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女神警備員、本日は森にやって来ました

 取り敢えず、私は先輩から教えてもらった神具、―タッチパネルみたいなので、ゴットパネルと呼ぶ事にしよう―を使う事にした。『メニュー』画面に触れて、次に浮かび上がった『女神の能力』をタッチする。



 お名前『ミチル』

 取得能力

 光りの付与《微弱》

 光りの刃《微弱》

 光りの障壁《微弱》

 光りの治癒《微弱》



 まあ、先輩に説明された通りの女神の力が記載されている。この《微弱》というのは、おそらく私が女神として信仰されている値が低いからだろう。それはそうだ、私はまだ女神として誕生したばかりなのだから。そんな女神を信仰する者などいない。


 ちなみに、これらの浮かび上がった能力も触れるとその説明書きが表示される。試しに、光りの付与《微弱》に触れてみた。



 光りの付与《微弱》

 ほんの少しだけ対象の潜在能力を上げる事が出来る。しかし、時間が経過するとこの力は切れてしまうので注意が必要。自らの信者には効果が高まる。


 

 なるほど。先輩の説明にはなかったけど、効果は永遠ではないらしい。もしかしたら、私が信仰されて能力が上がると永遠にも出来るかもしれないけど。


 それにしてもあのウサギ、かなり強力になっていなかっただろうか。ホーンラビット、いわゆる一角兎は低級魔物だが、《微弱》なのにただのウサギを魔物並みの強さに出来るのは凄くないか。これは信仰を得て能力を上げればかなり有効活用が出来そうだ。


 そうだよね。普通は女神って、前線で戦ったりしないし。そもそも、この能力が女神の本質なのだからある程度の期待はして良さそうだ。


 『信仰者数』については、見なくてもゼロなのが分かるので開かなかった。


 ゴットパネルを閉じる。


 さて、取り敢えずはどうしようかな。近くにある村にでも行って信仰を集めるか。そもそも、どうすれば信仰を得る事が出来るのだろうか。


 神話とかだと、英雄に何か凄いアイテムをあげたりするよね。あとは干ばつで困った人達に恵みの雨を降らせるようなイメージだけど、私にはそのどちらも出来ない。手っ取り早く魔物に襲われた人間を助けたりすれば良いのかな。でも、村に行っても都合よくそんな展開にならないよね。


 村とかで信仰を得るには、知識を与えて生活基準を上げたりするのが定番だ。でも、いくら私が高度な技術のある世界から転生したと言っても、素人に出来る事はたかがしれている。


 よし、決めた。取り敢えずはこの森を見て回ろう。

 私は翼を広げて、木々を追い越して森の上空へと出た。木々は青々と生い茂っており、泉の周りのように伐採されている所は良いが、あまり森の様子が分からない。


 なんだよ、もっと森を手入れしろよ。

 これじゃあ、上空からだと何かあっても見逃しそうだ。仕方なく地面に降り立って、歩いて行く事にした。低空飛行だと木の枝にぶつかって痛そうだしね。こんな時は身体の小さな小鳥が羨ましい。


 あちこちから鳥や獣の鳴き声が聞こえてくる森だった。自然豊かで、木に生っている果実や食べられる野草なんかも豊富にある。きっと魔物もいるのだろう。森は豊富な自然があるのと同時に危険な場所だ。


 危険な魔物は、女神である私が許しませんよ。

 退治している所を見られれば、信仰心も得られるかもしれない。まあ、魔物を退治する所か、無害なウサギを魔物にしちゃいましたが。そのうち効果も切れるし、あのウサギが森の中で人を襲ったりしなければ大丈夫。


 うん、大丈夫だよね?


 貴族の令嬢時代も、スローライフ目指して森を歩いて回ったりした記憶がある。前世の私は今みたいに何の力もない人間だったから、一人じゃなかったけど。十回もあの人生を体験すれば、それなりの人と付き合ってきた。


 異世界にも色々とある。今まで過ごしてきた異世界と此処は別の所かもしれない。それだと、あの人達とはもう会えないのか。死んでも今まではまた会えるから、と気楽だったけどそうなると少し寂しい。


 王子様は今頃、どんな事をしているのだろうか。

 あの十回目の時のままなら、パトリシアと結婚したのかな。


 殺されたけど、なんだかんだパトリシアは憎めない存在だった。気が小さくておどおどして、私が話し掛けるようになってから明るくなったけど。

 あの十回目以外は、だいたい私の味方だった。王宮を飛び出した時も、私に付いて来て一緒に旅をしたりもした。あのまま私が死んで、パトリシアが王子様と結婚できたのなら、それはそれで良かった。祝辞は是非、私に任せてもらいたい。


 あの時は殺してくれて有り難うございました。御礼参りをさせて頂きます。

 いや、冗談だよ。


 そんな事を考えていると、森の奥から低い唸り声が聞こえてきた。

 獣のそれではなかった。おそらく、魔物。唸り声という事は、誰かと相対しているという事だ。それが人間なのか、亜族か、動物や他の魔物かまでは分からない。


 とにかく私はそちらに向かって急いだ。

 女神なんだから、まあ、見逃せないよね。


 そこにいたのは、巨大な狼型の魔物が三匹。


 そして、それに狙われていたのは同じく三羽の茶色いウサギ達だった。

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