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第三十三話 レイヤの成長

 騎士対抗試合の一回戦の相手は初めて見る顔だった。


 他のクラスの貴族と騎士だからどんなGCを持っているのか分からなかったが、相手は槍使いだ。フリージア・アカデミーに所属していることから、一回戦から難敵になるのは間違いない。対GC相手の訓練で培った力を最初から全力で出し切る必要がある。


 審判の合図で一回戦が始まった。俺は様子を見ようとするが、相手の騎士がさっそく攻撃を仕掛けてくる。


「これでもくらえ!」


 相手は槍を振りかざしながら俺に飛び込んでくる。


 その一撃の速度は遅いようで俺は後ろに飛びうまく避ける。


 避けたのは良かったが、驚くべきはその威力だった。たったひと振りしただけなのに、槍をぶつけた地面が大きく引き裂かれていた。


「よく避けたな! 次からは外さない!」

 相手の騎士はパワーを底上げするGCのようだ。


 次々と槍の利点を活かした遠い間合いでの突きで攻撃を仕掛けてくる。


 何とか避けるが、一撃をもらっただけでも俺の体は粉砕されそうだった。


 頭部のような急所にうまく当たると最悪死ぬこともある勢いだ。俺は冷静に相手の攻撃を見ながら隙ができるのを待った。


「おい! 避けてるだけかよ! しっかりと戦え!」

 俺の戦いを見ている観客から野次が飛んでくる。


「避けるだけだとこのまま終わりだぞ!」


 相手の騎士は調子づいてきたようで、槍での攻撃はさらに加速した。避けるだけでは対処しきれなかったので、剣での受け流しもしながら防ぐが、一撃がかなり重い。


「これで終わりだ!」

 相手は俺に突っ込んで来て槍を振り上げた。


「この隙を待っていた!」


 俺は相手の突っ込みに合わせて全力で踏み込み、一気に間合いを詰める。


 相手が槍を振り下ろすよりも先に懐に入り、剣で武器を持つ腕に一撃を入れる。


「そんな!」


 相手は何が起きたか分からないまま、槍が上空に舞っているのをただ見上げることしかできていなかった。


 そのまま、首元へ刺刀を入れて、意識を飛ばす。


「うぉぉぉぉぉ! やるじゃないか!」

 さっきまで非難していた観客たちからも歓声が沸き起こった。


「ジーク! さすがね! 少し焦ったけど、勝ててよかった」

 ナターシャが笑顔で迎えてくれる。


「パワーが上がるGC相手はやりやすいだけだ。だましだましで何とか勝ったけど」


「それでもすごいわ。アバロンたちとの訓練が身になってるわけだし!」


「皇室騎士団のみんなには感謝しないとだな」


 俺たちの試合が終わっても続いている試合はあったが、控室へ戻る。


「一回戦勝ったみたいだな! 俺は次だから気合入れていかないとだ!」

 アレンは俺が勝ったのを喜んで迎えてくれた。


「アレンも頑張れよ! お前の戦い振りに見てみたいし」


「おうよ! 騎士試験からの時間でどれだけパワーアップしたか見せてやる!」


「あんまり張り切りすぎないでよね!」

 ルミーナはアレンのはしゃぎようを少し心配してるようだ。


「ルミーナ、アレンの力は俺が保証するよ! 思う存分戦わせてやってくれ!」

 一応アレンのフォローをしておく。


「ジークが言うのならいいのだけど」


 アレンとルミーナはそのままコロシアムの中央へ向かっていった。


 すぐに試合が始まったが、アレンは圧勝していて、何も心配することはなかった。


 その後も次々に一回戦が終わり、二回戦となる。二回戦の敵は、ヤリスのGCと同じような能力で身体が強固になる敵だったが、この手の相手はなんども戦ってきて得意なので、簡単に勝つことができた。


 アレンやレイヤ、そしてクレインも勝ち進み、午後から始まる三回戦に進んでいたが、残念ながらスバルの姿は見えなかった。


 二回戦を終えて、二十五組まで絞られている。トーナメントのくじ引きで何組かはシードだが、運よくナターシャはシードの位置を獲得する。


 順調に進めば、クレインとは準決勝で当たり、レイヤとアレンとは決勝で当たるトーナメントになっていた。三回戦から波乱が巻き起こりそうな予感がするがいったん食堂でご飯を取りに向かう。


 食堂でのご飯は格別に美味しかった。二回相手を倒していて身体が栄養を欲しがっているようだった。


「ジーク……。お疲れ様!」


「あぁっ。相手がそこまで強くなくてよかったよ」

 実際、二回戦までは余力を残した戦いができていた。


「今日はたくさん頼んでいいわよ。まだ試合は続くのだし」


「まじか! ありがとう!」


 俺は五人前ほどの肉料理を追加で頼んだ。運ばれてきた料理はスパイスを効かせて焼いているものや、絶妙に煮込まれたもので絶品だった。あっという間に、出された料理をすべて食べ終える。


 俺たちは食事を終えて控室へ戻る。


 三回戦の出番はシードでなかったため、試合を観戦しながらのんびりと時間を過そうと思った。


 空いている観客席に座ると、まもなく試合が始まる。ここからの戦いは貴族と騎士の紹介もされていた。三回戦第一試合はシードを取れなかったレイヤの出番だ。


「レイヤ! お前に賭けてるぞ!」


「レイヤ君! こっち向いて!」


 もともと剣聖と呼ばれて有名なだけあってレイヤのファンは大勢いるようだった。相手の騎士もここまでくるということはある程度実力を持っているのだろうが、会場はレイヤばかり応援していた。


 どんな戦いをするのか楽しみだったが、試合開始が宣言されたときに愕然とした。


 一瞬の出来事だった。


 レイヤが一太刀をいれたのだろうが、相手の騎士が倒れている。まったく目で追うことができなかった。


「やるな! このまま優勝までつっきっちゃえ!」


「さすがー!」

 観客たちも何が起こったのかは分かっていないだろうが、レイヤの勝利を喜ぶ。


 ここまで仕上げてきたとは俺も予想できなかったが、レイヤのスピードは圧倒的だった。他の試合も観戦したかったが、クレインもシードだったのでその試合ぶりは見れなかった。

【お読みいただきありがとうございます】


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