第二十九話 招かれざる助っ人
アマンの声がかすかに聞こえた方へ進んでいく。
アマンを誘拐したものが賊だった場合、最悪アマンが傷つけられることもあるため、こちらから呼びかけることはしない。
声のする方向へかけていくと、騎士の格好をした二人がアマンを連れているのが見えた。どこに所属している騎士かは分からなかったが、かなり悪質だ。
騎士たちが向かっている方向には、裏通りではあるが、ある程度立派な屋敷があった。その中へアマンを連れて行くのだろうか。
俺は見つからないように後ろからついていき、背後から攻撃できるタイミングを伺う。
案の定、騎士たちはその屋敷へ入っていく。屋敷の扉を開けて騎士達はアマンを踊り場へ投げた。
この一瞬が最初で最後のチャンスだ。
俺は、背後から息を潜めて飛び込み、騎士相手に蹴りを入れる。背後からの急な攻撃に対応できなかったのか、騎士の一人は床に倒れこむ。
「ジーク様!」
アマンは恐怖の中から一筋の希望を見つけたような顔をする。
俺は倒れた騎士の腕をからめとり、そのまま骨を折った。
「うぁぁぁぁぁっ」
腕の骨を折られた騎士は床を這いつくばる。
もう一人の騎士はすかさず俺との距離を詰めてくる。抜刀をせずに殴りかかってきたが、その腕をうまく取って背負い投げをお見舞いする。
「このガキ! なめるなよ!」
背負い投げを受けた騎士は攻撃が効いていなかったようで、スムーズな動きで再度仕掛けてきた。
騎士の格好をしていることから、恐らくGCが付与されているはずだ。
訓練所での経験から、相手のGCを判断する。
スピードはのろくパワーもなさそうだ。背負い投げからスムーズに起き上がったことから、おそらく身体が頑丈になるようなGCだろう。
そうと分かれば、訓練所でヤリス相手にとってきた戦い方を選択する。
相手の急所へ的確に蹴りを当てていく。
同じ騎士という立場からか、攻撃を何度も入れてもアマンをさらったこの騎士たちへの怒りがこみあげてきた。
腕を折った騎士の方も我慢強く堪えたようで、攻撃に加わろうとしてくる。さすがに騎士が二人相手だと、守りながらの戦いは分が悪くなりそうだった。
相手との間合いを図っていたとき、屋敷の扉が開いた。
さらに加勢されてしまうと俺でも勝てるのか難しい。
「これはこれは、ジークフリートと言ったか? 知った顔だな」
俺のことを知っている人間のようだった。
振り向くと、クレイン=ボーン=キュンメルがいた。
ナターシャからはできる限り関わらないほうが良い相手だと聞いている。この騎士達ももしかしたら、クレインの手先かもしれないという想像が働く。
「クレインと言ったか? お前はどうしてここにいる?」
「ジークフリート、怖い顔をしているね。お前が戦っていのはうちの騎士だったものだ」
『だった』の言い方が気になったが予想通りクレインの関係者のようだ。クレインのそばには三人の騎士がいた。挟まれたら俺は終わりだ。
戦っていた二人の騎士もクレインが来てからは立ち止まっている。
「そこの二人の騎士が、ナターシャの屋敷のメイドをさらったから助け出している」
俺が状況を説明すると、クレインの顔が一瞬ビクッとしたのがわかった。
「そいつらは脱走した騎士だ。迷惑をかけたのなら申し訳ない。おい、この二人をやれ」
クレインの一言で、お付きの騎士達が助っ人として攻撃する。
あっという間に、脱走したらしい二人の騎士を制圧した。
「申し訳なかったね。後片付けはこちらでやるから、女性を連れて早く離れた方がいい」
「こいつらは都市警備の騎士に身柄をわたす必要があるのでは?」
俺はどうしてクレインがここに来たことも怪しいと思っていた。
「ジークフリート……、こいつらはうちから脱走したんだ。うちでしっかりと処理をするよ。これ以上は言わすな」
「分かった。このことはナターシャには報告をしておく」
「ナターシャにか……。いいだろう」
俺はアマンを連れて屋敷を出た。
「ジーク様、あの人は何者なのですか?」
「あいつもフリージア・アカデミーに通っている貴族だ。良くない噂が多いらしい」
「そうなのですね……。ひとまず助けてくれてありがとうございました」
「本当にアマンが無事でよかったよ。目を離した隙にまさかこんなことが起きるとは」
「ジーク様を見たときは本当に安心しました!」
「いろいろあったけど、プレゼントも買ったし屋敷へ戻ろうか」
俺たちはこうして、屋敷への帰路に就く。
屋敷に戻ったら今回の騒動をナターシャとアバロンに報告をすることにする。厄介な貴族に目をつけられたらと考えると、少し嫌な予感がした。
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