第二十四話 再会と実技授業
アカデミーでの実技の授業は基本的にはGCを使った訓練となる。自分に付与されているGCの力を把握しなければいけないため、前期の授業ではそれぞれの限界に挑戦することが大きな目標だった。
レイヤのようなスピードがかなり上がった騎士は、スピードに慣れながら一撃を入れるような訓練をし、アレンのようなパワーが上がった騎士は自分のパワーを扱いながら細かい戦いをするための訓練をする。
俺のようなオールマイティーに上がったような見え方ができる騎士は気づいていない力があるかもしれないことから、色々と試す訓練をする。
この日は初めて他クラスとも合同で訓練を実施することとなる。
「おーい! レイヤ、アレン、ジーク、久しぶり!」
合同で訓練を実施することとなって集まっていると、スバルが話しかけにきた。
「スバル! 久しぶりじゃないか!」
アレンはスバルに抱きつき、感動の再会のように喜ぶ。
「スバルもフリージア・アカデミーに入学していたんだな」
レイヤはスバルなら当然だろうというような顔で話す。
「同じアカデミーだったよ! ジークがナターシャ様の騎士になったのには一番驚いた」
「結局、俺がここに入学するのが一番びっくりってことか!」
「入学式の時のジーク、すごい緊張してそうだったよ!」
「俺自身が一番驚いたよ。スバルは誰の騎士になったんだ?」
「僕はちょっと特殊でね。双子の姉がこのアカデミーなんだけど、その騎士になったよ」
「スバルの家は貴族出身だしな! 双子の姉がいたのは知らなかったよ!」
アレンは女の子が好きだからか少しテンションが上がっていた。
「まぁ、フィル姉さんがあまり他人をそばに置くのが嫌だったようでね」
「いろんな事情があるんだな。グリーンベルト家のGCにはかなり興味があったんだ」
レイヤはスバルの家のことを知っているようだった。
「グリーンベルト家のGCは他のみんなと比べて本当に遠距離に特化しているからね!」
「遠距離に特化してるってすごいGCだな! 俺はすぐにやられそうだ!」
アレンは弓で攻撃されるのは苦手なようだ。
「僕の弓と姉さんのGCは相性がかなり良いんだよ」
スバルは自分の力を引き上げるための能力を手に入れたようだ。
俺たちは、久しぶりにチームメイトにあったことで、騎士養成機関での昔話や騎士試験の話で盛り上がった。アカデミーでは基本的に授業が終わるとみんな貴族と帰宅するため、他のクラスの人と話す機会はほとんどなかった。
訓練が始まると、それぞれ別々の訓練へと移っていった。今日はアカデミーの授業では初めての実践形式での体術の訓練だった。
GCによってパワーが上がった騎士との訓練となる。アレンはやる気満々の様子だ。
俺たちは、それぞれ指定された相手と組手を行う。パワーが上がった同士の戦いでは最初は自分の力をいかにコントロールするかが重要となる。
アレンの順番が来たので、それを観戦する。アレンは目立ちたがりのようで、服を脱ぎ捨てる。教師の合図で組手が始まると、アレンのしっかりと鍛え上げている身体から一撃を放つ。その威力は俺の予想を超えていた。
踏み込みざまに放った一撃で相手は吹っ飛ばされのびてしまった。
「一発で終わっちゃうのなら訓練の意味があまりないな!」
嬉しそうに声をかけてきた。
「アレン……。おまえのパワーがおかしいことになってるんだよ……」
俺もあの一撃を食らうだけで吹っ飛ぶだろう。アレンと戦うことになったら気をつけないといけない。
何組かの組手を観戦すると、俺の順番が回ってきた。馬鹿力を要する騎士相手にどう戦いを進めるかは初めから決めていた。
「ジーク! お前の力見せてもらおうか!」
アレンは俺の力を楽しみにしているような顔をした。
GCの力がない俺からすると、この組手で何を試すのかという気持ちにはなる。アバロンたちとの訓練からヒントを得て試してみたかったことはあった。
相手の騎士はパワーが上がっていること以外は能力の付与はされていないと仮定すると、ヤリスのように鋼の肉体になっているわけではない。
向こうの攻撃の一撃が重く、掴まれたら逃げられないだろうとは思う。逆に言うと、俺の攻撃に対して対抗できるのはGCではなく自分自身の力だけだ。
教師の合図で相手との取り組みが始まった。
早速相手は、一撃を入れようと攻撃を仕掛ける。しかし、スピードが速くなっているわけではないの簡単にかわせた。
俺は自分の攻撃が通用するか試すために、隙ができた相手にジャブを入れる。力を込めたジャブの攻撃で相手はひるんだ。
予想通り、相手は俺の攻撃を封じる術をもっていない。すかさず、連打を入れた。
俺が連打を繰り出している中カウンターを狙ってくる。残念ながらそのカウンターは子供と遊んでいるようなスピードだった。
これ以上この相手と組手をするのも時間の無駄だと思う。
周りにはGCで俺のパワーも上がっていると思われている手前、最後の一撃はある程度本気で殴る必要があった。
多少大振りになったがカウンターを貰わない態勢で、相手の腹部に蹴りを入れる。
この蹴りが決め手となり、相手は後方へ吹っ飛ぶ。
「やるなぁ! 本当に騎士養成機関の時とは比べ物にならないくらい強いじゃないか!」
アレンは俺の力が上がっていることを喜んでいた。
それもそのはずで、今回倒した相手は違う養成機関出身だと思うが、フリージア・アカデミーに入学している時点である程度の実力者となる。平均的な成績だった俺が、その相手にしっかりと勝っていること自体がアレンからすると夢のような出来事だろう。
「いやぁ、俺もナターシャのGCで強くなったようだ」
GCが付与されていないことは誰にも知られてはいけないことなので、適当に話を合わせていく。
「ジークのGCはどんな力なんだ? 全体的に能力が向上されるってずるいな!」
「俺にもまだ分からないんだ。ゆっくり試していこうとは思うよ」
「それもそうだな!」
アレンのような単純な人間だけならだましだまし力を出す必要もないが、そういう訳にも行かないのである程度本気で授業には取り組まなければならない。
今日の授業はこれで終わる。
俺にとっては座学と実技のどちらも考えることがたくさんあり大変だが、なんとかやりすごすことはできそうだった。
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