第四十三話 出会い【アバロン過去編1】
騎士試験の日、俺は退屈だった。
騎士養成機関に入ってから三年経ったが、俺を楽しませてくれる実力を持った騎士候補生はいない。ライバルと言える存在もいないまま自分の鍛錬だけを追求していた。
ロマネティ家は代々皇室に仕えてきた騎士の名家で、俺もそのまま皇室に仕える人生なのだろうと思いながら試験へと向かう。
今年は、皇族のランバ様がアカデミーへ入学する年のため、この試験で問題がなければランバ様とアカデミーに通うことになるだろう。
「君たちが第一チームだ! アバロン君には最終エリアまで行って欲しい」
機関長の話を適当に聞いて、騎士試験が始まった。
「足手まといになるなよ!」
俺はチームメイトを叱責する。
同じチームは、四人で構成されていて、二人は優秀と言われていた騎士の家出身のものだったが、もう一人は平民出身のガルムと言う男だった。
順当に最終エリアまで進むと、皇室騎士団長のディオルグさんが迎えてくれた。
「君たちよくきたね! ここが最終エリアだ頑張って欲しい! 特にアバロン、期待しているぞ」
ディオルグさんは戦いに出てこないで、残り三人の皇室騎士が戦いに来るようだった。
「本当のGCの力を見せてやる!」
そう言う、皇室騎士達の攻撃は凄まじく、簡単に騎士の家出身の二人を倒していった。俺とガルムと言う平民だけが残った。
「おい、ガルム! ここが勝負どころだ! どうしてもディオルグさんと戦いたい」
ここで一人も相手の騎士を倒せないとなると、実家に笑われそうで正直焦っていた。
「わかった。俺が盾になるから、一人ずつ倒してくれ」
ガルムの雰囲気が変わったのが分かった。
「おいおい、他の仲間もいないのにどうやって倒すんだ!?」
皇室騎士の一人が、凄まじいスピードで攻撃を仕掛けてくる。
ガルムはそれになんとか反応して、剣で受け切った。
「おいおい、この候補生やるな!」
皇室騎士は余力があるようで笑っているが、俺はそこにでいた隙を見逃さなかった。
一気に間合いを詰めて、剣で一撃を入れる。
「ま、まじかよ」
俺の攻撃に合わせてガルムが、皇室騎士の腕を掴み避けられないようにしていた。そのまま、剣を頭部に打ち込むと、騎士は意識を失ったようだ。
「はっはっ! まさか一人倒されるとは!」
ディオルグさんは俺たちがまさか騎士を一人倒すとは思っていなかったような高笑いをする。
俺たちはそのまま二手に分かれて、それぞれ騎士と一対一の戦いをする。
ガルムがここまで強いとは知らなかった。恐らく『平民』ということもあり、その強さを隠し続けていたのだろう。相手の皇室騎士には勝てないと思うが、一対一の状況を作り出してくれたことに素直に感謝する。
俺は目の前の騎士とやりあった。さすがGCを使った皇室騎士で俺の攻撃もほとんど効いていないようだ。GCを持つ相手と戦ったことはあったが、差があることを認識する。
「アバロンと言ったな! ロマネティ家の力見せてみろ!」
相手の騎士には、俺を挑発するだけの余裕があるようだった。
「言われなくても見せてやる」
ここでこの相手に勝たないで、何が皇室に仕える騎士だろうか。自分の実力が劣っていることは百も承知だが、絶対に負けたくない。
俺たちは何度も剣をぶつけ合う。騎士養成機関の騎士候補生だとこのスピードに追い付いてこれるものはいないだろう。
しかし、相手の騎士に蹴りを入れられて飛ばされる。
「ぐっっ」
攻撃を耐えて剣を構えなおす。この戦いで力の出し惜しみはしない。
本気で一撃をぶつけに行くことにした。
「行くぞ!」
俺はこの一撃に集中する。渾身の一撃を防いでみろという気持ちで一気に踏み込んだ。
「こい! アバロン!」
俺は一太刀を相手の騎士の腹部めがけて入れようとするが、相手はとっさに反応できたようで剣で防ぐ。だが力が足りないようだった。
相手の剣が高く舞う。
「これで終わりだ!」
