お願いします、私に天使をください
天使。天の使い、神々に仕える者。
そうだよ、女神にとって天使とは切っても切れないもの。
女神の身の回りの世話や、女神の代わりに人を導いたり、女神の代わりに悪と戦ったりする存在。そんな天使について、どうして今まで気が付かなかったのだろう。だいたい先輩も先輩だよ。私は女神なのだから、天使の一人や二人くらい付けてくれたって良いじゃないか。そうすればその天使達が、悪い狼達をえいや、とやっつけてくれるのに。
ゴットパネルには、その天使についての情報が追加されたみたいだ。これで私も天使に任せきりの優雅な女神ライフが送れる。私は直ぐにその『僕と天使について』に触れた。
『僕と天使について』
女神を深く崇拝し、より信仰しており自ら望んだ者を、女神は僕として契約できる。僕となった者は強い力を得る代わりに女神に逆らう事は許されない。また、その僕がさらなる高みとなった者が天使である。僕を天使にするには、主人である女神が多くの者に信仰されていなければならない。女神の信者が増えれば増える程、天使の数やより高位な天使を召し抱える事が出来る。
え? なに、天使ってそういう仕組みなの?
いきなり美男美女でめちゃくちゃ強くて、私を信仰してやまない天使が現れて、我らはミチル様の為に命を捧げますので何でも命じてください、とかじゃないの?
どうやら、自ら天使を得る為にも女神が頑張らなきゃならないみたいだ。なんという厳しい世界。天使も自給自足。無人島生活みたいだね。
私はクロウサを見た。
「フシュウ?」
いきなり見られたクロウサは、不思議そうに首を傾げた。
つまりだ、私が天使を得るのに一番手っ取り早い方法は、沢山の信仰を得てクロウサを天使にする事だ。というか、ウサギが天使になるのってアリなのだろうか。既に女神の僕になっているし、今更であるが。ウサギの天使なんて存在するのかな? 月に住むウサギはいそうだけれど。
「ねぇクロウサ、今すぐ天使になれないの?」
「フシュ……」
クロウサは、困ったような顔をして首を横に振った。
無茶を言わないでくだせぇ、姉御、とでも言いたげである。
詫びのつもりで私はクロウサを右手で撫でて、左手で先程の御礼に三羽のウサギ達を撫でる。
しかし、困ったな。せっかくゴットパネルが新しい情報を教えてくれたのだけれど、これじゃあ今すぐ役に立たせる事は出来なそうだ。この村に住む獣人達がみんなで私を信仰してくれれば女神の格が上がるかもしれないけれど、どうしてもその手段が思いつかない。
狼達を村の為に倒せば、みんなで私を信仰してくれるだろう。だがその為に私は信仰が欲しいのであって、その前に信仰して貰うにはそれなりの事をしなければならない。
やっぱり、文明の利器を伝授しないと駄目かな。農具とか、作物とか、武器とか、時間が掛かるよね。そもそも、私は特別に専門知識があった訳でもないただの女子高生だ。こんな見ず知らずの森の中で、いつ狼が襲ってくるのか分からない状態で、何が出来るのだろう。
みんなを説得する? 私を信仰すれば狼に勝てるよ、と。ウサギ達を救った私は、少なからずとも感謝はされている。それでもその人を女神として信仰するまでには至らないと思うんだ。信仰って、心の底からその対象を敬ないと生まれない。強要されるものじゃないし。
ああ、もう面倒くさい。
もう、一気にみんなで私を信仰してくれよ。そうすれば全て上手くいくのに。
もしくは私をめちゃくちゃ強くするか、素晴らしいチート武器をください。
御願いします、女神様。
私はやけくそで『信仰者数』をタッチして開いた。
増えろ、増えろ、一気に増えていろ!
貴女の信仰者数は『4』です。
「ほ、本当に増えている!」
思わず私が叫んでしまった事により、クロウサ達は驚いて眼を大きくして伏せていた身体を起こす。しかし、興奮状態にあった私はそれどころではない。
やりましたね、皆さん!
やっぱり、私って凄いじゃないですか?
ほら、人よりも沢山死んだし、王子様と結婚の一歩前まで行けたし、女神初日から僕になってくれるウサギがいたし、飛んだし、みんなの前で飛んだし……いや、なんでだよ。
改めて考えてみたけど、どうして私を信仰してくれている人がいるのか分からない。さっきも考えたけどウサリーナも村長も、みんな感謝の域に達している程度。
いや、待てよ。
あの触れ合った子供達。子供ならば純粋で無垢だから、飛んだだけの私を信仰してくれたのではないだろうか。ほら、あの将来社長になるウサキなんか私の事をべた褒めしていたし。
そうだ、間違いない。
あの話し掛けてきた子供の数って四人だったし。
さらに興奮状態の私をゴットパネルは追い風した。
「待って、続きがある」
信仰者数の所が改行されて、その下にはこう書かれていた。
後『6』信仰者数を増やせば、『女神の能力』を少し強化できます。
「きたぁぁぁ! これだよ、これ!」
私は興奮のあまり、クロウサ達を高速で撫でた。
クロウサ達は迷惑そうな顔をしている。でも、そんなのは関係ない。今の私は無敵だった。
これでようやく光明が見えてきた。
村の子供達を後六人、私の信者にすれば良いのだ。




