表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

僕の探し物

作者: ともっぴー

読んで頂けると嬉しいです。

僕の名前はリク。


お母さんは、いない。

お父さんは、いつもお仕事に行って忙しいから、僕たちは、おばあちゃんの家に住んでいる。

寂しいなんて、思ったことはない。


だって、他の子のお母さんみたいに、宿題しなさいとか、早く寝なさいとかいわれないし、おばあちゃんは、とっても優しいんだ。


僕は寂しくなんかない。


そして、僕には妹がいる。

みっちゃんっていうんだ。

2つ下で、僕のあとを、お兄ちゃん、お兄ちゃんっていって、ついてくる。

めんどくさいけど、構ってやるんだ。


僕はお兄ちゃんだから。


今日、みっちゃんは幼稚園で、お友達に意地悪言われたって、泣いて帰ってきた。

今日はお弁当の日だったんだ。

おばあちゃんが作ったお弁当は、可愛くないんだって言って、泣いていた。

僕はみっちゃんの頭をぶってやった。


おばあちゃんは、僕を叱って、みっちゃんに、ごめんねって言っていた。


僕は何だかむかついた。

だから、その日から、僕はおばあちゃんも、みっちゃんも、知らんぷりした。


おばあちゃんは悲しい顔をしていた。


おばあちゃんが悪いんだ。

僕は間違っていない。

みっちゃんが泣き虫で、わがままなんだ。


学校が終わってからも、何だか家に帰りたくなくなっていた。

ぶらぶら時間を潰してから、暗くなってから帰るようにした。

おばあちゃんはとても心配して、玄関の外で待っていたりなんかして、それも何だかむかついて、怒ったりした。

僕はおかしくなってしまったんだ。


ある日の帰り道、白い子犬が僕の足によってきた。

僕についてこいって、言うように、くっついたり、離れたりするんだ。

僕は何となく、ついていった。


たくさん歩いて、竹やぶのなかに着いた。

犬はフンフン匂いをかいで、あっちをほったり、こっちを掘ったりする。

何か探してるみたいだ。

僕も一緒になって、あっちこっち、掘ってみた。

手もズボンも汚くなった。

だけど、何だか不思議な感じ。僕も何かを見つけたかった。


どれくらい時間が経ったのか、辺りが暗くなっているのに気がついた。

大変だ。

帰らないと。


気付けば、僕は1人になっていた。


暗くて、方向も分からなくなって、僕はしばらくさ迷っていた。


そしたら、遠くのほうから、僕を呼ぶ声が聞こえてきたんだ。


「りくー! りくーっ!」

「りくくーん!」

「おーい! りくーっ!」


おばあちゃんの声も、お父さんの声もした。


僕は夢中で答えた。


「ここだよ!僕はここにいるよ!僕はここだよ!!」


僕を呼ぶ声がどんどん近づいてきて、


おばあちゃんの顔が見えた。

お父さんの顔も見えた。

他にも、何人もおとなの人の顔。


走ってきて、僕を抱き締めたおばあちゃんは、めちゃくちゃに泣いていて、気付けば、僕も声を出して泣いていた。

びっくりするくらい涙がボロボロ落ちて、止まらなくて、僕はたくさん泣いた。


僕は探していたものに気がついた。

僕はずっと寂しかったんだ。


僕が探していたものは、僕自身。僕の心。

失くしてしまっていたから、僕はおかしくなっていたんだ。

読んで下さってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] リクくんは、自分でも気がつかない間にたくさん我慢していたんですね。 寂しいことも気がつかないくらい。 妹はわがままだって思ってしまうくらい。 本当はお母さんがいないことが悲しくて、リクくん…
[一言] 子供は残酷。 「普通」とちょっとでも違うとそこをからかってきますからね。 リク君だって辛いことはいっぱいあったでしょうに、お兄ちゃんだから強くあろうと頑張っていた緊張の糸が、お弁当事件で切れ…
[一言] 大事なものに気づけて良かったですね。 勇気だったのかもしれません。
2020/12/19 22:35 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