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第三十四話 異能力の対峙

 三回戦が終わるとすぐに四回戦が始まった。ここまででシードも含めて十六組が残っているが、全員がかなりの実力者であることは間違いない。


 俺たちの試合の前にレイヤの試合があったが、ここでも圧倒的な実力差だった。アレンがうまく進むと、準決勝でレイヤ対アレンの試合になるようだ。


 まずは目先の戦いを勝ち進むためにナターシャと俺はコロシアムの中央へ向かった。


「ナターシャ様! 頑張ってくださいね!」


「きゃーー! ナターシャ様! 今日も美しい!」


「おいっ! 騎士の野郎しっかり勝てよ!」


 ナターシャが人気なのは当然だが、勝って当たり前のように思われている俺のほうが委縮してしまう。相手の騎士は見たことのある顔で同じ騎士養成学校出身だった。


 全く記憶に残っていないが、ここまで来るということはある程度強いのだろう。試合がまもなく始まるため相手と向き合いお互いに剣を構えた。


「ジークフリート! お前がなぜナターシャ様の騎士に選ばれたのか確かめてやる!」


 相手の騎士が叫んできた。同じ騎士養成学校だと俺の成績を知っているので、ありあえないと思っているようだ。


「誰か忘れたが、俺も全力で戦ってやる」


「くそっ、余裕かましやがって! すぐに減らず口がたたけなくしてやる!」


 試合開始の合図とともに、相手は全力で距離を詰めてきた。おそらくスピードが上がっているGCなのだろう、動きがかなり早いが。


 こいつが残念なところは俺の挑発が効いていたのだろうか大振りなところだ。


 相手の隙をついて攻撃を入れるが、予想外に手応えがなかった。


「おいおい、そんな攻撃だと全く効かないぞ?」


 相手はさらに何度か攻撃をしてくる。


 スピードが上がっているのだと思ったが、何か様子が違うようだった。


 相手の攻撃を受け止めてみるが、パワーはそこまでなかった。しかし、俺の攻撃を受けてるはずなのに手ごたえがない。かなり奇妙なGCだった。


「その程度の実力なのか? ジークフリート!」


 その顔つきは気持ち悪く、心底俺のことが嫌いなようだった。


 そのあとも攻防が続くが消耗戦となってきた。


 今日一番の速度で相手が攻撃をしてくる。俺は剣をかすめて威力を落とし、わざと受ける。そのまま相手の剣を挟み、防御できないようにして首をつかむ。


 しかし、その首は柔らかく弾力のある首で掴み続けるのは難しそうだった。


「ぐがっっっ」

 首をつかまれたことで相手は何もできない様子だが、身体に触れたことで相手のGCが軟体になる能力だと分かった。

 

 軟体だから攻撃に手ごたえがなかった。


 そうと分かれば、締め技を使うに限る。


 そのまま、掴んでいた首に腕を回して柔らかい首に全力で圧をかけて絞めていき、相手の意識を飛ばした。


「そこまで! 勝者はナターシャとジークフリート!」


 審判が大声で試合の終わりを告げる。

 