俺は再度腹部に剣での攻撃を入れた。相手の騎士は膝から崩れ落ち、意識を失ったようだ。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
思わず雄叫びをあげてしまった。ここまで強い相手と戦ったのは初めてで、周りからは天才と呼ばれていてもGCの力次第では差が出ることを知った。
「アバロン、勝ったようだな」
ふとガルムの方を見ると、傷だらけになりながらも相手の皇室騎士を倒していた。俺でも勝てない可能性があった相手だけに、ガルムの実力に驚きを隠せない。
「お前達二人はすごいぞ! 最終エリアで皇室騎士が負けるのは前代未聞だ」
俺たちの戦いを観戦していたディオルグさんがやっと剣を持って俺たちの前に立ちはだかった。ここまで来たからには、ディオルグさんにも勝ちたかった。
「ディオルグさん! 参ります!」
俺とガルムは剣を構えた。
しかし、一瞬でことは終わった。
何が起きたのか分からなかったがガルムが倒れている。
「ガルム! どうした!」
攻撃は見えなかったが、確かにディオルグさんはガルムへ攻撃を入れて、さすがのガルムでも反応できなかったようだ。
「アバロン君、よそ見はいけないよ」
俺が最後に見た光景は、目の前に現れたディオルグさんの太刀筋だった。
何も反撃できずにそのまま意識を失った。
♢
俺が自室で目を覚ました時は、騎士試験の次の日だった。
街は騎士試験の結果で俺たちのチームが最終エリアまで進んだ噂で盛り上げっているようだった。
俺のところには、想定通りランバ様から騎士として選抜された旨が届く。
しかし、俺の頭の中は最終エリアでのガルムの戦いぶりだけが焼き付いていた。初めてライバルになれる存在に出会えた気がした。
ランバ様と一緒に通うのアカデミーはフリージア・アカデミーだろうが、『平民』出身のガルムも同じアカデミーへ通えるのかが気になってしょうがなかった。
二週間ほど、ランバ様の屋敷で過ごす。屋敷には皇室騎士団の方々もいたため一緒に訓練に励むこととなった。ディオルグさんは他の皇族の元にいるようだが、この屋敷にいる騎士団員も皆、かなりの実力をようしていた。
そんな生活を送っていると、フリージア・アカデミーの入学式となった。
ランバ様は今年の新入生の中でも群を抜けた力を持っているようで、他の貴族や騎士からも注目の的となっていた。そして俺の名前も騎士試験を経てどの貴族にも知れ渡るようになっていた。
「ランバ! 久しぶり!」
後ろから女性の声が聞こえる。振り返って見てみると、その美貌はこれまで見たどんな女性よりも美しく、そして気高い存在だった。
「アメリアか! 久しぶりだな」
ランバ様をみると少し頰を赤らめていた。この女性の名前はアメリア様と言うらしい。
「同じアカデミーだしよろしくね! それに、横にいる有名人のアバロン君もよろしく!」
騎士候補生はアカデミーに入学する貴族から選抜されることで、騎士になれるため俺の名前を知っていてもおかしくはなかった。
「はっ、はい! こちらこそよろしく、お願い、します!」
美しい女性からとっさに名前を呼ばれるたので、返事に緊張してしまった。
「アバロン、面白い返事をするな」
アメリアの後ろから声が男の声が聞こえてきた。この声を聞き間違えるわけがない、ガルムだった。
「ガ、ガルム! 一緒のアカデミーに入れたのか! 良かった!」
『平民』出身のガルムだとフリージア・アカデミーに入るのは困難だと思っていたので、嬉しさでいっぱいになる。
「そんな喜んでどうしたんだ?」
「いや、あの最終エリアでの戦いが最後になるかもと思って」
「あぁ、俺が『平民』だからな。うまくアメリア様に拾ってもらったよ」
身分を考慮しなければガルムの実力ならフリージア・アカデミーに入学できるのは当然だが、その中でもこの美しいアメリア様から選抜されたのは少し羨ましかった。
こうして俺のフリージア・アカデミーでの生活が始まる。
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