24話 マッチポンプ
「ぎゃははは! 酒はうまいし、綺麗な女もいる。最高だな!」
盗賊団のアジトになっている洞窟で、大勢の男達が騒いでいた。
酒の入ったグラスを片手に。
もう片方の手は、さらってきた女性を強引に抱き寄せている。
誰も彼も気分よさそうに騒いでいて、酒と場の雰囲気に酔っていた。
「……」
そんな中、盗賊団の頭領は静かに酒を飲んでいた。
下品な笑い声を響かせることはなくて、女を抱くこともなくて、黙々と酒を飲んでいる。
そんな彼のところへ、酒に酔い、千鳥足の団員がやってきた。
「お頭ぁ……ありがとうございやす」
「突然、どうしたんだ?」
「お頭が、騎士団を追放されて行き場をなくしていた俺達を拾ってくれた。いやぁ……本当に感謝していますよ。おかげで、うまい酒は飲めるし女にも困らない」
「……そうか」
「連戦連勝! 冒険者や騎士団も情けなく逃げるばかりで、俺達を止めることはできえねえ!」
次第に熱が入ってきたらしく、団員の声は大きくなる。
しかし、頭領はあくまでも静かに酒を飲んでいた。
「おかげで、良い思いをさせてもらってますぜ、へへへ」
「よかったな」
「俺達は無敵ですぜ! 誰も逆らうことはできねえ、なんでもやりたい放題だ!」
団員の声はどんどん熱を帯びていく。
「いっそのこと、アクエリアスに攻め込みませんか?」
「……」
「俺らなら、なんでもできる! あの街を支配して、俺達が……」
「そこまでにしておけ」
静かだけど、重い声が響いた。
「街に攻め込むのは、いくらなんでもやりすぎだ。そんなことをすれば、中央から騎士団や上級の冒険者が派遣されてくる」
「大丈夫ですよ、俺達なら、どんなヤツでも……」
「やめておけ、と言ったはずだ」
「っ!?」
団員がビクリと震えた。
頭領の冷たく鋭い目。
それに射抜かれた団員は、言葉を紡ぐことができない。
勝手に足が震えて、高ぶっていた心が急速に冷めていく。
「何事も、ほどほどが一番だ。そうだろう?」
「そ、そうですね……はい」
「わかったのなら、それでいい。宴を楽しむといい」
「は、はい……つまらない話を聞かせて、すみませんでした」
団員はへこへこと頭を下げつつ、広場へ戻った。
その背中を見て、頭領はやれやれとため息をこぼす。
「騎士団を追放されたヤツや、傭兵くずれのヤツを集めたから、連戦連勝は当たり前だが……まずいな。そのせいで、妙な自信がついてしまっている」
今の団員のように、街に攻め込もう、と考えている者は他にもいるだろう。
しかし、そんなことをしたら終わりだ。
街の占拠に成功しても、その後がない。
王都から派遣される精鋭部隊によって、確実に鎮圧されてしまうだろう。
とはいえ、一度ついた火はなかなか消えない。
団員達の無謀な自信は、これから、もっと増長していくだろう。
そして……いつしか破滅を迎えるだろう。
「巻き込まれるのはごめんだ。そうだな……そろそろ頃合いかもしれないな」
盗賊団の頭領……アッガスは、そうつぶやいた。
勇者パーティーの一員であるアッガスが、盗賊団を率いている。
アズのように追放されたわけではない。
彼は身分を隠して、その上で、盗賊団を作り上げていた。
その目的は、悪としか言えないようなもの。
名のある盗賊団を自分で作り出して……
それなりに有名になったところで、自分で討伐する。
報奨金が手に入る。
名誉が手に入る。
なにもかも良いことだらけだった。
「アリオスが考えた遊びだが……ふっ、なかなか悪くない」
盗賊団を作り出すということは、たくさんの人が被害に遭うということ。
血と涙が流れるということ。
それを理解していながら、アッガスは、悪くないと言ってしまう。
彼の性根が現れている言葉だった。
「ただ……ふむ。そうだな、街を襲うのも、案外悪くないかもしれないな」
本気で街を攻め落とすつもりはない。
そんなことすれば破滅だ。
ただ……
街を襲う盗賊。
それは、最高の舞台になるのではないか?
そこで盗賊を叩けば、自分達は街を救った英雄だ。
「いいぞ、悪くないな。がんばって悪事を働いてくれ。俺の栄光のために」
アッガスはニヤリと笑い、酒をもう一口、煽った。
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