13話 ごめんなさい
「こんにちは」
歓迎会の翌日。
私達は冒険者ギルドのミゼリーさんの部屋を訪ねた。
よくわからないけど用があるらしい。
また依頼でしょうか?
「いらっしゃい、待っていたわ」
「あれ?」
部屋にいるのはミゼリーさんだけじゃなかった。
複数の男性や女性がいて……あれ?
どこかで見たことのある顔だ。
「これ、どういう状況ですか?」
「アズちゃんは、こいつらに見覚えは?」
「えっと……」
すみません、思い出せません。
そんな私の反応を見て、ミゼリーさんは苦笑した。
「そっか。アズちゃんからしたら、そんなものなのね。余計なおせっかいだったかしら?」
「えっと……?」
「こいつらは、この街にいた元冒険者よ」
「……あっ」
思い出した。
ここのギルドで何度か見かけたことがある。
……ついでに言うと、パーティー参加を断られたこともある。
「逃げ出した連中が戻ってきて、またここで活動させてほしい、って頼んできたんだけど……都合がいい話よね」
「「「うっ」」」
ミゼリーさんに睨みつけられて、彼ら、彼女らは縮こまる。
「でも、今は人手が足りないから考えようかと思ったんだけど……よくよく話を聞いてみたら、こいつら、アズちゃんに嫌がらせをしていたみたいじゃない」
「嫌がらせ?」
「嫌がされされている、っていう自覚がなかったのね」
ミゼリーさんは、もう一度、冒険者達を睨む。
「この連中、アズちゃんのパーティー参加をずっと拒んでいたでしょ?」
「はい」
「それ、裏で結託していたのよ。アズちゃんはパーティーに入れさせない、ずっとソロにさせてやろうぜ……って」
「むっ、ご主人様にそんなことを……!」
「お姉さまに対する無礼、万死に値しますね」
「お、落ち着いて?」
シンシアとスズカが本気の殺気を放つので、慌ててなだめた。
「あと、陰口を叩いて、悪評を流して……そうそう、決闘も挑まれたのよね? どれもこれも、明確なルール違反よ。冒険者がどうとかじゃなくて、それ以前に、人として失格ね」
「「「う……」」」
容赦ないミゼリーさんの言葉に、冒険者達がさらに縮こまる。
「こんな連中、戻ってきても迷惑になるだけ。っていうか、冒険者活動を続けるなんて認められないわ。だから、資格を剥奪するところなのよ」
「そんなことに……」
「ただ、その前に、ちゃんとアズちゃんに謝ってほしくて。でも、アズちゃんはまったく気にしていなかったのね」
気にしていないと言えば嘘になるけど……
ぶっちゃけ、忘れていました。
今はシンシアとスズカがいるから。
二人のおかげで毎日が楽しくて幸せで……
嫌な思い出なんて消えていた。
「余計なおせっかいだったみたいね」
「いえ、そんなことはないです」
ミゼリーさんは好意でしてくれたことなので、それを否定したくはない。
「じゃあ……ほら」
ミゼリーさんに促されて、冒険者達が前に出た。
「そ、その……」
「あの時はすまなかった!」
「勇者パーティーに子供が参加してて、そのことに嫉妬していたの……本当にごめんなさい」
頭を下げて、謝罪の言葉を並べる。
それらを受けて、私は……
「はい、許します」
「「「え?」」」
謝罪を受け入れると、冒険者達は目を丸くした。
「どうしたんですか、そんなに驚いて?」
「いや、だって……」
「俺達、あんなにひどいことをしたのに、そんな簡単に……」
「確かに、簡単といえば簡単ですけど……でも、許すっていうのは本心ですよ?」
「どうして、私達のことを許してくれるの……?」
「簡単です」
深い考えなんてない。
誰でも思いつくような、そんな単純な答え。
それは……
「ケンカをするよりも、仲良しさんが増えた方がいいですからね」
「「「……っ……」」」
にっこりと笑うと、冒険者達は顔を大きく歪ませた。
そして、再び頭を下げる。
今度は腰を直角に曲げるほど、大きく。
さらに強い口調で言う。
「すまなった! 本当に……本当にすまない!!!」
「俺はバカだった! こんな子に、天使みたいな子にひどいことを……!」
「私は、もう、なんていうことを……ごめんなさいっ!」
「あ、あれ?」
謝ってほしいわけじゃないのに、なぜか、さらに強く謝罪をされてしまう。
本当に、そんなに気にしていないのですが……うーん?
「アズ、仲直りできてよかったね!」
「ふふ、さすがお姉さまです」
……なんてことを言う二人だけど、私がこうしていられるのは、シンシアとスズカのおかげだ。
今の結果は二人が導いてくれたもの。
だから、私の方こそありがとう。
「それじゃあ、謝罪が済んだのなら、あんた達はとっととの他所の街へ……」
「待ってください」
「ん?」
「その……なんとか、許してあげることはできませんか? 冒険者のままでいられるようにできませんか?」
今度は、ミゼリーさんが目を大きくした。
「アズちゃんは、自分を虐げてきた相手を助けるのかしら?」
「助けるとか、なんかだいそれた感じですけど……すごく困っちゃうと思うので、それはそれで、見過ごすのは嫌なんです」
「……アズちゃん……」
「それに、えっと……ほら。アクエリアスは、冒険者がまったく足りていないじゃないですか? なら、今はみんなで力を合わせるべきですよ!」
……そんな私の言葉が届いたのか、ミゼリーさんは苦笑した。
「まったく……本当に、アズちゃんには敵わないわね」
「それじゃあ……」
「聞いての通りよ。アズちゃんから最大級の温情がかけられたわ。あんた達の冒険者資格の剥奪は取り消すわ。この街にいてもいい。ただ、ランクは最低のFからやり直しよ。それでいいわね?」
「あ、ああ、もちろんだ! 初心に返ってやり直す、やり直してみせる!」
「こんな俺達に情けをかけてくれるなんて……うぅ、嬢ちゃんは、本当に天使みたいな子だな」
「というか、天使よ……よく見れば、こんなにかわいいし。あぁ、天使様……!」
「あ、あれ……?」
なぜか、私が天使扱いされることになってしまうのだった。
それはともかく……
みんな、仲良しになったみたいでよかった。
うんうん。
やっぱり、みんな笑顔が一番ですね!
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