10話 騙されている?
歳は、十代後半くらい。
夜空のように鮮やかな黒髪が特徴的だ。
髪はショートカット。
そのせいか、活発的な印象を受ける。
丸くてくりくりっとした瞳は愛らしい。
ぴょこぴょこと動く猫耳もあって、もふもふしたら、さぞ気持ちよさそうだ。
「あなたは……」
「私は、この黒猫団の団長、スズカ様よ!」
どーん、という感じで胸を張りつつ、スズカさんがそう言い放つ。
そんな、まさか……
最強種が盗賊を!?
「あんた達が、私に成敗される悪党ね? 例え子供や同胞でも、私は容赦しないわ。覚悟なさい!」
「……え?」
なんで立場が逆転しているのだろう?
「ちょっと待ってください。悪なのは、明らかに盗賊であるそちらが……」
「問答無用!」
「わっ!?」
スズカさんがいきなり殴りかかってきた。
速い!?
一瞬で距離をゼロにされてしまう。
直感で体を右に傾ける。
それは正解だったらしく、スズカさんの拳を回避することができた。
反撃の蹴りを放ち、一度、距離を取る。
「へえ……私の攻撃を避けるなんてやるわね」
「いきなり殴りかかってこないでくださいよ!?」
「悪党は問答無用で殴り倒していい決まりなのよ!」
「そんな決まり、聞いたことありません!?」
再びスズカさんが突撃してきた。
まずい。
今度は避けられな……
「アズ!」
シンシアが前に出て、スズカさんの突撃を受け止めてくれた。
「シンシア、ありがとうございます!」
「ご主人様には、指一本触れさせないんだからー!」
「むっ!?」
シンシアとスズカさんの戦闘が開始された。
二人共最強種。
その戦いは凄まじく、轟音と衝撃が繰り返し撒き散らされていく。
「ひぃ!?」
「お、お頭、もうちょっと加減を……ぎゃあ!?」
私達がどうこうするまでもなく、盗賊達が巻き込まれて吹き飛んでいく。
「ミゼリーさん、盗賊達をお願いします!」
「わ、わかったわ」
この状況なら、ミゼリーさん一人でも盗賊達の対処は可能だ。
巻き込まれないようにしつつ、捕縛していけばいい。
私は……
「シンシア、一緒に戦いましょう!」
「うん、アズ!」
シンシアに加勢。
二人でスズカさんに立ち向かう。
「ふふん、二人になったところで、この私に敵うとでも? 正義は勝つ!」
「だから、どうして盗賊が正義なんですか!?」
「なに言っているのかしら。私は盗賊なんかじゃないわ。世直しをする正義の味方、黒猫団よ!」
なんとなくだけど、状況を理解した。
スズカさんは、たぶん、とてもまっすぐな人なんだろう。
まっすぐすぎて……そして、盗賊達に騙されて、うまいように利用されてしまっている。
私、知っている。
こういう人、脳筋って言うんですよね。
この場合、一度、おとなしくしてもらうしかない。
そうでないと話ができないだろう。
「うー……わんっ!」
まず最初に、シンシアが前に出た。
威嚇するように吠えつつ、拳のラッシュ。
スズカさんから反撃の機会を奪う。
「ふふん、やるじゃない」
「アズの敵、やっつける!」
「違いますよ、シンシア。一緒にやっつける、です!」
スズカさんの背後に回る。
それを見たシンシアは、その場でくるっと回転して、回し蹴りを繰り出した。
「くっ!?」
大技を受けて、スズカさんがこちらに吹き飛ばされてきた。
タイミングを合わせて、私も技を繰り出す。
「風牙!」
「うにゃ!?」
スズカさんが吹き飛ぶ。
確かな手応え!
「くーっ、やってくれたわね!」
でも、相手は最強種。
これくらいで沈むわけがなくて、逆に闘争心を煽る結果に。
むう、手強い。
倒す方法がないわけではないのだけど……
防御が固く、動きも素早いため、攻撃を当てることが難しい。
「……アズ」
私にだけ聞こえる声で、シンシアが言う。
「今のアズなら、お空を駆けることができると思うよ」
「え? どういう意味ですか、それ?」
「えっとね、アズが私のご主人様になって得た力は、本当は……」
とある説明を受けた。
なるほど。
それなら……
「この勝負、私達の勝ちですね」
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