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第二十七話 どうしようもできない差

 食事の時間は男性陣と女性陣で気まずい雰囲気になったが、仕方がなかった。


 俺たちは覗き作戦に敗北した仕打ちでメインの料理を食べることができない。


 女性陣の食べている肉を横目に、颯爽と食べ終え、再び訓練所へと戻った。


「そういえばアレン。あの時ルミーナが言おうとしていた秘密って?」

 ミューゼルは気になっていたのか、アレンに聞く。


「いやいやミューゼル様、それは何でもないぞ!」

 誤魔化すことが苦手なアレンは、恥ずかしいことを隠していることは誰の目から見ても明らかだった。


「ほーー、みんなの作戦を喋ってまでも守りたいものが何でもないわけないだろ!」

 ミューゼルはアレンをからかい始める。


「本当に何でもないんだって! ただ、担任のエミリアが可愛いなって思っただけだよ……」

 アレンは恥ずかしそうに言う。


「アレン、なるほど。それは恋をしているってことだね?」 

 スバルも一緒にアレンをからかい始める。

 

「恋って、そんな大層なものじゃないぞ……、ただ綺麗なだけかと」

 アレンは女性を見るとみんなにアタックしていくようなやつだから、恋についてもわからなだろう。


「その言い方はしては女性に失礼だろ! アレン、告白するときは手伝ってやろう!」

 ミューゼルはアレンが成功するのか失敗するのとどちらで思っているのかわからないがエールを送っていた。


「え? 本当か? それは是非ともお願いする!」

 

 アレンの恋路の話をしていたら、訓練所に到着する。

 

「おい、ジーク……。俺とGCありの模擬戦をしないか?」

 突然、レイヤが俺と模擬戦をしたいと言ってくる。


「レイヤとジークの試合か、楽しそうだな! 俺が審判をするぞ!」

 アレンもノリノリなのか、率先して審判に名乗り出た。


 「おいおい、レイヤと模擬戦なんて、攻撃も見えないだろうし、嫌だよ……」

 俺は正直、どの程度のレベルを出せば良いのかわからず、レイヤと戦うのは避けたかった。しかし、このお泊まり会で時に見せるレイヤの冷たい視線を考えると、何か溜まっていることもあるのだろう。


 「ジークには断って欲しくない。相手に一撃入れるまではどうだ?」

 レイヤは、何が何でも模擬戦をしたいようだ。


 「わかった、一発入れるまでだぞ」

 一発入れる話なら、レイヤの攻撃が早すぎるたと負ける言い訳もできると思い、了承した。 

 

 俺とレリやは訓練所で向き合い構える。お互いに木製の剣を持って対峙する。


 「それでは、二人とも構えて! はじめ!」


 審判であるアレンの合図とともに、模擬戦が始まる。


 予想通りレイヤは一気に間合いを詰めてきた。初めてレイヤにGCが付与された時は全く見えなかったが、今ではレイヤの動きをある程度とらえることができた。皇室騎士団員でスピードに特化したGCを持つ騎士がいて良かった。


 レイヤの攻撃は俺の頭部を狙っているが、剣で抑える。

 

 さすがのレイヤは俺に抑えられた剣先をうまく切り替えて連撃をしかけてくる。


 俺は何とかすべての攻撃に剣で対応できた。一瞬でも、気を抜くとレイヤの剣がすぐ当たる状況だが、レイヤの攻撃はまだ本気を出していないように見える。

 

 

「ジーク! お前がここまでやるやつだとは正直思っていなかった」

 剣をぶつけあいながら、レイヤは話してくる。


「ナターシャのGCのおかげだ。俺はそれでなんとかやってるだけだ」


「嘘をつくな! 俺は知っていたんだ、お前が強いことを」

 レイヤは喋りながらも攻撃の手を緩めなかった。


「どういうことだ?」


「見ていたんだよ。お前の騎士養成機関の入学の時、実技の試験を!」

 騎士養成機関の実技で、騎士の名家出身の相手を倒したことを思い出す。


「それだけか?」


「あぁ、それだけだ。お前が倒した相手は俺と一緒に騎士を目指して修行をしていた同門だった」

 レイヤの剣技はさらにスピードを上げる。


 俺はレイヤが何かを言いたいのを分かっていたので攻撃はせず防御に徹した。


「悔しかったんだ。世の中にはお前みたいな強いやつがいることを初めて知ったよ」


「俺の騎士養成機関での成績は知ってるだろ?」


「知ってるさ。ライバルになると思っていたからな、だけどお前は力を見せなかった」


「力をもっていなかっただけかもしれないぞ?」


「それは違う。ナターシャ様にお前が選ばれたとき、やっぱり隠していたんだと思った」


「ナターシャに選ばれたのは偶然だ」


「偶然でも必然でもどうでもいい。ただ、そのポジションには俺が付きたかっただけだ」


 レイヤが仕えたい貴族がいたことを思い出した。


「そのポジションにいる俺が憎いか?」


「あぁ、憎かったよ。だけど今は違う」


「どう変わったんだ?」


「ジーク! お前と剣を交わして分かった。俺の速度についてこれるのはお前だけだ」

  レイヤの攻撃がもう一段早くなってきた。ここまでの速度となると、視覚だけでは捕らえられず、勘も混ぜないと対処できなかった。

 

 そろそろ潮時だ。


 レイヤの攻撃を受け流すように引き込み、そのまま俺の足へ当てた。


 「そこまで! レイヤ、一本!」

 アレンの合図で模擬戦が終わった。


 「おい、ジーク! 戦いはこれからだったのに!」

 レイヤは楽しくなっていたのだろう、まさか入学式の時の試合をレイヤに見られていたとは思わなかった。


 「レイヤ、本当にお前の攻撃が見えなくなっていた。素直にレイヤの勝ちだ」

 もう一段早くなってもなんとかなりそうだったが、これ以上俺の力を出す必要もないと思った。


 「そういうことにしておこう。ジーク、騎士対抗試合で試合でいることを楽しみにしている!」


 前期の終わりの実技の試験は騎士対抗試合で、同じ学年の騎士同士でGCを用いた戦いをするものだった。


 「おう、そこまでにレイヤの早さについていけるようにする」

 レイヤの早さはおそらくまだまだ上がるだろう、最終的にどこまでなるのか分からないが、俺のスピードとはどうしようもでいない差は生まれるだろう。


 「俺も騎士対抗試合はお前たちと楽しく戦うからな!」

 無視するなとばかりにアレンが言う。

 

 こうして色々とあったが、お勉強会はアレンがエミリアのことが好きということで終幕した。


 次の日は朝食を終えると、みんなで帰宅することとなった。


 こんな風に友人と呼べる人たちと楽しく過ごせたので、俺はフリージア・アカデミーでの生活も悪くないと思い始めていた。



【お読みいただきありがとうございます】


いつも読んで下さっている皆様、ブックマークへの追加や評価をいただいた方、ありがとうございます! より面白い話を書こうという励みとなっております!


新しくお読みいただいた皆様、ブックマークへの追加や、画面下の「☆☆☆☆☆」から評価をして読み進めていただけると幸いです!創作活動の励みとなります!


何卒、よろしくお願いいたします。

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