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第二十三話 とある日常

 アカデミーの授業では大きく座学と実技がある。前期と後期のそれぞれで、試験が課されるため座学も実技もそつなくこなすことを求められる。


 座学の授業は初めて挫折を味わうほど俺にとっては難しい問題だった。騎士養成機関の座学では戦いにおける戦略や戦術だけやっていたから楽しかった。しかしアカデミーでは歴史や数学といった騎士とは関係のない学問を学ばなければいけない。


 ナターシャはそつなく座学もこなしているが、俺は全くついて行けていなかった。


「ジーク……、座学で赤点を取ると、わたしの評判も悪くなるからちゃんとやってよね」

 ナターシャは呆れた顔で休憩時間に話してくる。


「苦手なものは苦手なんだ! 何とか試験の時にはできるようコツコツ勉強はするけど」


「屋敷で勉強も教えてくれるように皇室騎士団の人に言ってみるわ」


「訓練もして、さらに勉強もしないといけないのか……」


「当たり前でしょ! 全部こなしてこそ、私の騎士よ!」


 ナターシャとはGC付与の日から以前と比べてよく話すようになった。心配していたことが終わってホッとしているのもあるだろうが、あの日以来笑顔も増えている。


「ジーク! お前も学問が苦手なようだな!」

 アレンはクラスの中でも俺と同じで学問には苦戦しているようだった。


「アレン……、そんなに勝ち誇った顔で言われてもな……。家では勉強しないのか?」


「ロイエラント家は勉学よりも訓練のスタンスだから、トレーニングばかりの毎日よ!」


「確かに、アレンがトレーニングをサボってることの方が考えられないな」


 俺たちが話をしていると、レイヤも参加してきた。


「アレン、ジーク、騎士なんだから、学問もちゃんとやらなければだろ」

 レイヤは言わずもがな学問も軽くこなしている。


「レイヤはまじめだからな。今度、みんなで勉強する機会とか作れたら楽しそうだな!」

 アレンはルミーナにも聞こえる声で言った。


「みんなで勉強する時間を作るのは難しいだろう。本当に機会があればだな」

 俺がそう言うと、レイヤが仕えている貴族のミューゼル=デン=フリードリヒが近づいてきた。


「レイヤ、なかなか面白い話をしているね。みんなで勉強するのもいいじゃないか!」


 フリードリヒ家は公爵の家柄であり、今回レイヤを選抜できたということから、ミューゼルの力はかなりのものであると誰もが知っていた。


「これはミューゼル様! みんなで勉強をするのなら、ルミーナ様にも言ってみるな!」

 なぜかアレンはたとえ勉強だとしても皆んなで何かできることにはしゃいでいた。騎士は皆、アカデミーに入ってからは屋敷とアカデミーの往復になっているようなので、ストレスもたまっていたのだろう。


「レイヤとは屋敷でアレンの話はよくするから是非話したかった。ジークもどうかな?」

 勉強会について考えるが、ミューゼルが偉そうに話をするのは少し気に食わなかった。


「ナターシャが良ければになるかな」


 基本的に貴族と騎士の間では敬語は使わない。しかし、騎士は貴族相手には様付けで話をしている。俺は様をつけるのが嫌だったからか、気づいたら全員に対して名前で呼ぶようになっていた。


「ナターシャ! ルミーナ! みんなで勉強会をしたいのだけど、参加でいいよね?」

 ミューゼルがナターシャトとルミーナに向けて話す。


「ナターシャと勉強会は楽しみね!」

 ルミーナは行く気満々のようだ。


 俺はナターシャの方を見るが、その表情は面倒くさいと思っているようだ。


「私は遠慮するわ……」

 ミューゼルと勉強会はあんまり行きたくなかったから、心の中でガッツポーズをする。


「と言いたいけど、ジークの勉強が追いついていないのも事実だからやりましょうか」

 ナターシャはしぶしぶ許可した。俺のガッツポーズを返して欲しい気持ちになる。


「それでは決まりだね。試験は来月だから、どこかで時間を合わせてやろう!」

 ミューゼルの一声で試験前での勉強会が決まった。

【お読みいただきありがとうございます】


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何卒、よろしくお願いいたします。

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