第五話 束の間の休息
四エリア目の騎士達に別れを告げ、俺たちは休憩するために山小屋へ入った。
山小屋での休憩中、俺たちのお話題はもっぱらGCのことだった。
「さっきの騎士たち、結果としては勝てたが、普通の候補生では勝てないだろうな」
レイヤは一番動いているため、足を休ませながら話をする。
「吹っ飛ばしたパワーはすごかったが、スピードならレイヤの方が圧倒的に上だな!」
アレンは体に異常がないか確かめながら、昼食で出された肉を頬張る。
みんなの注目は必然的に貴族出身のスバルに向けられた。
「あんまり詳しくはないけど……」
スバルが話を始める。
「GCを付与されると能力向上や理に反した力が発揮できるのは知ってるよね?」
騎士養成機関の授業でも聞いていたため、みんなが頷く。
「貴族はみんなGCを付与できるけど、個々人で付与できる能力って変わるんだよね」
「ということは、スバルもGCを付与できるってことか?」
レイヤが質問をする。
「そうだよ。一応僕も訓練をすればGCを付与できるけど、微力しか与えられないんだ」
「なるほど。スバルの力を付与してもらうことはできるのか?」
「うーん、それは難しいかな。貴族側も特別な養成機関に通ってるんだ」
「そうなのか。話を止めてすまない。続けてくれ」
「さっきの騎士にはGCはあるけど、末端貴族に仕えていて力が弱かったんだと思う」
「力が弱かったから俺たちでも勝つことができたってことか」
レイヤが頷くと、スバルはゆっくりと頷いた。
スバルはそこまで話すと、弓の手入れを始める。
「最終エリアの騎士は付与されている能力が全く違うということかな?」
レイヤは続けて質問をした。
「その通りだね。全く違うと思うよ。少なくともアバロンは皇族から付与されている」
騎士試験最終エリアをクリアした事例がなかったことは、このことから頷ける。さっき戦った騎士が末端と言われると最終エリアにいる騎士達はどんな力を持っているのか想像がつかなかった。
レイヤの表情は少し固くなっていく。
「ここでへこんでも仕方ない! やってみるしかないな!」
アレンは経験したことない力を前にしても、いつも通りだ。
そうこうしていると、先ほど割って入ってきた審判が山小屋にくる。
「そろそろ休憩の時間は終わりです。最終エリアへ向かってください」
「審判のあなたが案内してくれるのですか?」
レイヤ疑問を持って質問をする。
「最終エリアはアバロン様がじきじきに審判もされるので私は行きません」
「そうですか、食事などありがとうございました」
みんなで審判にお辞儀をする。
「最終エリアはすぐ近くにある洞窟です。みなさんの健闘を祈っております」
審判はそう言って、小屋を後にする。
武器や鎧の確認を最後にして、俺たちは最終エリアへと向かった。
♢
審判から聞いた山頂付近の洞窟の場所は山小屋から出てすぐの場所にあった。俺たちは洞窟の中に入っていく。薄暗い洞窟の中は少し不気味な雰囲気をかもしだしていたが、どんどん進むと少し明るいひらけた場所が見える。
おそらくあそこが最終エリアだろう。
「騎士試験最後の戦いだ! 何があっても気合いを入れて戦おう!」
アレンが俺たちを鼓舞する。
ひらけた場所につくと、アバロンと三人の騎士が待ち構えていた。
「よくきたな! 四エリア目をクリアしたってことは、少しは見込みがありそうだ」
アバロンが声をあげた。
「あなたたちが四エリア目の実力だと失望しちゃいますよ?」
すかさずレイヤが挑発を入れる。
「ぶっちゃけると四エリア目をクリアした時点で騎士試験はほとんど合格なんだよ」
「ほとんどというと?」
レイヤは困った顔になる。
「あとはお前たちが任命されるかだけだ。まぁここまでくると十中八九任命だ!」
アバロンは笑いながら話している。
俺たちはみんな騎士になれるようだった。
「では、最終エリアをやる意味はないのでは?」
レイヤはここで戦う意味を見出したいのか、質問を重ねた。
「これはレクリエーションだ! 最後は楽しんでくれ!」
アバロンの周りの騎士を見ると、みんなが皇室騎士の紋章をつけていた。
「皇室騎士団と戦えるのはかなり楽しみだ!」
アレンは何にも怖気付いている様子はなく、槍を構えた。
「楽しみか! それは良かった。さぁ始めるぞ!」
アバロン以外の騎士が近づいてきて剣を構える。
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