11話 決着
「あんた達の勝ち? ふん、世迷言を口にしないでくれる」
「いいえ、私はもう、勝ち筋が見えましたよ」
「む……」
スズカさんがあからさまに不機嫌そうな顔に。
よし。
そうやって、私の挑発に乗ってください。
「私と一騎打ちをしませんか?」
「はぁ?」
「その方がわかりやすくて、早く決着がつくと思いません?」
「人間が……私を舐めているかしら?」
「さて、どうでしょうか」
ふふ、と小さく笑い余裕を見せてやる。
すると、わかりやすくスズカさんは、こちらを睨みつけてきた。
「いいじゃない、乗ってやるわ」
スズカさんの闘気が膨れ上がる。
でも、その顔には不敵な笑みが残ったままだ。
つまり、私を人間と侮っている。
そこに付け入る勝機がある。
「アズ、がんばってね?」
「はい、大丈夫です。シンシアのために勝ちますよ!」
拳を構えてスズカさんと向き合い……
「「っ!!!」」
ほぼ同時に地面を蹴る。
私とスズカさんは全力で駆けて……
真正面から激突。
「にゃ!?」
……する直前で、私は跳躍した。
そして、宙を蹴って軌道を変える。
シンシアが言っていた。
彼女の主になったことで得た力は、本当は身体能力の強化じゃない。
『闘気』と呼ぶ力を操る術を得た、というのが本当の答えだ。
闘気。
目に見えないエネルギー。
それをうまく扱うことで身体能力を強化したり、空気を蹴るなどしてトリッキーな動きを可能にするという。
それを利用して、スズカさんの不意を突くことに成功した。
後は、この一騎打ちを終わらせるだけ。
「烈火掌!」
「にゃにゃにゃ!!!?」
相手の体内に衝撃を伝える技。
いくら頑丈な最強種でも、これを喰らえば……
「わ、私が負けるなんて……」
バタンと、スズカさんは倒れるのだった。
――――――――――
……その後。
ミゼリーさんと協力して盗賊達を捕まえた。
ミゼリーさんは、一足先に盗賊達を街へ連行して……
私とシンシアは、ミゼリーさんにお願いして、スズカさんの処遇を任せてもらうことに。
盗賊達にいいように使われていただけなので、罪に問うのはちょっとかわいそうな気がした。
最強種に襲われた、なんて話は聞いていないから、まだ悪いことはしていないみたい。
なら、大丈夫だろう……という判断だ。
「……うーん」
しばらくしてスズカさんが目を覚ました。
「あ、大丈夫ですか?」
「ここは……はっ!?」
私を見て、スズカさんが勢いよく飛び上がり、構える。
それから、おや? という感じで子首を傾げた。
「私……あんたに負けたわよね?」
「そうですね、私の勝ちです。えへん」
「なら、どうして私は無事なの? 酷い目に遭うとか、鎖でぐるぐる巻きにするとか……あんた達は悪人なのに」
「それ、誤解です。いいですか? 私達は……」
私達は冒険者で、正義の味方……とまでは言わないけど、少なくても悪人ではない。
悪人はさっきの連中で、スズカさんはいいように利用されていた。
そんなことを説明すると、スズカさんはがくりと膝を折り、目をぐるぐるさせる。
「な、なんてこと……行き倒れていたところでごはんをくれたから、良い人だと思っていたのに、あっちが盗賊だったなんて……この私が、盗賊に力を貸してしまうなんて……」
「そんなに落ち込まないでください。仕方ないですよ」
「仕方なくなんてないわ! 私のせいで大きな被害が出ていたかもしれないのに……あんた達にも迷惑をかけたのに……」
「なら、私は許します」
「え?」
「許します。だから、気にしないでいいですよ」
スズカさんがぽかーんとなった。
「どうして、そんな簡単に……」
「だって、憎み合うよりも仲良しになった方が絶対にいいじゃないですか」
「……あ……」
「私、スズカさんと仲良くなりたいんです。だから、笑ってくれませんか? えへへ」
スズカさんは呆けた感じで、じっとこちらを見た。
一方で、後ろの方から「アズ、かわいい。素敵」なんていう声が聞こえてくる。
なんで、そんなに褒められているんだろう……?
敵が増えるよりも、友達が増えた方がうれしいよね?
誰でもわかるような理屈だよね?
あれ?
私がおかしいの?
「……お姉さま……」
「へ?」
ふと、スズカさんの口から訳のわからない単語がこぼれた。
見ると、瞳をキラキラとさせて頬を染めて、恍惚とした表情をこちらに向けている。
「私、正義の味方に憧れていて……それともう一つ、お姉さまがほしいと思っていて……あぁ、まさか、こんなところでお姉さまに出会えるなんて!」
「え? いや? あの……ど、どういうことですか?」
「今言った通りよ。いえ、通りです! 私の手を取り導いてくれて、優しく接してくれる姉のような存在……そう、お姉さま! ぜひ、私のお姉さまになってください!」
「えええええぇ!!!?」
なんで、こんな展開に!?
「あなたこそ、理想のお姉さま!」
「いえいえいえ、待ってください!? 私、12歳ですよ!?」
「お姉さまに年齢は関係ありません! 心のお姉さまなのですから!」
「意味がわかりません!?」
本当に意味がわからない!?
「ふふ、お姉さま。これからお願いしますにゃ」
「いつの間にか決定事項に!?」
こうして……
私はスズカさんの『お姉さま』になってしまうのだった。
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