第四話 GC(グラントゥ・キャパシティー)の力
四エリア目に到着すると、かっちりとした鎧をまとった四人が待ち構えていた。四人とも剣を持っていたので、槍使いや、弓使いはいないようだ。
「君たちが今日初めの相手か! 楽しませてもらうよ!」
騎士の一人が涼しい顔で話してきた。
「楽しませてもらうのは、こちらもだ!」
アレンは戦う気満々で答える。
「これまでの一般兵と同じでしたら、期待はずれですからね」
珍しくレイヤも相手を挑発した。
「二人とも、大口を叩きますね! かかってきなさい!」
騎士の四人は臨戦体制を取った。
すかさず、これまでのエリアと同様、レイヤが一太刀を入れに向かう。
一瞬で手前の騎士の懐へ飛び込んだ。
驚いたことに、レイヤの最速の一撃に騎士も動きを合わせて、受け止める。横に構えている騎士からカウンターをもらわないように、レイヤはいったん後退した。
レイヤが後退したところで、すかさずアレンが槍で突きに向かう。しかし、こちらも簡単に受け止められてしまった。
「騎士はさすがに動きが違うな」
レイヤがボソッとこぼす。
「さすがに大口を叩くだけのことはありますね! 本気で受け止めました」
相手の騎士もレイヤのスピードに追いつくのはやっとだったようだ。
レイヤの剣技は候補生の中でもトップで、一般兵レベルでは剣先すらほとんど見えないと思うが、それに対応できるのが騎士だった。
このエリアから本番のようだ。
俺もさすがに戦闘モードに入る。スバルもいつでも弓を射れる準備をしていた。
次はアレンの攻めから攻撃が始まった。相手の体制を崩すための一撃を入れるようだ。
「もらった!」
アレンの槍術は大振りであるが、隙をうまく作らない綺麗な飛び込みから放たれた。
「甘いな!」
相手の騎士はアレンよりも小柄であったが、槍を剣で受け止め、アレンの腹部へ蹴りを入れる。
小柄な騎士のたったひと蹴りでアレンが吹っ飛ばされ、周囲は唖然とした。
「なんだあの威力は……、アレンが蹴りで飛ばされるところなんて見たことないぞ」
俺は目の前で起きていることを理解するまで少しの時間が必要だった。
レイヤのスピードに対処でき、アレンを吹っ飛ばすことができるパワー。相手の騎士たちは、見た目とは違う力を備えていた。
「GCの力が付与されるだけで戦いが異なることを理解できたかな?」
騎士の一人が優越感に浸っている顔で言う。
騎士とそれ以外の力が圧倒的に違っている理由。騎士が特別な階級であること、なぜ貴族が今の特権にいるのか。GCの付与があるのとないのとでは、人間の強さに大きな違いを生み出す。戦いの中で改めて格差を思い知った。
「アレン、まだくたばってないよな? 次はジークが一太刀入れてくれ!」
レイヤは次のシミュレーションを考えていた。
「ジークに合わせてスバルが援護し、その間に俺が剣で切り込む」
レイヤの指示を頭に入れる。
「レイヤ、全然大丈夫だ。久しぶりに攻撃を受けてびっくりしただけだ。次は相手をなぎ倒す」
アレンも立ち上がって、槍を構える。
レイヤのシミュレーション通りに俺が次は前衛で攻める。まず狙うのははレイヤが最初に剣で交わった相手からだ。
俺が剣を振るうと相手の騎士もそれに合わせて的確に受け止める。攻撃そのものは受け止められたが、相手の力はそこまで強くなかった。
俺と騎士が剣を交えている間に、スバルから弓が放たれる。横にいた騎士がそれを剣で防ぐが、その行動がレイヤの攻撃の好機となる隙となった。
レイヤは騎士の頭部に剣を入れる。
「ウグッッ」
相手の騎士はレイヤの一撃を受けて膝から崩れ落ちた。攻撃を入れた後、レイヤは他の騎士からの援護攻撃にすぐに対して剣で守る。その間にアレンの槍が倒れた騎士へ追い討ちを入れた。
一人倒したところで、俺たちはいったん間合いを取る。
「GCも大したことないんじゃないか?」
アレンが相手に聞こえるように言う。
「さすが候補生の中でもトップの強さを誇るチームですね。そろそろ本気を出しますよ」
小柄の騎士が言うと、俺に向かって剣を振るう。スピードが遅かったため、簡単に受け止められたが、パワーが普通の剣とは段違いだった。受けた手はその重みで痺れる。
良いタイミングで、スバルの弓が入り、俺は離れることができた。
すぐにレイヤが小柄の騎士に一撃を入れる。まともに攻撃が入ったため、小柄の騎士に大きなスキができた。さっきのお返しとばかりに俺は一太刀を入れ、小柄の騎士を倒す。
「ジーク! やるじゃないか!」
アレンは喜んだ表情で言う。
「レイヤとスバルのおかげさ。残り二人に集中しよう!」
俺は頑張るつもりはなかったが、あとで何か言われても困るので最低限の動きはした。
レイヤが残りの相手に、剣を浴びせようとすぐに攻めに入る。はじめの攻撃の時と同じように相手の騎士はレイヤの一撃を受け止める。レイヤと騎士は剣と剣でぶつかり合い硬直状態となった。
「双方! ここまでです!」
どこからか急に審判が現れて、戦いに割って入った。
相手の騎士はまだできると言いたげな顔をしていたが、その表情には疲労も見えた。
「第一チームは四エリア目クリアです!」
審判の言葉を聞いて俺はホッとする。
「クリアって、最後まで戦わなくていいのですか?」
レイヤは真面目に聞き返す。
「そうです。試験を担当いただく騎士の方々の数にも限りがありますし」
「全員倒れてしまうと、試験が続行できなくなると言うことですね。わかりました」
レイヤは納得いったようで審判にお辞儀をする。
「残りは最終エリアとなりますが、あそこの山小屋で昼食をとり休憩に入ってください」
審判が山小屋を指差しながら言う。
「試験の途中なのに休憩をとってもいいのですか?」
レイヤは休憩をとっていいと言う言葉に違和感を覚えたようだ。
「その通りです。今の疲労のまま最終エリアに行っても得られるものがないですから」
「得られるものがないとは?」
「最終エリアはこれまでとは違います。休憩を取って万全の態勢で臨んで欲しいのです」
「ありがとうございます。それでは早速休憩に入らせていただきます」
レイヤは違和感が残っていそうな表情だが、審判にお礼を言う。
さっきまで倒れていた小柄な騎士がゆっくりと立ち上がった。
「君たちの実力は本当にすごかった!ありがとう。最終エリアは楽しんで挑んでくれ」
「もちろん! あなたのパワーすごかったです! 久しぶりに吹っ飛びました!」
アレンは笑いながらそれに答えて握手を交わしている。
この先の最終エリアが休憩が入るほど過酷なことは、ここにいるチームメンバーは分かっていたが同時に武者震いもしているようだ。
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