 さすがに消耗戦だったので、身体に疲労が残る形となってしまった。


「ジーク! お疲れ様……。大丈夫?」

 ナターシャは疲れている俺をあまり見たことないからか、心配してくれているようだ。


「あぁ、大丈夫だ。ちょっとばかし疲れただけだ」


「それならいいのだけれど……」


 騎士対抗試合は一日で終わるため、効率よく勝つことで力が温存できる。このような戦いが続くとなると先が思いやられた。


 続く五回戦の相手は例のごとくパワー系の相手だったので、攻撃をよけながら倒す戦法で何とか勝利する。


 結局準決勝にコマを進めたのは、予想通り、レイヤ、アレンの二組とクレインだった。


 次の俺の試合はクレインとの試合になる。クレインの試合は見ていないが、かなりの実力があるのは間違いない。そして、アマンとの事件もあり少し警戒をする必要もあった。


 準決勝の第一試合は、レイヤとアレンの試合になる。


 この二人の試合はまるで決勝のような雰囲気を醸しだしていた。


 同じクラスの者同士での戦いのため、控室の中は緊張感で包まれていた。普段は明るいアレンでさえも、この一戦にはかなり集中しているようだ。


 レイヤはいつも通りに見えるが、逆にミューゼルが緊張しているようだった。


「ミューゼル! こんな日が来るなんて嬉しいわ!」

 緊張感を破ったのは、ルミーナだった。


「ルミーナ、君とは幼少期からよく戦ってきたね」


「そうよ! 今日は負けないんだから!」

 ルミーナはミューゼルのことをライバル視しているようだった。


「今回も僕が勝たせてもらうよ!」


 二人の会話で空気が変わり、クラスの中では二人への歓声が沸き起こる。


 準決勝の時間となり、二組が出て行った。


「ジーク、決勝で待ってるぞ!」

 アレンはすれ違いざまに話す。


 そのまなざしはいつにもなくメラメラと輝いていた。


 二人の試合をクラスみんなで観戦席から眺める。他の観客たちも準決勝となり、より応援へ熱が入っているように見えた。


 レイヤが剣をアレンが槍を構えて、試合が始まった。


 予想はしていたが、さっそくレイヤがかなり早いスピードでアレンに攻撃を仕掛ける。


 残念ながら、その攻撃をアレンはかわすことができなかった。


 アレンが反撃に移るが、レイヤは難なく避ける。


 しかし、観客が驚いたのは、そのパワーだった。


 アレンの槍での一撃で半径十メートルほどの穴があいた。


「うぉぉぉぉ!」


 観客はその威力にわいた。俺もこんなにパワーのあるやつは見たことがなかった。


 いくらスピードで押しても一撃で粉砕されるとはこのことだ。


 アレンの成長した点は、これまで大振りになるところでもコンパクトに攻撃を出していることだ。かなり訓練を積んだ、美しい槍術だった。


 しかし、レイヤも手数を増やしていき、アレンは防戦一方となってしまう。スピードが段違いのため、なかなかアレンの攻撃が当たらない。


 レイヤの攻撃が軽いためか、消耗戦になってきていた。


 大きく振りかぶったのはレイヤだった。その攻撃はほとんど目で追えていなかったが、大振りの時はしっかりと目で確認できた。


 レイヤの一撃がアレンの懐に入る。


 そのままアレンは倒れそうになるが、俺の予想を超えてアレンはレイヤの剣をわきでつかんだ。


 二人の声は観客席には聞こえないが、レイヤの顔は一瞬びくっとしていた。アレンは零距離で槍での攻撃を入れる。


 レイヤは剣で攻撃を受けたが、衝撃で後方へ吹っ飛ばされた。


 レイヤの顔が歪み、足はガクガクとふらつき始めている。


 レイヤは一度、持っていた剣を離し、素手での攻撃に切り替えたが、アレンには効果がないようにも見える。アレンの勝利で終わったかと思った。


 レイヤは足を少し気にしながら動いている。


 だが結末はむなしかった。


 アレンはレイヤへの一撃を入れたときから一歩も動いていなかった。


 レイヤがその攻撃を止めてアレンにゆっくり近寄る。


 アレンは意識を飛ばしているようだった。


 審判が確認をしに行く。


「勝者は、ミューゼルとレイヤ!」

 大声で叫ばれた。


「おぉぉぉぉ! レイヤさすがだな!」


「いやいやアレンもよくやっただろ!」


 観客からは二人の熾烈な戦いに敬意を表した拍手が沸き起こる。


 意識をとばしていたアレンもどうやら起きたようだ。相変わらず、無類のタフネスさを持っている。


 ミューゼルとルミーナも握手をしていた。これぞ、準決勝と言わんばかりの試合を見せられた。


 今の俺でこの二人に勝てるのかと言うとかなり難しそうだ。


 次はクレインとの試合になる。周囲の目を気にしながら、ナターシャと俺はコロシアムの中央へ向かった。

【お読みいただきありがとうございます】


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