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第四十話 騎士への道 【ジーク過去編5】

 試合が終わってすぐに面接を受けることとなった。


 部屋に案内され中へと入る。


「入ります」


 部屋の中には鎧を着た人が人いた。おそらくみんな騎士なのだろう。彼らの対面に一つの椅子が置かれており、俺がそこに座ると面接が始まった。


「これより面接を開始します。まずは名前をお願いします」


 相手が丁寧な言葉でしゃべっていることに驚き、俺も久しぶりに丁寧な言葉で話すことにした。


「ジークフリート……。ヒエロニムスです」


 はじめて知らない人相手に面と向かってヒエロニムスと名乗った。


「ジークフリート君ですね。あなたの特技を教えてください」


 特技と言われてもピンとこなかったので、これまでの経験から頑張ったことを考える。


「特技ですか……。強いて言うならクマを倒すことですかね」

 クマを倒せることは山で生きていけることだったので特技だと思った。


「クマ……ですか? その年でクマを倒したんですか?」


 面接官が全員顔を真っ青にしていた。


 何かまずいことを言ってしまったと感じる。


「そうですね。もちろん武器を用いてですが」


 まさかの反応だったので、とっさに何か言い訳をしようと武器を使ってと話した。


「武器を使ってですか……」


 それでも何か不信な点があったのだろう。面接官は驚きを隠せないままでいた。


 その後の面接ではこれまでどう生きてきたのか、誰に剣を学んだのかなどを聞かれた。それぞれの質問にありのままで答える。


「分かりました。ジークフリート君、我々はあなたを合格にしようと思っています」


「え? まだ、ほとんど何も話していないのに合格でいいんですか?」


 突然合格と知らされたのでびっくりした。


「そうです。今の帝国では『平民』から騎士になる人を増やすための施策をしております」


 『平民』という言葉は初めて聞いたが、俺はこの国では『平民』というカテゴリーに入るようだ。


「今日の実技の結果は平民出身だと考えられないことでした」


「俺が勝ったことがありえないのですか?」


 一撃で終わってしまったが、相手の力量は俺とは圧倒的に差があるように思えた。それをありえないと言わると困惑してしまう。


「はい。騎士になる人の多くは騎士の家に生まれて、修行をしてきたものが多いのです」


「今日いた人たちも修行をしてきたのですね」


 戦った相手はずっと修行をしてきた人間とは思えなかった。


「『平民』の環境で騎士の家出身のものに勝てる人間は存在しないと思ってました」


 平民の環境を想像できなかったが、そんな俺に剣技を教えてくれていた親父は一体何者なんだとふと疑問に思う。


「合格させてくれるのはありがとうございます」


「最後に一つだけ質問させて下さい。あなたはどんな騎士になりたいですか?」


 どんな騎士と言われても分からなかった。俺の中での騎士は、強い存在という認識だ。


「強い騎士になりたいです」


「ありがとうございます。合格すると養成機関での寮生活が始まりますので、準備をして一週間後こちらにいらして下さい」


 こうして面接が終わった。一週間後にまた来るように言われたので、またステーキが食べれることを楽しみにしながら、山小屋へ帰る。


 数日後家へ戻り、親父に合格したことを伝える。


「そうか。寮での面倒な生活から養成機関は始まるから頑張れよ」


 何か親父の様子はおかしかった。頑張れなんて言葉は生まれて初めて言われる。


 俺は都市までの長い道で疲れていたためすぐに寝てしまった。


 次の日の朝、目覚めると親父の姿はなかった。


 いつもは一緒に農作業をするが、親父がいないことはなかった。


 不審に思い、外に出て周囲の雑木林を探す。


 少し歩いて行ったところで人影が見える。親父だと思って駆け寄ると衝撃的な光景が目の前で起きていた。


 縄の一端を木にくくりつけて、親父は首を吊っていた。


「おい! 何してるんだよ!」


 親父を木から降ろそうとするが、既に死んでいるようで口から泡を吹き出していた。


 これまでの人生で親父から受けたものはほとんど苦痛であったが、たった一人の家族の死を目の前にすると自然に涙が出てきた。


 親父の死体の近くには一枚の手紙があった。


 そこには俺が生まれてからの人生は俺を鍛えることだけを考えていたこと、俺の強さはほとんどの騎士よりも勝っていること、騎士になるためには力を抑えて周りに合わせる必要があることが記されていた。


 最後にこれまでありがとうと書いて締めている。


 山に捨てられたときから親父のことを恨み始めたが、こんな最後になるなんて思いもよらなかった。

 

 初めて都市に行って疑問に思っていたこと、親父に聞きたいことは山ほどあったが、死んでしまってはもう何も聞くことはできない。


 俺はその日、一人の男の死に対して泣き叫び続けた。

【お読みいただきありがとうございます】


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新しくお読みいただいた皆様、ブックマークへの追加や、画面下の「☆☆☆☆☆」から評価をして読み進めていただけると幸いです!創作活動の励みとなります!


何卒、よろしくお願いいたします。

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