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第四十二話 GCの暴走 

 訓練所に着くと、皇室騎士団のみんながいて温かく迎えてくれた。


「ジーク! 立てるようになったのか!」


 ヤリスがそばまで来て、驚いたような顔をして話しかける。


「あぁ、おかげさまで。アバロンは奥にいるか?」


「アバロンさんは奥にいるぞ」


「ありがとう」

 アバロンのいる部屋までの間、何人かの騎士の視線を感じた。


 扉を叩きアバロンの部屋に入る。


「ジークか……。元気になったようで良かった」


「お陰様で。アバロンが助けてくれたのか?」


「正確に言うと助けてはいないが、助けたことになっている」

 アバロンは神妙な顔つきをしていた。


「意味がわからねー。相手の騎士はどうなったんだ?」


「ちょっと待て。どうやって話そうか悩んでいた。そう焦るな」


 アバロンをよく見ると、少しケガをしているようだった。


「すまない。俺も少し混乱していた。ゆっくりで良い」

 寝込んでいた実感もあまりないので、焦っていたのは事実だった。


「結論から言うと、お前がクレインの騎士を倒しナターシャ様の命を救ってくれた」


「俺は試合に勝ったのか……?」


「勝ったと言っていいと思う。まずは本当に感謝している」


「あの状況は最悪だった、相手の騎士は理性をなくしていたから、ナターシャの盾になる覚悟もできていたよ」


「見境いのなくなった相手からナターシャ様も守ったのは騎士としての自覚が出てきたな」


「俺はナターシャを守ろうと心の底から思ったら、力が湧いてきたんだ」

 俺がそう言うと、アバロンとの間に少しの静寂ができた。


 アバロンは一呼吸おいて話を進めるようだ。


「それが今回大きな問題だ。お前とクレインの騎士が起こしたのはGCの暴走だ」


 俺はナターシャから付与もされていないのにどうしてGCの話が出てきたのか分からなかった。


「GCが付与されていない俺がどうしてGCの暴走を?」


「疑問に思うのも無理はない。それも後で話をする」


 アバロンは俺が驚いているのを察しているようだ。


「GCが暴走するとどうなるんだ?」


「そうだな。なぜおまえがGCの暴走を起こしたのかは後で話すとして、何が起きたのかに集中しよう」


「わかった。そこから話をしてくれ」


「GCの暴走を起こしたお前は狂戦士のように相手の騎士を倒した」

 俺が暴れまわったと言われて、自分でも驚いた。


「クレインとその騎士はどうなったんだ?」


 アバロンは頷き、話を進める。


「クレインの小僧は騎士を暴走させたんだ、報いは受けてもらう。騎士の方は回復しても元通りにはいかないだろう」


 新しい情報ばかりで困惑してきたが、クレインが起こした騎士の暴走はかなりやばい代物のようだ。


「暴走だと悟った俺は、急いでお前の所へ向かった」


 アバロンが駆け寄ってきていた記憶は鮮明に覚えている。


「なるほど。もしかしてアバロンのその傷は俺がつけたのか?」


「お察しのとおり、お前を抑え込んだときにできたものだ」


 俺は自分が暴走したことによって、アバロンを傷つけたことを悔やむ。


「幸い、俺以外の人には何も影響はなかった。」


「それが聞けて安心したよ」

 他に怪我人を出していたら、気が気ではなかった。特にナターシャに剣を向けていたとなると大問題だ。


「ジークが暴走してクレインの騎士を倒した後、俺が抑えたってわけだ」


「なるほど。アバロンはケガまでして俺が憎くないのか?」


 俺がケガをさせてしまった事実はかわらなかった。


「そんなわけないだろ! ジークがいなかったらナターシャ様が危なかったんだぞ! お前はもう仲間だ気にするな」


「そうか……。ならいいが……」

 俺とアバロンの間に沈黙が流れる。


「そういえば騎士対抗試合はどうなったんだ? レイヤの優勝とは聞いたが」


「お前を抑えたあと、対抗試合は中止としたよ。多くの人に見られたが誰も暴走だとは思わないだろう」


「なるほど……、クレインにはどんな報いがあるんだ?」


 おそらくアバロンが俺を抑え込んだ噂は広まるだろうがクレインがどう裁かれるのかは気になった。


「クレインにはどうやって暴走を起こしたのかはこれから皇室騎士団から問い詰めていくよ」


「問い詰めるだけなのか?」

 クレインはアマンを誘拐した騎士を勘当するだけだったりと、事後処理にアラが目立つので気になる。


「あそこは公爵家の中でもかなり強い。真っ向からクレインを責めると国を二分にする戦争になるかもしれない」


「そんな……」

 俺はキュンメル家やクレインを裁けないことを悔やむ。


「今回の事件があったから表立って何かすることはないと思うが」


「そうだよな。さすがにキュンメル家もナターシャに手を出そうとしたわけだし」


「ジークには今後もナターシャ様の騎士として仕えて欲しい」


「こんな事件を起こしてしまったが、そう言ってもらえて嬉しいよ」


 ナターシャだけではなく皇室騎士団の人たちも傷つけていて、これからも同じように騎士でいるべきなのか悩んだが一応答える。


 話がここで終わろうとしていたが、重要なことを思いだした。


「あっ、アバロン……、どうして俺がGCの暴走を起こしたのかまだ聞いていないぞ」


 アバロンはこの話をしなければいけないのかという様子で深呼吸をした。


「聞きたいか?」


「あぁ、聞かせてくれ」


「分かった、これはお前の両親とも関係する長い話になる」


 アバロンは部屋に誰にも入ってこないように鍵をかけ、ゆっくりと過去の話を始める。


「お前の親父との出会いは、騎士養成学校だった」


「親父と同じ養成学校に通っていたのか……!」


「あぁ、俺とガルムは同じ年に入学した」


「アバロン、親父と同い年だったのか!」

 最後に見た親父は3年前の姿だが、アバロンの方が年上に見えたので驚いた。


「俺の家は代々皇室に仕える騎士の家でガルムは平民出身だった」

 親父も俺と同じように『平民』から騎士養成機関に入ったことを知る。


「俺は自分と同じくらい強い騎士候補生がいるとは思っていなかった」

 アバロンは遠くを見つめながら話を続ける。


「アバロンの強さならそう思うだろうよ」


「しかし、ガルムは違った。あいつは俺と同じくらい強かった」


 アバロンの少し長い昔話が始まる。

【お読みいただきありがとうございます】


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