12話 ご主人様とお姉さま
こんにちは、アズ・アライズです。
12歳ですが、冒険者をやっています。
そんな私ですが、最近、ちょっとした変化がありました。
二人の最強種と出会い……
その子達の『ご主人様』『お姉さま』になりました。
……うん。
ちょっとしたことではありませんね。
とんでもないこと、でした。
ただ、スズカのことは歓迎したいと思います。
お姉さまというのはちょっとよくわからないけど、それでも、大事な仲間だから。
と、いうわけで……
――――――――――
「歓迎会です!」
「「わーーー!!!」」
泊まっている宿の一階、食堂兼酒場の一角で二人の歓迎会を行う。
たくさんの料理がテーブルの上に並んでいた。
色々な種類の肉、魚、野菜……よりどりみどりだ。
それと、それぞれにドリンク。
シンシアとスズカはお酒。
私は未成年なので、ジュース。
……ちょっと二人がうらやましい。
「じゃあ、私達の出会いを記念して……」
「「「かんぱーい!!!」」」
さっそく歓迎会を始めた。
おいしい料理を食べて、おいしい飲み物で喉を潤す。
幸せの時間です♪
「あぁ……楽しそうにごはんを食べるお姉さま、素敵です」
なぜか、スズカが恍惚とした顔に。
私、普通にごはんを食べているだけなのに……
「ねえねえ、アズ」
「はい、なんですか?」
「えへへー、大好き♪」
「わひゃ」
いきなりシンシアに抱きつかれてしまう。
彼女の頬は少し赤く、目がとろんとしていた。
ちょっと妖しい感じというか……酔ってる?
シンシアはお酒に弱いのかな?
「あ、ずるいですよ、シンシア。私も、お姉さまに抱きつきたいです」
「あはは……今は、ごはんに集中しましょう?」
「お姉さま、いけずです……」
スズカにも、ものすごい勢いで懐かれてしまった。
出会った時からの彼女からは想像できないほどデレている。
うーん。
私が理想のお姉さまらしいけど、さっぱりわからない。
でも、慕ってくれるのはうれしい。
私も、スズカのことが大好きです。
「ところで、ずっと聞いてみたいことがあったの」
ふと、思い出した様子でシンシアが言う。
「アズは、どうして私達に優しくしてくれるの?」
「私、優しいですか?」
「誤った道を進む私を真剣に叱り、涙を流しながら共感してくれる……お姉さまは、とても優しい方です」
私、そこまでしたでしょうか……?
「うんうん、アズは優しいご主人様。私のことも助けてくれた」
「あれは、誰でも助けると思いますが……そうですね」
とある人が思い浮かぶ。
その人のことを思い浮かべつつ、自然と言葉を紡ぐ。
「憧れている人がいる……からでしょうか?」
「憧れ?」
「も、もしかして、お姉さまはその方を愛して……!?」
「そ、そんなんじゃないですよ!? そういうの、よくわからないですし……そうじゃなくて、純粋に憧れです。とても優しい人なんです。えっと……」
ちょうどいい機会だから紹介しよう。
そう思い、ウェイトレスさんを手招きした。
「はい、なんでしょうか?」
「すみません。レインさんを呼んでもらう、っていうことは可能ですか?」
レイン・シュラウド。
それが、私が憧れている人の名前だ。
「すみません、彼は少し前に店を辞めてしまって……」
「えっ、そうなんですか?」
「はい。なんでも、噂では勇者パーティーに参加したとか」
「勇者パーティーに?」
アリオスの……ところ?
そんなことは……でもまさか?
「そうですか……わかりました。ありがとうございます」
「いえいえ。他になにかありましたら、気軽に呼んでくださいね」
レインさんは、いつの間にかアクエリアスを旅立っていたようだ。
残念……せめて、別れの挨拶をしたかったです。
「そのレインっていう人間が、アズの憧れの人?」
「はい、そうです。宿で働いていて、それで知り合ったんですけど、すごく優しい人なんです。思いやりがあって、気配りもできて、親身になってくれて……たくさん、たくさん助けられました」
私は、とある事情があって故郷を飛び出して……
でも、行く宛はなくて、行き倒れてしまうところだった。
そんなところをレインさんに助けてもらった。
ただ助けてもらうだけじゃなくて、何度も相談に乗ってもらって、たくさんたくさん助けてもらった。
大げさじゃなくて、命の恩人だと思っている。
「レインさん……元気でやっているといいんですけど」
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