慕っている。


 そんなアズの大事なものを奪おうとしている盗賊。

 許せるわけがない。


「わふー……ここは通さないよ!」

「「「っ!?」」」


 ビシッと言い放つと、盗賊達はわずかに怯んだ。


 そのまま回れ右をして、逃げ出すのが正解なのだけど……

 鈍感な彼らは、正解に至ることができない。


「へ、へへ……これだけの数を相手に、どう戦うっていうんだ」

「生意気なヤツだな。たっぷりかわいがって、調教してやるぜ」

「いくぞ、野郎ども!」

「「「おぉっ!!!」」」


 三十人以上の盗賊が一気に突撃してきた。


 それは、まるで津波のように。

 人間に抗うことなんてできない。

 ただ飲み込まれるだけだ。


 しかし……


 ここにいるのは、最強種。

 人間を大きく超えた、強靭な種族だ。

 故に、シンシアに常識なんてものは通用しない。


「うー……わんっ!!!」


 吠えて、突撃。

 大きく振りかぶり……

 勢いよく叩きつける!


 ドゴォオオオオオッ!!!


 地面に大穴が空いた。

 地震が起きたかのように大地が割れる。


 そして……

 砕け散った大地が、周囲に矢のごとく降り注ぐ。


 それは、ただの土だ。

 しかし、何度も何度も踏み固められているため、鉄と同等以上の硬度がある。


 そんなものが高速で飛来すれば、どうなるか?


「「「ぐっ、ぎゃあ!?」」」


 土の破片をまともに浴びた盗賊達、十数人は、悲鳴を上げて倒れた。


 全員、うめき声をあげつつ震えているところを見ると、生きている。

 死んではいないけれど……

 最低、骨を折る以上の怪我をしている様子なので、誰も立ち上がることができないでいた。


「……は?」


 一瞬で半分の仲間がやられた。

 ありえない光景を受け止めることができず、残りの盗賊達は、ついつい唖然としてしまう。


 ……それが大きな隙となる。


「わふー……んっ!」


 ふっと、シンシアの姿が消えた。

 幻だったかのように、ふんわりと消えてしまう。


「……は?」


 再び、盗賊達が唖然とした。


 そんな彼らの横方面から、ザッ、ザッ、ザッ……と、土を蹴る音が近づいてきた。

 シンシアだ。

 彼女は視認できないほどの速度で動いて、一瞬で盗賊達の側面に回り込んだ。


 そして、死角から強烈な一撃を叩き込む。


「わんっ!」

「ひぐぅ!?」


 最初の一人は、真横に殴り飛ばされた。

 重力が変わったかのように、十メートル以上を飛んで……

 木の幹に激突して、ようやく止まる。


 意識を保っていられるはずがなくて、もちろん昏倒していた。


「わんっ!!」

「ぎゃあ!?」


 二人目は空高く飛んだ。

 そのまま星になった。


「わんっ!!!」


 三人目は……以下、省略。


 四人目、五人目、六人目……

 次々と盗賊が悲鳴を上げて空を舞う。


 誰だ、これだけの数がいれば敵はいないと言ったヤツは?

 誰だ、ただの少女だと言ったヤツは?


 盗賊達は吹き飛ばされつつ、シンシアと相対したことを心底後悔した。


「わふー」

「あ、あ……あああ……!?」


 最後の一人となり、盗賊は、半分、恐慌状態に陥った。


 それも仕方ない。

 三十と少しの仲間が、一分とかからずに壊滅させられてしまったのだ。

 悪夢以外の何者でもない。


「こんな……バカな……俺達が、こんなガキに……」

「ガキじゃないもん」


 シンシアは、ぷくーっと頬を膨らませた。


「私は、シンシア! 誇り高い最強種で、アズの……」

「ひっ!?」

「忠犬だよ!!!」


 最後の一人を殴り飛ばして、戦闘が終了する。


 シンシアは傷一つない。

 それどころか疲れてすらいない。


 一方、盗賊達は一人残らず叩き潰されて……

 それでいて、手加減されて、命を失っている者はいない。


 圧勝だった。

 子供と大人。

 アリとゾウ。

 まるで相手にならない。

 これこそが最強種の力である。


「わふー、私、がんばった! これなら、アズに褒めてもらえるかな? えへへ」


 ぶんぶんと尻尾を振りつつ、嬉しそうに笑うシンシアは忠犬そのものだった。

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◆ お知らせ ◆
新作を書いてみました。
【家を追放された生贄ですが、最強の美少女悪魔が花嫁になりました】
こちらも読んでもらえたらうれしいです。


もう一つ、古い作品の続きを書いてみました。
【美少女転校生の恋人のフリをすることにしたら、彼女がやたら本気な件について】
現代ラブコメです。こちらも読んでもらえたらうれしいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 「私は、シンシア! 誇り高い最強種で、アズの……」 「ひっ!?」 「忠犬だよ!!!」 >> ヮ、ワンコと言っちゃいましたね。シンシア でも、そこがいいですね(*^_^*)
[一言] 今から盗賊のアホ共にソラの料理を食わせてやりま~すw ソラ「今からうさぎを解体(バラ)します^^」 キワミいいいいいいいい!!?><
[一言] 最強種を見て勝てると思う盗賊たちには敬意を表してソラの料理を進呈しましょうw
2022/08/11 18:30 退会済み
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