僕の探し物
読んで頂けると嬉しいです。
僕の名前はリク。
お母さんは、いない。
お父さんは、いつもお仕事に行って忙しいから、僕たちは、おばあちゃんの家に住んでいる。
寂しいなんて、思ったことはない。
だって、他の子のお母さんみたいに、宿題しなさいとか、早く寝なさいとかいわれないし、おばあちゃんは、とっても優しいんだ。
僕は寂しくなんかない。
そして、僕には妹がいる。
みっちゃんっていうんだ。
2つ下で、僕のあとを、お兄ちゃん、お兄ちゃんっていって、ついてくる。
めんどくさいけど、構ってやるんだ。
僕はお兄ちゃんだから。
今日、みっちゃんは幼稚園で、お友達に意地悪言われたって、泣いて帰ってきた。
今日はお弁当の日だったんだ。
おばあちゃんが作ったお弁当は、可愛くないんだって言って、泣いていた。
僕はみっちゃんの頭をぶってやった。
おばあちゃんは、僕を叱って、みっちゃんに、ごめんねって言っていた。
僕は何だかむかついた。
だから、その日から、僕はおばあちゃんも、みっちゃんも、知らんぷりした。
おばあちゃんは悲しい顔をしていた。
おばあちゃんが悪いんだ。
僕は間違っていない。
みっちゃんが泣き虫で、わがままなんだ。
学校が終わってからも、何だか家に帰りたくなくなっていた。
ぶらぶら時間を潰してから、暗くなってから帰るようにした。
おばあちゃんはとても心配して、玄関の外で待っていたりなんかして、それも何だかむかついて、怒ったりした。
僕はおかしくなってしまったんだ。
ある日の帰り道、白い子犬が僕の足によってきた。
僕についてこいって、言うように、くっついたり、離れたりするんだ。
僕は何となく、ついていった。
たくさん歩いて、竹やぶのなかに着いた。
犬はフンフン匂いをかいで、あっちをほったり、こっちを掘ったりする。
何か探してるみたいだ。
僕も一緒になって、あっちこっち、掘ってみた。
手もズボンも汚くなった。
だけど、何だか不思議な感じ。僕も何かを見つけたかった。
どれくらい時間が経ったのか、辺りが暗くなっているのに気がついた。
大変だ。
帰らないと。
気付けば、僕は1人になっていた。
暗くて、方向も分からなくなって、僕はしばらくさ迷っていた。
そしたら、遠くのほうから、僕を呼ぶ声が聞こえてきたんだ。
「りくー! りくーっ!」
「りくくーん!」
「おーい! りくーっ!」
おばあちゃんの声も、お父さんの声もした。
僕は夢中で答えた。
「ここだよ!僕はここにいるよ!僕はここだよ!!」
僕を呼ぶ声がどんどん近づいてきて、
おばあちゃんの顔が見えた。
お父さんの顔も見えた。
他にも、何人もおとなの人の顔。
走ってきて、僕を抱き締めたおばあちゃんは、めちゃくちゃに泣いていて、気付けば、僕も声を出して泣いていた。
びっくりするくらい涙がボロボロ落ちて、止まらなくて、僕はたくさん泣いた。
僕は探していたものに気がついた。
僕はずっと寂しかったんだ。
僕が探していたものは、僕自身。僕の心。
失くしてしまっていたから、僕はおかしくなっていたんだ。
読んで下さってありがとうございます。