第四十四話 GCの研究 【アバロン過去編2】
フリージア・アカデミーでの生活はこれまでの騎士養成機関とは違って毎日が楽しかった。
ガルムの仕えるアメリア様のヒエロニムス家は公爵の中でも強力なGCの力を持っていて、ランバ様とも仲が良かった。そのおかげか、よく四人で勉強やトレーニングをすることも多かった。
養成機関の時は力を隠していたガルムは、頭も良く優しい性格からみんなに慕われる存在となっていた。もっと早くガルムと仲良くなっていたらと思うが、今の青春を楽しむことが一番大切だと考える。
一年、二年と時が経つのは早く、あっという間に最終学年の騎士対抗試合となっていた。これまでの二年間も決勝はガルムとだ。一勝一敗の成績だったので、最後の年は勝ちたいと思う。
想定どおり、決勝はガルムとの組み合わせとなった。
ライバルという存在がいることに感謝しながら、試合に臨む。
「アバロン、いつにもなく緊張してるじゃないのか?」
ランバ様にはお見通しのようだ。
「ランバ様、そりゃ緊張してるよ……。最後の騎士対抗試合でライバルのガルムとの決勝戦だ」
「それもそうだな。ライベルって言える存在がいることはいいことだと思うよ」
「ガルム以外に俺をワクワクさせてくれる相手はいない。だけど必ず勝つ」
ランバ様と俺は決勝戦のコロシアムへと向かった。
会場の雰囲気は最高潮だ。この三年間、決勝戦の顔合わせは同じだが、熱い戦いが観れることを観客は知っているのだろう。
中央には、ガルムとアメリア様が待ち構えていた。
「アバロン! 今年も戦えて嬉しいよ!」
ガルムも楽しみにしていたようで、声の張りがいつもと違う。
「もちろんだ! 全力で行くぞ!」
俺たちがそれぞれ構えると、審判から試合開始の合図があった。
ゆっくりと試合が始まると予想していたが、それに反してガルムから一気に間合いを詰めてきた。
ガルムのGCは何度見ても強い。身体の硬化に加えて耐久力が桁違いなため、何度攻撃を受けても簡単にやられてくれない。おまけにガルム本体の強さも相まって、俺の次の一手を的確に読んでくる。
「そんなものか!? アバロン! 見せてみろよ!」
ガルムは攻撃の手をゆるめず、守るので精一杯になっていた。
俺がランバ様から授かったGCはほとんどオールマイティーに強化されるようなGCだ。何かに特化されたものではないが、自分の中でもしっくりくるGCだ。
ガルムの連打に対して少しずつ力を込めたカウンターを入れていく。
「ここから、俺の反撃だ!」
ガルムの攻撃を受けるばかりでは何もできないため、スピードを上げてこちらからも急所めがけて剣を振っていく。
「これでもか! これでもか!」
俺は何度も剣での攻撃を繰り出していく。何発かは当たっているようだが、ガルムが痛がる様子は全くなかった。
「さすが、アバロンだ。だけど、勝たせてもらう!」
ガルムはそういって、突きでの攻撃を仕掛けてきた。
間一髪で避けられると思ったが、さらに伸びてきて俺まで届いていた。
その攻撃の圧力で会場の端まで飛ばされる。
「くっ、まだこんなに力が残っているとは」
ガルムにはどれだけ攻撃を入れても、勝てるビジョンが浮かんでこなかった。
「これで終わりだ!」
追い討ちを入れにガルムが突っ込んでくる。
「アバロン! お前の力を見せろ!」
ランバ様の声が聞こえてきた。その声を聞いて最後の力を振り絞る。
「俺がここで終わってたまるか!」
GCの力を最大限に引き出すのは気持ちによると聞いたことがある。ガルムに負けたくない、というよりもこんな好敵手と戦えることに感謝をして、カウンターを合わせにいく。
ガルムの攻撃を受けながら、カウンターをお見舞いした。確かに攻撃は入ったようだ。
しかし、立ち上がるのも難しく、ガルムがどうなっているのかもわからない。
「立て! アバロン!」
観客席からも声が聞こえてくる。立ち上がらないと、終わりのようだ。
俺はガクガクと震える足を叩きなんとか立ち上がる。
「勝者! アバロン・ロマネティ!」
審判がそう叫ぶと、観客から大歓声が上がった。
ガルムは俺の攻撃を受けて、倒れたままだった。なんとか勝てたが、俺とガルムの実力はほとんど拮抗していた。
少しすると、ガルムも立ち上がる。
「俺の負けか、いい戦いだった」
ガルムも疲れ切っているようだ。
「ありがとう、ガルム。お前と会えたことに感謝している」
「そんなこと言うなよ、これからもよろしくな」
俺たちが握手をすると会場は今日一番の盛り上がりを見せた。
♢
フリージア・アカデミーを卒業し2年ほどが経った。俺は卒業してからは皇室騎士団に所属して、普段の訓練や依頼をこなす生活をしていた。
ガルムもアメリア様にそのまま仕えてヒエロニムス家の騎士団に入り、活躍している話を聞く。
そんなある日、耳を疑うような依頼が皇室騎士団に入った。
「ヒエロニムス家がGCの人体実験をしているだと?」
ガルムやアメリア様の顔を浮かべながら、その報告を聞いた。
「はい、その情報は実際に研究していた人間からのようです」
報告してきた皇室からの使いは淡々と喋っている。
「アメリア様やガルムはどうしているんだ?」
友人が実験に関与しているとは思えなかったが、だとしても事件には巻き込めれているとは感じていた。
「それが、実験の対象が、その……」
使いの者のなんとも歯切れの悪い回答に苛立ってくる。
「いいから話せ!」
「人体実験を受けているのが、アメリア様とガルム様のようです」
その言葉を受けて衝撃を受けた。早く助けに行かないといけない気持ちが先行する。
「アバロン! 皇室騎士団全員で、ヒエロニムス家に向かうぞ!」
ランバ様が声をあげる。おそらく、心中気が気ではないのだろう、声の張りはいつにも増していた。
こうして、俺たち皇室騎士団はヒエロニムス家へことの真相を確かめに向かうこととなった。
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