第一部 -雅-
こんにちはこんばんは、そしておはようございますっ!
平凡な世界の非日常をお送りいたします。
少し時間が経ってしまいましたが、お楽しみいただければ幸いです。
少女には名前がなかった。
当たり前というえば当たり前なのだが、今まで誰とも会わず誰とも関わらずの少女には名前が必要なかったのだと思う。
とはいえ、ほぼ強制的にとはいえ友達になってしまった以上、このまま名前がない状態ではいられないので、勝手に『雅』と名付けさせてもらった。
黒髪ロングのストレートヘアーに和風な雰囲気を感じたわたしがそう命名したのだが、彼女はよほど気に入ったようで、
『みやび…みやび…みやび…みやび!
かわいい!ありがとう!』
と確かめるように何度か呟いた後に、彼女は満面の笑顔をこちらに向けたのだった。
「ちなみにわたしが瑠唯で、こっちの不愛想なのが蓮。
よろしくね!」
「一言多いのは気になるけど…よろしくな」
『うんうん、よろしくね』
校門のところでの雅ちゃんとひと悶着あったせいで、わたしたちは時間ぎりぎりに教室に飛び込む羽目になってしまった。
先生の小言が頭のうしろの方で聞こえるが、それを無視したわたしたちは慌ただしく席に着く。
そしてわたしはとある視線に気付いたのだった。
それは曜の視線。
そちらを向くと、彼は強張った表情をして固まっているようだった。
「蓮、蓮、見て見て、びっくりしてるびっくりしてる。」
「そりゃそうだろうよ…。」
わたしが面白がるように耳打ちすると、蓮はため息まじりにそう言ったのだった。
「あ、あの、そ、そいつって…」
休み時間、曜は思いつめた表情でわたしたちのもとにやってきた。
そして雅ちゃんを震える手で指さすと絞り出すように言葉を発した。
『え?あたし?』
「!!
声が…聞こえる…?」
雅ちゃんは唐突に指をさされて困惑の表情を浮かべていたが、それ以上に曜は今の状況に困惑しているようだった。
「こいつは雅。昨日先生のうしろにいたヤツだ。」
「雅…?」
「そそ、この子の名前だよー。」
「マジ…なのか…?」
曜の言葉にわたしたちはこくこく頷く。
そしてそれを確認すると、曜はフラフラと教室を出ていってしまったのだった。
『ねね、瑠唯、蓮…。
みやび、なにか悪い事した‥?』
わたしたちのやり取りを聞いていた雅ちゃんは少し悲しそうにそういうと、彼の行った先をぼんやりと眺めているようだった。
「大丈夫、雅はわるくねーよ」
「…うん、雅ちゃんは悪くない。」
そうだ、たしかに雅ちゃんはなにもしていない。
昨日も今もただ居ただけなのだから。
多分、人間は見えない物や理解の及ばない物なんかを受け入れられるようにはできていないんだと思う。だからきっと曜の反応が普通なのだ。
昨日「普通の霊なんかじゃない」とあれだけ警戒心を剥きだしにしていた曜には、今一緒にいるこの状況が理解できるものではなかったのだろう。
「あとでちゃんと説明してあげないとだねー。」
「そうだな。」
多分、曜には心配する気持ちも、不安になる気持ちもあったと思う。
わたしは数分前のからかい半分で曜を指さしてたことを反省するのだった。
その後、わたしたちが受ける授業を雅ちゃんも一緒に聞いていたのだが、年齢が見た目相応なら、ちんぷんかんぷんなのであろう高校の授業を「因数分解…ふんふん、あぁ、なるほど」などと理解しているような素振りを見せていた。
超天才児か、こいつは…。
しかし、見た目が小学生くらいの少女な訳だから、違和感しかない。
「ねぇねぇ、雅ちゃん、あれ分かるのー?」。
あんなの聞いて面白い?」
『うんうん、なんとなくねー。
頭の中で数字が組み合わさって、別の数字が生まれてくるんだよー?
それは見た目は全然違うのに中身は全く同じなの。
ね、めちゃ面白いでしょ?』
「…あぁ~、うんうん、そうだよね!」
まったく理解できない雅ちゃん理論の前に、ちんぷんかんぷんなのはわたしだった事を思い知らされた。
ふと何かを感じ取り視線をあげると、そのやり取りを盗み見ていた蓮がニヤニヤと小ばかにしたような表情でこちらを見ているのだった。
…コノヤロウ、ちょっと数学が出来るからって…。
最後まで読んで頂き有難うございました。
GWいかがお過ごしになられましたか?
STAY HOMEなんて言われて家にいなきゃーって感じのGWでしたが、それでもやっぱりお休みは楽しいもので、あっと言う間に過ぎてしまいました。
(原稿のことは気になってましたが…まったく手を付けられませんでした…すみません…!!!)
そんな訳で、次回も頑張って書いていこうと思うのでどうぞお付き合いくださいませ。
感想などあればお気軽にどうぞー!
また、誤字脱字があればご指摘いただければ幸いです。